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漫画の描き方のコツ備忘録vol.13【ネーム・プロット編】【話作り】⑤初稿やプロットをネームに起こす《絵コンテを切る》

こんにちは!漫画描きの晏藝あきです。
今回も、私が先人の知恵や自分の実務から自学したり、整えてきた漫画の描き方のコツを、備忘録として書き留めていきたいと思います。

漫画の制作は、楽しくも非常に大変な作業です。突き詰めれば様々な高度な技術が必要となる、孤独な職人仕事でもあります。
ゆえに周りからは、どうやって描いているか分かりにくい面もあります。

そんな中でデジタル化も進み、無料で描き手から直接、実践的なやり方を学べる機会も少なくなっています。

私も締め切りが迫る中、一人きりの正解の分からない手探りの学習や激務に、心細さを感じていた覚えがあります。
日々、漫画に関わる事をお仕事をする編集さんの中にすら「この人は漫画描きを、原稿料を入れたら漫画が出てくる自販機とでも思っているのかな?」と感じるような人もいらっしゃいました。

それだけ一本の漫画を描くのに苦労と技術を必要とするのか、理解されていないという事でもあるかと思います。
また、こういった記録を残していく事で、描き手からも理解していただく努力をする事も重要かしらと思います。

現在の漫画業界はどちらに転ぶか予想のつかない過渡期で、私自身もまだまだ技術勉強中の身ではありますが、
一連の記事が同じように学び中の方や、少しでも制作の知識を増やしたい方などのお役に立ち、多くの読み手の方にも利となれば幸いです。

さて、そういった思いもありつつ【ネーム・プロット編】【話作り】の5回目からは、いよいよネームの完成編です。

前回までで、プロットや初稿の完成までのコツや手順の基礎・コツをお話いたしました。
最後に、ネームの組み立てを行います。


本番ネームに起こそう

ここまでに作成した稿を、本番ネームに起こす作業にも、いくつかのやり方や手順があります。 

今回も、それらの手順を全部乗せで、一つずつ、基本的なやり方やコツなどを説明してまいります。
適宜、はしょったり組み合わせたり、ご自分に合う部分を取り込んでいただけたらと思います。基本的には大体、以下のような手順でプロットや初稿を、ネームに起こす方法があります。

①絵コンテを切る

②ミニネームを作る

③出来が8割ほどのネームに起こす

④-A(本原稿の下描き上でネームを完成させる)
原稿のラフを切りながら、ネームに手を加えつつ完成させていく

④-B(完成する漫画と全く同じネームを描く)
〈動かせない完成ネームを他人に見せなければならない場合のみ〉
ほぼ完成原稿と同じ出来に固まったネームに起こす

今回の vol.13では、①の絵コンテを切る作業についてご説明いたします。

長くなってしまうので、②③④につきましては、記事を分け今日と明日、二記事続けてアップいたしますので、後半もお時間のある時にお読みいただければ幸いです。



①絵コンテを切る

ではまず、漫画の絵コンテを切る手順についてです。

ページ数が決まっている商業や、どうしてもこのページ数にこの展開を収めたい!という時には、この〈絵コンテを切る〉技が有効です。
また、文字のプロットからネームを作成する場合・原作付きなど場合にも、話の展開を確認しやすくなります。

絵コンテと言えば、主に映像作品の、シーンの書き出しなどに使われますが、漫画の場合にはもう少し詳細な切り方をします。

やり方としては、その話に入れ込むコマを全て描き出すというものです。
イメージとしては、こんな感じです。↓

物語の展開に必要なコマやセリフを全て用意してから、コマを割りネームにします。
(シノプシスあらすじの抜き出しような絵コンテの切り方もありますが、ここでは完成ネームのための詳細なやり方をご説明しています。)

これには、

〈ストーリー運びが映画的に出来る〉
〈コマ割りが苦手でも、割り方の法則と併用していけば、ある程度は作業的にコマを切れる〉
〈物語の全体を客観的に見渡しやすい〉
〈コマの無駄が省け、物語の展開が分かりやすくなる〉
〈シーンの組み換えが容易〉

などのメリットがあります。

上は私が作成したテンプレを用いていますが、無地の落書き帳やノート、コピー用紙などを区切るだけでも十分行えます。

(※巻末に今回の説明で使用した、私のクリスタアセッツのテンプレ素材紹介ページを付けておきますので、よろしければ、どんなものを作れば良いのか使い方と合わせてご参考下さい。)

◇〈漫画絵コンテ〉やり方とコツ

それでは、やり方とコツです。
例えば、全8ページで、基本6コマほどをページ毎に入れる漫画を作るとします。 さらに、1ページ目は表紙一枚絵は無くし、タイトル込みで3コマほどに収めます。盛り上がりはコマを減らして迫力を出し、オチのページには1コマとします。

これを計算式にすると8ページで、


3+6+6+6+5+4+4+1=35コマ※


です。
さらにこれを、このパターン以外にも使える公式にしてみます。

基本ページを6コマほどとする場合には、大体
作品のページ平均のコマ数は5コマほどです。なので

《総ページ数》 × 《 5(平均コマ数)》 -《 5(表紙分の平均コマ数)》
≒ 使える総コマ数


くらいのイメージとなります。
基本ページのコマ数が減る場合は平均値も減らします。
基本ページ5コマなら平均4など。描き手の割り方のクセによって値は変わりますので、こちらはあくまで参考程度に。

上のパターンの場合、約35コマほどでお話をまとめる必要があります。
増減はあれ、おおむねこのような感じで、一話に使える総コマ数起承転結内のコマ数配分もザックリと計算できます。

この基準に合わせて、起は○○コマ、承は○○コマまでなど目安として、話がうまく展開するようにコマを削ったり、精査したりすれば、コマ数ベースでも作話をしていけるわけです。

このように、使うコマ(シーンやセリフ)の確定ができれば、後はそれらをページの中で、パズルのように組み合わせてネームにしていくだけです。
このやり方は、場面ごとのブロックでコマを管理する事が可能ですので、シーンの組み換えも簡単に行えて便利です。

ただし、話の展開や実際のページの切り替えの位置などによっては、ネームを切っていく段階で、決めたコマを纏めたり増やしたりする必要もあります。
なるべく、コマの描き出しを行う時点で、画像の赤線のようにページ区切りの位置などを決めておく方が無難かと思います。

※注意
クライマックスでは大抵、大ゴマを増やすと思います。

そのため、起承転結(クライマックス)ページ配分を同じにするか、または転結のページを少しだけ増やしたとしても、
肝心の転結(クライマックス)のコマ数は、前半と同じくらいか少ないという状態になります。

もしも、総ページを単純に4で割って、起承転結を割り振ってしまうと(16ページなら起4承4転4結4など)、
大ゴマを取った転結のコマ数は少なくなり、反対にページ配分をそのままにコマ数を増やすと、コマが小さく詰まり気味になったりしてしまいます。
これが、盛り上がりが物足りなくなったり、迫力にかけたりする原因の一つともなります。
絵コンテでの作成でなくても起こりがちな落とし穴です。
そのため、この辺りにもうまく調整が必要です。
ページ配分については、本備忘録 vol.1もご参考下さい。

また、下の用な形で絵と文字に分け、ネームに近付けて切る絵コンテもあります。

この場合は、1ページ分の構成を約1ページごとで決めていく形ですね。
まず、前者のようなテンプレでコマを描き出し、次の工程で細かくこれを行うという手もあります。
そこまで出来れば、そのまま本番ネームに移行する事も出来ます。


さて、漫画の絵コンテの描き方は以上となります。何かの参考になれば幸いです。
後半のネーム完成編、vol.14も明日、続けてお出しいたします。
残りの見出しはこんな感じです。

②ミニネームを作る
③出来が8割ほどのネームに起こす
④-A(本原稿の下描き上でネームも完成)
④-B(完成する漫画と全く同じネーム)

それでは、ここまでお読みいただきまして有難うございました!
よろしければぜひ、vol.14 もご活用くださいませ!



お道具箱

絵コンテ切りは、私自身も最初から自分で発案しコツコツやっていたんですが、他にもやっている方がいらっしゃるようです。

次回にご紹介するミニネームも自主的に始めたんですが、そちらもやってる!という方が結構いて驚きました。
個人個人の閉鎖空間でも、沢山描いていると人間のやりやすい創作方法って共通してくるものなのでしょうか。

昔、私は下のコレを使ってみていた事があり、絵コンテはその延長で始めたやり方です。
無印良品の週刊誌4コマノート、って言うんだ…これ。
勝手に「無印の絵コンテのアレ」って呼んでました。近所で見かけなくなって残念だったんですが、商品としてはまだあった!
こちらが使いやすい方もいるかも。という事で載せておきます。

クリスタお持ちの方は、良ければこちらを。
趣味の自作素材です。

クリスタ登録時に、手元の本の組み合わせで適当に付けた名前で素材を出す羽目になったので出品名義別人ですが、まごう事なき自作素材です。



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