Jリーグマネジメントカップの指標を活用しよう!!
とある企画で、Jリーグマネジメントカップ2019について語る場があり、話のネタとして自分なりに分析してみました。夜なべして分析したので、記録を残しておかないのはもったいないと思い、noteにしたためることにしました。
▼Jリーグマネジメントカップ2019(以下JMC)
2014年から毎年Deloitteさんから発行されているこのレポートも今年で6回目を数えます。毎年楽しく読ませていただいているんですが、このレポート1つでJ3~J1までの基本的な財務分析ができてしまうというものすごいレポートです。しかも無料!!
サッカークラブで働いている中で、ビジネススタッフが抱える課題として、
ービジネスの貢献がピッチ上の結果に結びいてるかどうかわからない
という悩みがあり、頑張っても頑張っても報われないような感覚に陥ることが多々あります。
それはサッカークラブの評価が「最終的なリーグ順位」で測られるためであり、いくらビジネスで売上を上げたり、財務諸表の結果を良くしても、その成果自体がビジネススタッフの頑張りとは関係ない所で評価されてしまうことが多くあります。
では逆に、ビジネススタッフの成果がわかる指標があればよいのではないでしょうか?
このJMCはそのビジネススタッフの成果にスポットを当てたランキングだと解釈しています。JMCのランキングが実際のピッチ上の成績と関係するのであれば、サッカークラブスタッフが自らの仕事の成果を見える形で機能するのではないかと考えています。今回はそんな分析をしてみました。
2017-19 3年間のJ1リーグ平均順位・勝ち点1を取る効率性・JMC平均順位
3年間(2017年~2019年)の
①J1リーグ平均順位と人件費表(左表)
②J1リーグ平均チーム人件費/勝ち点表(中表)
③JMC平均順位とリーグ平均順位表(右表)
②は勝ち点を少ない人件費で効率的に稼いだクラブの順に並べた表です。この指標は一見すると経営効率が良いクラブということで評価できそうですが、上位に来るクラブを見てもらえるとわかる通り、降格圏を主戦場とするクラブが上位に来る傾向にあります。
降格圏のクラブは「リーグ順位」で見た時には評価されないが、「勝ち点効率」の観点から見れば非常に優秀な経営をしていると見ることもできます。
この指標が表しているのは「ファンの求める評価」と「ビジネスの求める評価」が分裂している好例だと言えます。
この観点から見えれば、「チーム人件費/勝ち点」の指標自体がマネジメント評価の1項目としてあってしかるべきかどうかは議論がありそうです。
一方で、①と③については散布図で見てみましょう。
これは平均順位と平均チーム人件費の散布図です。JMCレポート内ではこの関係について直接的には語られていないですが、リーグ順位を見る時には経営効率性よりもチーム人件費の絶対値が重要になってきます。J1の傾向で見るとチーム人件費18億円以下と22億円以上が一つの分岐点になっています。
チーム人件費が18億円以下となると13位以下となる確率が高くなります。一方J1で上位の成績を安定して狙うためには22億円の人件費が必要です。経営効率的な観点から言えば「チーム人件費18億円以下12以上高効率中堅グループ」ということになりますが、順位的観点から見た時には必ずしも高い評価になるわけではありません。
「ビジネスの貢献がピッチ上の結果に結びいてるかどうかわからない」という所以でしょう。
次に③の散布図を見てみましょう。
これはリーグ平均順位とJMC平均順位の散布図です。J1においては、誤差±2位以内に11クラブ48%が入っています。誤差±4位以内まで広げると15クラブ65%のクラブが入っていることになります。
ここから導き出せることはJMCのランキングは一定程度、リーグ順位との関係性が認められるという事になります。
①②の考察では、リーグ順位とビジネス努力の間の関係を認めにくかったところから、③の考察により、実はビジネス努力がリーグ順位と紐づいているという事が指標として示されている事になると考えられます。
ビジネススタッフの努力はJMCの指標によりリーグ順位にも紐づいて可視化される
という事が今回の考察を通じて言いたかったことです。
私自身、ヴィッセル神戸で働いていた時、自分のやっている目の前の仕事がピッチ上の結果にどう結びつくのか、常に悩みながら仕事をしていました。
自分ではコントロールできないピッチ上の出来事の評価と、実際にはあまり評価をされることが少ない決算評価とビジネス評価との間で、クラブスタッフは常に揺れ動きながら、戦っています。
JMCはそんなビジネス努力を可視化できる指標であり、財務諸表には表れないクラブの努力・成果を測定する共通指標としての機能があるのではないでしょうか。
クラブスタッフはこの指標とランキングにもっと関心を持っていいと思いますし、世の中のサッカーファンの方々にもJMCの結果をクラブ評価に結び付けていってもらいたいと思っています。
また、今回は3年間でやったように、単年度の結果だけ見た近視眼的な評価ではなく、長期的視点で成果を計測していく必要があるでしょう。
今後もJMCを毎年楽しみにしていたいと思います!!
(参考)J2・J3の考察図
J2においては、チーム人件費にベットする経営効率無視のグループが存在することが特徴です。
母数が多いので、JMC順位とリーグ順位の関係も開きやすくなると思われましたが、実際には誤差±4位以内で65%が一致している結果となり、総論は同じとなりました。
J3は降格がないため、グループが大きく分けても2つほどになりました。ただ、散布図での結果はバラバラになっている傾向が強く、人件費と順位にボラティリティの高さが伺えますが、あえて上位陣を定義するなら人件費1.5億円以上が必要になってきます。
一方、母数が少ないという事も関係していると思いますが、JMC順位とリーグ順位の関係はJ1・J2よりも密接であると考えられ、誤差±4位以内で78%が順位が一致する結果となりました。
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