雅号(PN)を旧字体にしたお話
待ちなさい君、ペンネームの表記が変わっとるじゃないかの件について
割とどうでも良い気がするけど、名前って大事よねと思うので、どっかでご説明しときたかったペンネーム表記のお話です。
お気付きの方も居らっしゃるかと存じますが、本年令和5年から、また電子書籍では『神垣は緋④』から、ペンネームの表記を【晏〈芸〉嘉三】ではなく、【晏〈藝〉嘉三】に変更させていただいております。
しかしながら、電子書籍販売ストア様の表記は都合上〈芸〉のままとなっております。
なんぞそれ?別に今まで通り全部〈芸〉表記で良くね?
画数多くて読みにくいしなあ。
と、私もちょっと思います。思うのですが…
しかしながら、非常にマニアックかつ地味でも個人的に譲れない理由がありまして、晏【藝】と表記上だけでも明記させていただくようお願いしたり、自分からも名乗ったりしております。
皆様から呼ばれる際はこれまで通りの略字〈芸〉のままで全然大丈夫ですので、特にお気になさらずいただけたらと思います。
ならば何故そんな面倒すんのさというお話なんですが、そもそも【晏藝嘉三】という名はちゃんと意味や願いがあって名付けたペンネームであるという理由があります。
その意味や願いとは
「私が漫画を作成する事によって、読んだ人や作者やその周辺や、この世によいことや幸福やらポジティブななんやかんやが沢山起きる。」ぞ。
というものです。細にご説明すると、
【晏】という漢字は、日の下に屋根があり、その下でお祈りしている人、作業をしている人の象形だそうです。
つまりは【家に引き込もってコツコツ良い行い(作業、漫画)しとる人】みたいな感じ。
晏の字をペンネームに使っている漫画家さんも、私が調べた限りではいないようでしたので、ちょうど印象に残って良いなと。
そして問題の【芸】は名付け当時、何の気なしに普段使っているまま(これがあかんかったのでした)【芸術、漫画制作を行う事】の意味で採用しました。
【嘉】はよく知れた【めでたいことやよいこと。素晴らしいこと。お祝い事】の意です。
【三】には安定という意味もありますが、【物事の全ての要件や、沢山】という意味もあります。
すべて合わせて前述の意味となっているはず、でした。
しかして、ここからが何故私がわざわざ無理をおして今年からペンネームを旧字体【藝】表記したかという話の本題です。
非常にマニアックなのですが、この旧字体【藝】には【植物を植え、耕す、修練して身に付けた技術】という意味があります。
現代ではよく思い描く、正に【芸術】的な意味合いです。
現在、良い意味で使われている方の【芸】の字は、もともとは全てこちらの【藝】の表記が正しいものであったようです。
しかし、昭和20年代前半に、画数の多かったり異字体が複数ある文字を書きやすい新字体に統一する告示がされました。
いわゆる「当用漢字」「常用漢字」というやつです。
その際、【藝】の略字つまり新字体は、【芸】〈ゲイ〉の字と定められたようです。
ところが…それ以前から【芸】という漢字には〈ウン〉と読む全く異なる意味で、同じ形の漢字が存在していました。
漢字のこの【芸】〈ウン〉は、くさぎる、かりとる。というアグレッシヴな意味の文字です。まじか。
え?待って下さい。真逆なんですけど。
それだと良い行いとコツコツを、刈り取っちゃうんですけど…?
これは新字体に変わる時も物議をかもしたようです。
そのために、現在でもかたくなに【芸】を使わず【藝】を用いられるという場もあるようです。
私もペンネーム付けたときにはそのような来歴とは全く知りませんでした。
ここ最近で知り戦慄いたしたわけです。
漫画は半分は絵、半分は文字で出来ております。文筆業と分類する場合もあります。
半分、文字で物語作るのが仕事の漫画描きの名前が意味が完全にヤバイ方に間違っちゃってるのは私は嫌だなあ…ていうか真逆って…
でも出版に関係するから、個人的な理由でほかの人に迷惑かけてまで変えたいって言うのもなあ…
ええ~やだなあ~迷惑かけんのも面倒なのも大事な意味が間違ってるどころか真逆になちゃってるのもやだやだ~!
何で知ってしまったんだ自分!
などと、かなり葛藤し悩んだんですが、やっぱり名前って大事だよね…と思い直し、勇気をしぼって表記変更をお願いしたりいたしました。
さすがにストア様の表記は煩雑となり、その割には迷惑もかかりすぎるので、そのままにしていただいたのですが…
何処かの渡邊さんが正式な書類以外、渡辺で通すみたいな感覚で、正式には【晏藝】だけど、ストア様の表記は読みやすい公然とした新字体の略字で【晏芸】としているんだなあという体でぼんやりと認識していただけたらなあと思います。
以上です。
我ながら非常にマニアックで細けえ理由でございます。でもそこは譲れんかったのよ…人生は一度きりだし。名前は一生もんだし。
神はディテールに宿るのよ
『物見の文士』描いてる以上は日本語をないがしろにするのもちょっとお恥ずかしくもあり。
以上が晏藝嘉三爆誕の顛末です。
やっぱ本人以外、割とどうでもいいかもなあとは思うけど説明いたしたかったのです。
意外と便利なのが、作品の公式販売関連について調べたい時には【晏芸嘉三】で検索し、作者付帯のあれこれを調べたい時は【晏藝嘉三】で検索すると出やすいです。
これも割とどうでもいい。まあよかろう。
そして以下は余談ですが、アナタもともと【えす☆おう】だったのにそっちは何があってどしたん?
というご意見もあったかと思うんですが
こっちはこっちで裏で色々ありまして。
使用当時、出版社に打ち合わせに伺っていた際に受付でいつも名前を言っていたのですが、新人漫画家と言うのもあり「えす☆おうです。」というと「えっと?」みたいな感じで数回聞き返される、という現象が受付の方が変わる度に起きる。つらい。
さらに、出版社の新年会で別系列雑誌の作家さんに名前を聞かれると、新人漫画家というのも以下同文で「えっと?」みたいな感じで数回聞き返される。「あー…えす☆おうです。ひらがなで。」ニッコリ。つらい。泣きそうだ。
そこそこ決定打になったのは、ちゃんとした名前っぽくないペンネームを付けていると作家としてのリアルでの初対面で一定数
「あら、いやですわ?デフォルトでおバカだと思われておりますの?」
みたいな事がある…気がするだけの被害妄想と思いたい。
が、私がまっちょならもう3回くらい林檎を握りつぶしているぞ。
という事が【えす☆おう】時代コンスタントにありました。
重ねて当時、この名義の「猫、猫ォ」という作風の方で同じ会社さんからストーリーの依頼をいただくとは露ほども思っておらず、ストーリーはちゃんと名前っぽいペンネームで、別に発表口を開拓して行うから良いんだーというつもりでおりました。
ところが何の因果か、しばらくしてそのままの流れで『物見の文士』を描かせていただく事になりました。
いや、『ミケ』はまだ良いとして。
そもそも【えす☆おう】は、ギャグを発表する時のみのペンネームのつもりだったわけで、それなりに愛着はあるけど、文士以降を描く段となってはさすがにこの先、このペンネームは壊滅的に合わないぞ…
万が一、これで連作にまで漕ぎ着けた日には、もはや後戻りも出来んし。
(物見の文士は長編の全体構成雰囲気や主要キャラは構築済みで、神垣は緋にいたっては草案ネームが最終回まで出来ており、すでにいずれ描く気が満々でした。さらにとても、えす☆おうではないファンタジーも一作存在していたため、めっちゃ焦る。)
これは…この名でやる事自体がギャグでは?人生をかけたギャグ?
てか、え?私このペンネームのまま生きて死ぬの?
みたいになり【えす☆おう】というそこそこふざけた名前でかなり真剣に悩んだわけです。
上の方に反対されもしたけど、今思えば決断し押し切って変更をお願いして個人的には良かったなあと思っております。
さすがにあの名前で『冥土に華の』とか『猫鬼の死にぞこない』『神垣は緋』をやる勇気はなかったよ…
という顛末で、そのあたりの時期にえす☆おうから晏芸嘉三に変更させていただいた次第です。
やっぱり割とどうでも良い気がするけど、名前やタイトルって本人にとっては本当に大事なものだしなあ。というお話でした。
何か長くなっちゃった。
気圧変化で眠れず、漫画描く体力はないけど文字はいけそうだったので書いてみたペンネームの件でした。
また、閑とネタがあればnoteに記したいと思います。
ここまでお読み下さり有難う存じます。
それでは。
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