【2024バレンタインデー】商業施設オタクが感じた最近のスイーツトレンド: #6
本日、2024年2月15日、昨日はバレンタインデーでしたね。バレンタインデーといえば、クリスマス・年末年始に続く下期最大の大商戦。10年以上フードマーケットの最前で仕事をしてきた自称”商業施設オタク”の私が、今年のバレンタインデーの売り場を見ていて気になったことをつらつら書きますよ。数年サボっていたので、超最新という感じでは無いので悪しからず。
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そもそもバレンタイン商戦とは。
日本でのバレンタイン自体は一説には1970年代くらいから一般化したとされていますが、現在のような大型イベントとなったのは20年程前のこと。”イケメン(←ここ大事)海外ショコラティエ”を多数来日させ、一同に介することで女性客の心を掴みました。バイヤーは一年以上前からヨーロッパに出店交渉に出向き、来日するショコラティエは年々数を増やし、催事場はぐんぐんとスペースを拡大。スイーツゾーンを飛び出し、上層階の催事場にスペースを設けるようになります。日本最大のショコライベント”サロンドゥショコラ(伊勢丹)”は、2017年には国際フォーラムで開催されるほどの規模にまで拡大しました。他方、バレンタインは女性の社会進出とともに拡大したモチベーションであり、「好きな男性へ愛情を伝える」という意味合いから「感謝の気持ちを伝える」という拡大解釈がひろがり、”義理チョコ”として社会的なコミュニケーションツールとしても活用されるようになりました。これにより、高級な海外ショコラだけでなく、幅広くたくさんの人に配る”バラマキチョコ”も売上の重要な軸となりました。
近年のバレンタイン商戦の動向
”海外ショコラティエ”と”義理チョコ”で一大商戦への上り詰めたバレンタインでしたが、コロナ前頃からバレンタインの状況は必ずしも芳しい物ではなくなっていました。一世を風靡した”海外ショコラティエブーム”は衰退。(これは個人的な推測ですが、グローバル化によって欧米人があまり珍しくなくなったことや、韓流ブームでファン層が移行したことなども起因しているのではないかと思っています。)”義理チョコ”は「事務的」「面倒臭い」と倦厭される上に、コンプライアンス的な視点からも「女性から男性へ」という関係性を問題視する企業も出てきたことで、以前よりも消極的になっています。こうして、従来の売り方が成り立たなくなってきたことに対し、催事場ではイートインスペースを充実させてイベントへの来場動機を促したり、「友チョコ」や「ご褒美チョコ」などの新たな利用シーンを提案することに力を入れてきました。コロナ禍を経てからは、SDG’sやショーシャルギフトも一般化、さらにはクラフトチョコレートブームなど、よくいえば群雄割拠、悪くいえば有象無象…といった様相を呈しているわけです。
2024年バレンタイン商戦のメインヴィジュアル
各百貨店の販促ヴィジュアルを見ているととある共通点が見られました。まずはご覧んください。
いかがでしょう?どれもかなりポップですよね。上質さ、というよりはバラエティ感やハッピー感の際立つデザインになっています。加えて、いわゆる平成レトロ感とも言えるような、1990年代風のイラストやアメリカンポップなデザインを今風に変換している点で共通点が見られます。SNS上では”平成女児チョコ”なる手作りチョコがトレンド入りしており、30代40代には懐かしい、10代20代には新しいと感じさせるY2Kブームがバレンタインにもしっかり影響していますね。
※平成女児チョコ:市販板チョコを湯煎し、アルミカップに注ぎ、アラザンなどでデコレーションしたもので、平成時代の小学生くらいの子供たちがバレンタインに手作りしていた。
2024バレンタインを語るキーワード”マテリアル”
基本的に商材自体はかなりバラエティ豊かになっているので一概に傾向をまとめることはできないのですが、私が個人的に売場を回って気になったのは”マテリアル”ですね。文字通りのその商品の原材料などの「素材」という意味合いと、テクスチャーやヴォリュームなどの「素材感」という2点がとても印象的でした。
・素材としてのカカオ
改めてチョコレートの原料であるカカオへのこだわりを感じる商品や打ち出しが多く見られた今期。もはやバレンタイン商戦の定番となったジャン・ミッシェル・モルトローの《ヴォヤージュ・デュ・カカオ -edition2024-》は、8カ国のシングルオリジンのカカオをあつめた商品。名前の通りカカオの旅を楽しめる商品です。個人的にはパッケージのクラフト感あるテイストも結構好き。ビーントゥバーも相変わらず充実したラインナップでした。
一方で、新たに数多く見受けられたのが、カカオ=チョコレートに縛られない、素材としてのカカオに注目した商品群。nel craft chocolate の《勿忘》は京都の老舗俵屋吉富とのコラボ商品。カカオハスク(カカオの殻)、カカオニブをシロップで煮出して琥珀糖にした商品。カカオ自体の香りや独特の苦味などがうまく調和して、素材としてのカカオの奥深さを感じる一粒でした。ちなみに、使用されているカカオハスクは廃棄品をアップサイクルしたもので、これもサスティナブルな要素として魅力の一つですね。
・ローカルな素材
日本のローカル素材やクリエイターへの視線も年々熱くなっています。
兵庫県のショコラティエle fleuveは素材そのものを生かすことを最重要視しこだわり抜いた素材でショコラ、スイーツを手がけています。《完熟柑橘アソート》は、鹿児島県の金柑、広島県より伊予柑、レモン、ブラッドオレンジを使いって素材のままに仕上げてます。
せっかくなので、地元のパティスリーも紹介しておくと長野県塩尻市のパティスリークルールも地元の赤ワインとブラックベリーを使用したショコラテリーヌを展開。塩尻市はワインの産地としてしられており、地元ワイナリーのワインを使ったワインショコラも展開していました。(地元のお店が都内で人気になっているのを見るとなんだか勝手に誇らしくなりますね!)
この手の地方ブランドはますます増えていくだろうと思います。バレンタインに限らず今後も注目ですね。
・マッシブなケーキ
売場の生菓子を見ていて、ケーキのデザインが重量感を感じさせるものが多くなっているのが印象的でした。BRANCHÉ CHOCOLATの《至極のカレ・オ・ショコラ》は正方形が印象的な高級スイーツ。飾りのないマッシブなデザインは、素材や味の良さに自信があってこそ。
毛色は違うけど、伊勢丹新宿店限定ブランド obi-sand by はせがわ の《ベルギー製チョコレートムースのショコラサンド》も見た目のインパクトがすごい。見た目だけじゃなく、食パンにチョコレートムースをたっぷり染み込ませた上にチョコレートソースをかけていて、見た目通りのヴォリューム感。刺さる人には刺さるんだろうなぁ…。
このほかにも、テリーヌなどの素材の味を楽しめるケーキが目立つようになってきたなと思います。
やっぱり商戦は楽しい!
そんなこんなでバレンタインデーの売場を振り返ってみました。実は、数年食業界から離れていたこともあり、しっかりバレンタインの売場をみたのは久しぶりだったのですが、相変わらずの定番もありながら目新しいブランドもあり楽しかったですね。特に素材やローカルといったキーワードは、ここ数年でも注目度合いがさらに高まっているように感じました。私もローカル民として、地域素材への目を改めないとな、と身を引き締めました!
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銀座OLから突如縁もゆかりもなかった、長野県塩尻市に移住した私が日々の思いつきや偏愛、思考などを書き留めています。
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