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漫画の描き方のコツ備忘録vol.16【ネーム・プロット編】番外考①【キャラクターの立て方】

こんにちは。晏藝です。

今回も、私が先人の手記や言葉から学んだり、自学したりして漫画に生かしてきた制作に役立つ情報を、小筆として書き留めていきたいと思います。
悩める漫画描きさんの一助となれば幸いです。

ここまでに、漫画の描き方の基礎的な部分にはふれて参りましたので、今回からは細かなコツを項目別に見ていきたいと思います。

初回は、【ネーム・プロット編】番外考①として《キャラクターの立て方》についてのお話です。

漫画修養には自学が大切ですので、どんな風に思考を進めていくのかの流れも、合わせて見えるように記していきたいと思います。



◇キャラクターが立っているとは何か?

まず、魅力がある登場人物の条件によく挙げられる《キャラクターが立っている状態》というものを、どのようにして自分の作品上に作って行けば良いのか?
という事についてのお話です。

しかし、そもそも《キャラが立つ》の定義が分からなくては、その状態も目指せませんので、そこから考えてみます。

まず、《キャラクターが立っている》という評価は、主に以下の条件がクリア出来ている場合に言われる事が多いかと思います。

◆《キャラが立っているの定義》

① 架空の存在である登場人物に、一つの生命体として強い存在感を感じる。
② 言動などに、個の人間としての一貫性がある。
③ 誰とも似ていない、唯一無二の強い印象。

などです。つまり、読み手さんに対し、

【架空の存在】でありながらも、
【現実の生き物・人物としてそこに実在している】
ような印象を与えるキャラクター

キャラが立っている】

という状態であるかと思います。

反対に、現実の世界の友人や家族や知人が、上のような基準とかけはなれていたら実在の人として掴み所がなく、むしろ怖いように感じます。
例えば、

①実在している感がない。全く存在感がない。生き物みたいじゃない。

②いつもいつも一貫性のない言動。
昨日会った時と何か違う。さっき会った時と何処かが何かいつも違う。
毎日同じ人と思えない行動。

③固有の人間として掴みにくい。
家族や友人なのに、こういう人、昨日もどこかで会ったと毎日思う。
何回会っても見分けがつかない。

などと想像すると、もうただのホラーかギャグです。
しかし、うっかり時間に追われて、これに近い人物像を生成しまう事もあるので注意が必要です。

加えて、現実世界で言えば、キャラが非常に濃かったり、漫画の中の主要人物のような属性を持った人に対しても《キャラが立ってる》と使います。

漫画の中でも、《しっかりとした特徴付けがされていて、それがその人物にマッチしている時》もキャラが立ってると言われます。

これらをかんがみて、漫画描きが《キャラクターが立っている人物》を描くには、

【実在感】や、
【強い存在感のある個の人間】、
【唯一無二の人間・生物】として、
そのキャラを確立する。

必要があるのではないかと思われます。


◇キャラクターが立っている状況を作るには?

ではここから、どうやってそれらを自分の漫画に落とし込むか?
を見ていきます。

結論から言えば、重要なのは
第一に《作者(自分)の目》から見て、
《実在感や強い存在感のある、個の人間となるようにキャラクターを作る》事です。

なぜなら、読む側に《何か》を感じてほしい時には、まずはその《何か》《描き手が感じている状態にしておく》というのが肝要なためです。

「おお、キャラが立ってるなあ…」と読み手さんに感じてもらわねばなりませんが、作者が「ああ、キャラが立ってないなあ…」と思って居たら、ままなりません。

しかし、先にお伝えしたいのは【この世の全ての人には必ず実在感や存在感がある】し、【この世の全ての人は唯一無二であり、必ず固有の魅力がある】という点です。

私には何も無い…というのは完全な不正解です。
この世にあらゆるフェチがあるのは、その魅力が無いと思うものに魅力を見出すプロがいるという事です。
無いのではなく、自分や魅力を感じない人の、魅力を見出す事において自分が素人であるだけです。

つまり自分のキャラクターのプロである漫画描きの仕事は、まずしっかりと【キャラクターを個の人間として確立させ】て生み出す事。
そして、【誰よりも、その人物の魅力を知る】事であると思います。


◇実例 / キャラクター制作のために行う事

では実例として、自身のキャラクターを《実在感や強い存在感のある個の人間》として確立して行くための、いくつかのプロセスを挙げていきたいと思います。

①キャラクターシートや、履歴書ようなものを制作してみる。

この手法でよく挙げられるのが、ジョジョの奇妙な冒険で有名な荒木飛呂彦先生制作のキャラクターシートです。

こちらは、履歴書のようにキャラクターひとりひとりの名前や趣味、性格、好きなもの嫌いなもの、身体的な特徴などなどを、細かく数十個の項目に分けて文字で記入していくものです。
これを記入する事でキャラクターの存在をリアルにして行きます。

先生ご自身の著作の中でご紹介されたり、またWEB上で、こちらを参考に作成されたテンプレートや、別の方が作成したキャラクターシート・キャラ履歴書類も探す事が可能ですので、
知らなかった、やってみよう!という方は、ぜひご自分に合うものを探して自分のキャラクターバージョンで作成してみてください。
きっと楽しいと思います。

②キャラクターの設定表を作成してみる

ほかに、漫画の作品コンペなどではキャラクター設定表の提出などがある場合があります。

こちらは、立ち絵、顔のアップ、喜怒哀楽の表情、簡単な性格や名前など、イラストと説明を合わせて作成します。
主に、絵的な面でのデザインを軸としている事が多いです。

性格から考えるのが苦手な方は、まず思い付くままキャラクターのイラストや絵的なデザインを描いてみて、
そのキャラクターがどんな世界に住んでいるのか?なぜそんな格好をしているのか?表情をしているのか?ポーズをしているのか?
こんな格好をしている人は何処に行き何を食べるのか?なぜそれをするのか?好みは?などなど
ビジュアル面から内面や背景を掘り下げて考えてみると良いかもしれません。

イラストの隣に、それらをメモしてみるだけでも、設定表のようになります。
キャラクターが私達と同じように一人の人間であるならば、着ているもの、持ち物の全てにそれを選んだ理由もあるはずです。
これを見つけるのも非常に楽しい作業です。

③ノート漫画などとして、キャラクターのエピソードやイラストを落書きしまくってみる。

これは思い付くまま、インスピレーションでそのキャラクターが動いている場面を、漫画のシーンやイラストなどに描きつけていくという、非常に漫画描きらしいやり方です。

最も原始的な方法ですが、キャラクターに愛着も出ますし、そのシーン自体を作中で使えたりし、かつ、キャラクターの性格把握や掘り下げにもなったりと、一石三鳥です。

これを行った後にキャラクター設定表などの制作を行うとスムーズに出来たりします。

私自身が実際に漫画を描く際には、
作画用には、キャラクターの立ち絵、アップ、背面、側面、衣装や持ち物のビジュアル詳細を、鉛筆で余った原稿用紙などに描き起こし、キャラクター設定表らしきものを作成しています。

また、特に長編のネームを描く場合には、最初にその漫画のエピソードをノートなどにいくつも描き貯めたりして、登場キャラクターの性格の把握を行います。
本番原稿やネーム、ストーリーを描きながら、そのキャラクター自身の好き嫌い好みなどの思い付いた裏設定を足していく事もあります。

個人的には、描くキャラクターの性格や言動の把握が不十分だと、ネームを描いたり物語を展開させたりする事が難しく
また、ビジュアルがしっかり決まっていないと、作画が滞るという状態になりやすいです。

また、私の場合は、長編で主役になるようなキャラクターは、任意の一枚のイラストを描いてみて、そこに自然と描きつけたキャラクターが大元となったりする事が多いです。
その一枚絵から、お話やキャラクターを広げていく、時代背景などを組み合わせて調べ物をして掘り下げて、世界観を作っていくなどの手法を取っています。

現実でも、親しい人や、性格がよく分かっている相手であれば、《何か》が起きた時に《その人がどう対処するか》が、パッと思いつくように分かるかと思います。
ある意味その人は、あなたの世界でキャラが立った状態です。
作品内の自作キャラクターもそれくらい理解している状態になれば、奇抜でなくても、格好良くなくても、十分キャラクターが立ち、動きます。

また、その人物がこちらの意図せぬ動きをする事があり、そこにまた理由があったりするのも、漫画でも現実でも面白い所です。

漫画が、物語と絵の両輪で進むように、
キャラクターも内面と外面の両方を同じように重視して作りこめば、制作がしやすくなります。

ここでの外面の重視とは、デザインに凝る事ではなく、その人間として違和感のない衣装や髪型にする・ピッタリさせるという部分です。

清楚な女性が、なぜそんな破廉恥な服を気にもせず四六時中着ているのか…なぜモヒカンなのか…という謎キャラにならないように。
もちろんそれに理由があったり、架空世界の文化的なものだったりという事なら作品のネタになりますけれども。


◇まとめ

◎キャラを立てる=キャラを掴む

以上の実例は、作者から見たキャラクターを実在感や強い存在感のある人間像として作り上げていく方法です。
目的はあくまでも、キャラクターの存在の全体像を掴むためです。

反対に言えば、生み出したキャラクターをより深く明確に掴めさえすれば、また、理解してあげられるとするならば、その方法は何でもOKです。

ここにあげた実例のほかにも、キャラクターを掴むために行える事は、沢山ありますので、ぜひしっくりくるものを探して見てください。
人によっては、ずっと脳内でキャラクターと会話や聞き取りをする、などでも良いのかも知れません。

ともかく、目の前にそのキャラクターが居たらしっかり会話できる、どんな反応もぱっと想像できる状態になれれば、物語を描いた時に勝手にキャラクターが動くという状態にもなりやすいかと思います。


◎人間の個性とは

また、人間の個性は、起きた問題にどう対処するかによるとも言われます。

例えば、「ドアを開けた瞬間に頭上からソフトクリームが降ってきた」というシチュエーションがあるとして。

これに対して、
「驚く」としても、声を上げず飛び退く、キャア!うおお!ひゃあ!などと叫び声を挙げる、気絶する、驚き固まり顔に当たる、
「対処する」としても、口で受け止める、食べる、一口で飲み込む、消し炭にする、蹴る、叩き落とす、とにかく殴る、避ける、キャッチする、落とし主を探す、おかわりを所望する
「ほかの感情を見せる」としても、無表情、怯える、爆笑する、泣いてしまう、怒る

などなどキャラクターによって、その反応は変わってきますし、これらの組み合わせで性格表現は幾通りにもなります。

ご自分の好きな漫画の、キャラが立っているなーと思うキャラクターでこれを想像してみると、そのシチュエーションで、どんな反応をするのかが何となく妄想できるかと思います。

それは、その作品の作者さんが自身が掴んでいるそのキャラクターの存在や魅力を、作品の中で私達に伝わるように上手に表現されているためかと思います。

魅力あるキャラクターや、ビジュアルが素敵なキャラクターを記号的に生み出す事もある意味では大切ですが、

個人的には、まず

作者本人が、自作のキャラクターを理解して、
自分が魅力的だと感じる部分を作中でも表現し、
掘り下げて好きになり、
そのキャラクターへのどんな質問も、よどみなく答えられるくらいに、その存在を把握する事が一番大切

であるのではないかなと思います。

自分の作品のキャラクターを、世界の誰よりも理解して、自分にしか聞こえないその声をしっかり聴いていきましょう!


ここまでお読みいただきありがとうございます。

現在、作成中の作品の作画が大詰めなので更新頻度は低いですが、また漫画制作に役立つ情報や作成のコツなど、ちょこちょこ惜しみ無く出して参りますので、次回もお付き合いいただけたら幸いです。

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晏藝嘉三《アキ ヨシミ》
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