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〈漫画制作マニアック話-その2〉『自分に最適な液タブを探していた元アナログ漫画描きがフルデジタルに移行して、ARTISUL社さんのお得な液タブにフィットした話』

タイトル長い!
こんにちは、漫画描きの晏芸(あき)です。
今回も、漫画制作についてのニッチかつマニアックなお話をしていきたいと思います。

2回目はデジタル画材、液晶タブレットについての2つのマニアック話です。

『アナログ漫画描きだった私が、フルデジタル作画に移行した時に知っておきたかった、液晶タブレット選びの初歩的なチェックポイント』

と、

『今、私が使っている外国製のお得な液タブとの出会い 』についてのお話です。

漫画のデジタル作画で、アナログのように線を引くのに欠かせないタブレット、大きく分けて、「板タブ」と「液タブ」があります。

その違いについては、詳しくご説明をして下さっている方が沢山いらっしゃいますので、
ここでは、よりアナログ作画の感覚に近いと言われている『液晶タブレット(液タブ)』を探す際に、

探す時に、誰かに教えて欲しかったなぁという事、購入のために調べた事、さらに、実際に使ってみてアナログ作画と比べてどうだったのか、を中心に書いておきます。

今回も、主に漫画創作者の方に向けた、やたらとニッチでマニアックなお話ですので、お気を付け下さい。
そして、漫画の制作についてご興味のある方も、よろしければお付き合い下さい。

今回のお話は、
B4サイズの漫画原稿用紙で、商業に寄稿していたアナログ漫画描きの私が、
フルデジタルで、デジコミ配信用のB4サイズの漫画原稿を仕上げた経験からの話、となっております。

また、半年前に移行したデジタル初心者による、液タブ選び初心者向けという記事ですが、どなたかのご参考になれば幸いです。

では早速、液タブ選びのマニアック!

『アナログ漫画描きだった私が、フルデジタル作画に移行した時に知っておきたかった、液晶タブレット選びの初歩的なチェックポイント』

まず最初に、私がフルデジタル化の際にぶち当たったのは、液タブを選ぶ基準となる、液タブのスペックって、そもそも何じゃいという問題です。

紙に炭素、インクにペンで描いていたアナログ漫画家にとって、そこは、やたらとカタカナの専門用語が飛び交う未知の領域でした。宇宙。カタカナと聞いたことない漢字の宇宙。せっかく訳したので聞いて下さい。

ざっくりとアナログ漫画語に直してご説明すると、液タブ選びには、いくつかの重要な項目がありました。あらゆる外国製の、また日本製の液晶タブレットにはそれらの数値やオプションのありなしに無数の差異と、高低があり、それらを参考にして、アナログ画材を選ぶ時のように、自分の用途や癖に合ったものを選ぶという事になります。

調べて、使ってみて私が思ったのは、やはりデジタル機器の液タブも画材の1つである。という事です。

ただ単純に高かろう良かろうというものではありませんでした。「ウィンザー&ニュートンの高級水彩より、コピックの方が上手く塗れるんですけど~」的な事も普通にありえました。
しかし、やはり小学校で使う絵の具よりは、ウィンザー&ニュートンの方が発色は良く、キメが細かく、綺麗です。
項目ごとにスペックの高い方が、その項目で一段上の表現をしたい時には有効でした。すでに、かなりマニアックですが、気にせず続けましょう。

液タブのスペック、その種類と項目、それらは大体、以下のようなものでした。

液晶タブレットのスペックを選ぶ時の
チェックポイント

◆液タブモニターに、どれだけトーンや線や点描などが細かい所まで綺麗に表示出来るか(画面の画素数)
◆自分がかけた筆圧を、どれだけ正確に画面上で再現してくれるかの数値(筆圧レベル)
◆ペンの傾きを検知してくれる。(傾き検知)
◆引いた線が液晶タブレットのモニター画面に、映し出されていくまでに、どれくらいの時間のブランクがあるのかの数値(レスポンスタイムとか、何とかセカンド/秒とか書いてある。)
◆液晶タブレットのモニターに描いたカラー原稿の色を、別の所で見た時の色の再現率(RGBまたはNTSC カバー率など)
◆液タブ付属の専用デジタルペンには「充電式で、少し重さや、重心に偏りのあるペン」と、
「非充電式の軽めな重心に傾きのないタイプのスタイラスペン」などメーカーによって違いがある。
また、その液タブに使える違うタイプの別売ペンもあったりする。
◆単純に画面の大きさ(モニターサイズ)
◆目視した時に感じる、ペンの触れた位置とモニターに映る描線位置のズレ具合(視差)
◆画面素材、デジタルペンの素材、摩擦の具合やペン先の太さ、手に伝わる感触(ペンと描画面の質感)
◆消しゴムから素早くペンに持ちかえる、ペンで画面キー押さず紙を回転させるなどのオプションキーの設定が出来るボタンが付いているか。さらには、タッチパネル機能付きであるか。(タッチパネル、ショートカットキーの有無)
◆液晶画面の硬さ、柔らかさ

他に、Windowsや、Macのどのスペックに対応しているかノートパソコンでいけるか、ソフトや液タブが正常に動くメモリ値などありますが、
それらは大体、使うパソコンのスペックの方の話で、私よりめちゃめちゃ詳しい方が、どこかでご説明してくれてますので省きます。

ともかく、これらの項目の違いで画材として、自分のこだわりと好み、また、用途に合わせた液晶タブレットを選ぶと良い事が分かりました。

数値として各種公式の商品紹介に明記されているものと、「視差、ペンの具合、描き心地など」レビューやレポート、リアルな試し描きでしか判断がつかないものがあります。

液タブ大手企業、数社の液晶タブレットは、大きめの町の巨大家電量販店や、メガホームセンターなどに、置いてあり、試し描きが出来たりします。ネットで調べると置いてあるかどうか分かる事もあります。
また、製作会社や機種によっては、レンタルが可能だったり、試し描きが出来る専門の拠点がある場合もあります。

いざ、試してみて、それらが自分にフィットすれば良いのですが、フィットしなかった場合(私です。)、試し描きが出来ない他の無数の機体の中から探すのにちょっと途方に暮れます。

ですが、それらがフィットしなくても、描き味の異なる別の会社さんのものがフィットする事もありますので、「もう無理ぃ~移行、終わった!」と諦めないで頂けたらと思います。

そして、下の枠内が私が実際に、自分に合った液晶タブレットを見つけて、フルデジタルで一本、原稿を仕上げてみた際の、液タブスペックへの細かい所感です。

「液タブっていう画材、使ってみた」という感じです。こちらは私の主観的意見となります。


上の枠内の項目に対応しています。

◆〈画面画素〉
プロが原稿に使うような大きな画面サイズの物は大体、画素もハイスペック。
レビューやレポート、出来れば実物をチェックして、その画素くらいの機種で自分は問題なさそうかを確認して、用途に合ったものを選びたい。
◆〈筆圧感知レベル〉
筆圧感知 8192 (Levels)あれば、十分にアナログの筆圧感が再現可能。
◆〈傾き検知〉
あった方が断然良いらしい。搭載のものをつかっているが、どこに反映されているのか、搭載されてなかったものを使った事がない私には、難しくて分からない。
◆〈レスポンスタイム〉
筆致線の反映時間は、私はなるべく速い方が良かった。その方が、よりアナログに近く違和感がない。ただ、このスピードにどこまで鈍感になれるかは人それぞれ。
◆〈カラー再現(カバー)率〉
まず、アナログ印刷で使うNTSCというものと、デジタル画面上で使うRGBで、カラー色の再現の方法が違う。
ので、そもそもデジタル制作のカラー原稿の色味をアナログ印刷で再現する事自体が、結構難しいらしい。

また、デジタルで、白黒のデジコミ用の原稿を作成する当たっては、ここが最高スペックでなくても、全く問題なかった。
デジコミ用のカラー原稿の色の出方については、
こちらもそもそも、個々に使っているスマホなどのデジタル端末の機種や会社によって、同じ絵(データ)でも色味の出方が違うらしいので、読者さんにどう届くかをこちらで完全に把握する事は難しい。
この場合、液タブで描いて、パソコンからスマホ(パッド)に飛ばして確認してみると、デジコミであれば、大体のスマホ上の出来上がり予想がつく。
実際、私が塗ったものでは、ある程度カバー率が高ければ、スマホ漫画のカラー表紙として見る場合には、不足を感じなかった。
デジタルは、完成後に全体の色味の調整も出来るので、そこに面倒を感じなければ、
また、カラーへのこだわりが目が血走るほど強くなければ、ここが、最高スペックでなくとも問題なさそうだった。(オールカラーのデジコミやアナログ印刷での使用、精緻なイラストについては、門外漢の私には分かりませぬ。追加でレビュー、レポ、公式記事などをご確認下さい。)
◆〈デジタルペン〉
専門店で試し描きしてみた充電式のペンは重心が後ろにあった。重心がほとんど前にある、アナログのペンを三点持ちしていた私には違和感があり、うまく使えなかった。
今、使っている液タブ付属の、重心の傾きのない軽い、スマホやゲームのタッチペンのようなスタイラスペンというペンは、鉛筆や、シャーペン、つけペン軸に近く、私には使いやすかった。沈み込み式のペンなので、少しカチカチと音がする。無音の物を使っている人には少し気になる可能性もある。
◆〈画面サイズ〉
私の使っているものは液晶画面サイズ、21.5インチの横長画面。
漫画ソフトのクリスタで、左右に作画に必要なツールを表示しても、真ん中には原寸のB4版原稿用紙の半分サイズ(横長B5分ほど)を表示、拡大縮小も出来るので、それくらい大きめのサイズがあれば、作画時に手元の違和感はなく、十分だった。
◆〈視差〉
私は大手の中程度のスペックのものには、ペン入れとしては描きにくいくらいの視差を感じた。だが、2020年の初期にすでに発売されていた同W社さんの最高スペックのものには全く視差を感じなかった。
多くの機械で購入後に、ペンの接点(ポインター)の位置調整も出来る。
今、私が使っているARTISUL D22Sは、大手さんの中程度スペックのものより、描きにくさや視差を、私としては感じなかった。ポインターは、初期設定でジャストの位置だった。
だが逆に、「大手のものに慣れていて、この機種に視差や描きにくさを感じる」というレビューもあった。慣れれば気にならないという人もいた。
◆〈ペンと描画面の質感〉
画面の描き心地は、プラスチック的なつるつる画面だと、元、いちアナログ絵描きとしては、絵が描けないほどの違和感があった。
紙のように摩擦が強くなる、貼る画面保護シートなどの質感補完アイテムも別に売っている場合がある。
私が使っている機種はそのシートが初めから着けてあるタイプで、キメの細かめなわら半紙に先の丸い鉛筆でしゃらしゃらと描いている感覚に近い。
◆〈装飾キー〉
私はもともとパソコンに詳しくないので、ショートカットキー自体をまだ使っていない。
液タブは、キー用のボタンが付いていないものを使用しているが、使わなくても私としては十分に描けた。慣れた頃に使えば時短になり、便利なのかも知れない。
マウスや、マウスの代わりに、パソコンにゲームコントローラのようなものを差して使う、左手デバイスという物もあるようなので、タブレットにキーが付いていなくても、あとからショートカットを導入する別のやり方もあるらしい。
今の所、私は別にタッチパネルはなくても良いかなぁと言う気がする。
◆〈画面の硬さ〉
私は柔らかめの方が良かった。
(この点については、下の見出しで詳しく掘ります。)

※液タブ自体がモニター機器のため、多少の発熱がある。これも機種によって違う。詳しくはレビューなどをチェック。
私の使っているものは、熱くてもLED ライトのトレース台くらいで、蛍光灯タイプのトレース台よりはぬるい体感。

液タブ購入のために必要だった、検討すべき項目とそれらについての私の所感は、以上です。

これだけ初めから分かっていたら探すのちょっと楽だったわぁという情報です。

一番良いのは、電気屋さん、専門店など、どこかに試し描きをしに行く事ですが、外国製のものも多く、試し描き自体、行えないものがあるので、探す際は困りました。

上の項目の数値を参考に、いろんな方のレビューやレポ、試し描きと合わせて使っていただくと、ご自分に合ったスペックの液タブが何となく分かるかと存じます。

同じ会社のものでも、機種によって、スペック、数値、の高低で、実際の使用感には、かなりの差がありました。

商品レビューの、「A社の使ってるけど、B社のはこうだった」というご意見の中に、お二人ともA社の液タブを使っているのに、B社の液タブについて真逆のご意見というものがそこそこあり、困りましたが、
もしかすると書かれた方達が使っている液タブが、同じA社製の違うスペックの機種だったのかもしれません。
という事を分かっていると、惑わなかったりしますので、それも書いておきます。

アナログ画材と同じで、液タブについても、個人個人でこだわりポイント、使い方、アナログでやっていた年数などが違うので、合うものも違うようでした。

とにかく、なるべく情報を集めて試し描きせずに、ぶっつけで買ってみるしかないという場合がありますので、私もネット上に液タブ情報を増やしておきたいと思います。というわけで、この先は

試し描きが出来なかったけれど、スペックが高く格安だった、私が使っている〈ARTISUL社さんのD22S〉という液タブの使い心地についてを、出会うまでの経緯と共に、文章でご紹介したいと思います。

こちらもどなたかのお役に立てば、幸いです。

では引き続き、液タブ選びのマニアック!

『今、私が使っている外国製のお得な液タブとの出会い 』についてのお話

ずっと、アナログ作画だった私がデジタル移行しようと思い立った経緯については、私のnoteへの初投稿記事『自由に生きてみる実験』で少し触れました。

ので、その辺は割愛いたしまして、ここからは、どアナログ派だった私が、自分に合う液タブを探して購入した際のお話です。

デジタル移行にあたって、私には板タブは無理そうだったので、液タブにマトを絞り、購入する機体を探す事にしました。

「移行して、今まで私の作品を読んで下さった方をガッカリさせない事」、「アナログからオール電化したストレスがなく描ける事」を目指して、機器を探します。

まず、プロのデジタル原稿用の液タブならココ一択!と以前どこかで拝見した、液タブ大手のW社さんのタブレットを、いくつかお試し出来る専門店に伺いました。

「プロ仕様なら線画と色のスペックが高いのが一番だろうし、みんな使ってるみたいだし~、
W社さんの予算内の液タブで決まりだろうな~
液タブチョイスは楽勝ですな~」

と、安直に考えていた私、ところがどっこい!実際触ってみたら、これが大焦りでした。

「うわぁ~さすが高スペックで有名なW社さん、めっちゃ繊細な線が引けるなぁ超繊細。もう、ほぼ丸ペン!凄いなぁ。綺麗だなぁ。楽しいなぁ。ほとんど、紙に描くのと変わらないし···変わらないけど···」え!?ちょっと待って!

肝心の専用デジタルペンが私には使いにくいぞ?!何故に!?

あ、そっかコレ、アナログのペン類と真逆で、充電式の機械ペンの重心が後ろにあるんだ!
握り持ちだったらイケるかも?でも、私のやってる三点持ちだと、ペンが少し後ろに引かれる感覚があるな。
それに、ハイスペック過ぎて、自分がペンに乗せた力の全てが繊細に線に出るから、引いてる間、ずっと気が張りすぎちゃって私にはキツいぞ。アナログつけペンの、ペンや紙によってバラつきのある大雑把な感じに慣れてるからかな。

アナログでずっと愛用してる重めな金属のシャーペンよりも、充電式だからほんの少し重さがあるし、全部、ほんのちょっとずつの違和感だけど、これで何十枚も原稿描くのは、私には無理じゃないか···?マジか

あと、液タブって結構、ペンとインクの着地点にズレがあるんだな···これが視差ってやつか
モニター表面の透明部分の厚さの分だけ、ずれたように感じるっぽいな
レビューだと、ここの会社さんのは、ほとんど視差を感じないって人も多かったけど、使う側の癖とか姿勢とか描き方とかで、感じ方が違うのかも知れない。
さっき触った、現時点で一番上のスペックの機種だと、視差は全く感じなかったけど、どのみちペンは同じだし···あと、あれ、車が買えるな!うん。予算もBAN!

そして、まずいな、私にはここの会社さんの全機種、描画画面が硬く感じるぞ。
硬いプラスチックのトレース台に、薄い原稿用紙を敷いて柔らかめの0.8芯の太めシャーペンで描いてる感じだ。
つけペン特有の金属の沈み込みの弾性の感触がないから、私の今までの描き方で、漫画特有の、線の強弱をつけるのは不可能。

すごく良い機械だけど、私がやっていたアナログの描き方とはかなり違う。
どちらかと言えば、デジタルネイティブ向けに作られているのか、もしくは私がおろし立てのペンで線が引けないヤカラ問題のせいなのか···?
何にしても、やるなら別の画材として、一から学び直しだ。うわぁあ10年以上分の技術がパァだぁぁあ!

と、外面は無表情で、中身はプチパニックでした。

ヤバい···肝心のプロ御用達液タブが合わないって事は、フルデジ移行、終わったんじゃね?と、完全に打ちのめされて帰途につきました。

デジタル移行する気、満々だったのでリアルに数日間落ち込みました。
ですが、ともかく気を取り直して

「もしかしたら液タブ自体じゃなくて、機種が私にフィットしなかっただけかも知れない」

と考えを改めて、自分にフィットしたポイント、しなかったポイントの検討を行い、他の会社さんの液タブを探してみる事にしました。

「筆圧感知は8192L あれば、アナログの力加減自体は完璧に再現出来る。
画面は、やはり大きめの20インチくらい欲しい。
ペン筆致の反映速度は、速めとされていた数値なら気にならなかった。
印刷や、別端末との色差は実際の原稿で使ってみないと正直分からない。同じような用途で使ってる人のレビューを見るしかないかな。使ってみてダメなら、カラーは手描きという手もあるし。
描画表面の感触は、もう少しツルツルした機械感じゃない方が好みだけど、後から貼るシートもあるから、対応しているやつなら大丈夫か。」

「やはり、問題は画面の硬い感触。ペンの重心。視差。ここが、合うやつじゃないと、お仕事として使うのは無理だな。」

と整理して、まず、欲しい最低限のスペックを設定し、それが当てはまる機種を探しました。

すると、少しの妥協点を含めて、いくつかの外国製のタブレットが候補として上がりました。
さらに、そこからストアレビューなどを漁って、候補を絞ってみる事にしました。

しかーし、ここでさらなる問題が!

絞り込んだ機種達のレビューの中には、画面硬い、いや柔らかすぎる。視差感じる、いや感じない。など良い悪いが入りまじり、ぶっちゃけどれが自分にとって本当か、全く分かりませんでした。

初の液タブの上に、あまりパソコンにも詳しくないので、「え、やだコレ決まらない···パッと買ってサッと試してみてポイッを繰り返せるほど、お安い買い物じゃないし···
やっぱり、もう1台くらい別機種を触らないと分かんないや」

という事で、もう1台、少し足を伸ばせば向かえる所に試し描き機体がある、今、私が使用しているのとはまた別の、大手外国製の液タブを当たってみる事にしました。
ですが、折しも時期は2020年の春、コロたんが活発な活動を始めた頃で、今度は試し描きにも行けなくなりました。
どん詰まりでした。

「困った···今年中には、デジタル化して新作を描きたい。資金を貯めて、何台か買い換えて、とやっている時間の余裕はないぞ。
でも、外に出て電気屋さんを探し回る事も出来ないし。
練習する時間を考えると、あとひと月ふた月くらいの間に、試し描きをせず何とかして、自分にジャストフィットな液タブを手に入れるしかない!」

そして、困り果てた私が最後に頼ったのは

「勘」です。

え?じゃなくて、「勘」です。人間は動物です。五感と知能が駄目でも、まだ勘があります。ヤバい話になってきましたが続けます。

丁度、探すのを少し諦めはじめた時に、ポッと人から「ARTISULって所もあるみたいだよ」と言われました。「ARTISULか···候補として上げていた液タブの一つを作ってる所だ、大手に比べてシェアが小さい印象の企業だけど、スペックは、ほぼ一緒で、ここが一番数値が高い部分もある、でも色カバー率は少し低い。」

よーし、これも縁だ。取り敢えずもう一度、この液タブのレビューと商品紹介を詳しく見てみよう。

あれ?私が画面が硬くて視差を感じると思ったハイスペック機を使っていたっぽい人達が、逆に、これは画面が柔らかいってレビューや、こっちには視差を感じるってレビューを上げてるな。
ペンは、非充電式で軽いのが売り。
おおお!しかも、別購入しようと思っていた紙に近い描き心地シートが初めから付いてる!
でも、台湾製か、どうなんだろう。アジア製のって、会社ごとでも品質にバラつきがあるけど、台湾製の電子機器って私は使った事ないな。正直、未知過ぎて不安ではある。

でも、最近まで電子機器を扱う所に勤めてた人が、他のアジア製と違って台湾製の細かい部品は、梱包がしっかりされていて、時々ネジ頭が爆発してたりしないし、品質が均一だったって言ってたな。確か台湾って、IT系に強いんだよなぁ

何だかここでイケる気がしてきた。
でも、やっぱり試し描き出来ないと決め手に欠けるなウ~ム。
と、そこまで考えて商品画像を見ていた私はもう一つ、「ある事」に気付きました。

(余談ですが、私は最近、美容室を外観で探す事にしています。
すみずみまで外観が好きだった個人経営の美容室に、飛び込みで入った時に、人生で初めて緊張しない美容師さんに出会ったからです。
外側が自分の好みにピッタリ合う時、その外側の装飾を選んだ人が、中も作っているし、そこで働いてるんだなぁ~と、しみじみ感じました。
その美容室は、内装も、とても素敵でした。)

で、液タブの話ですが結局、私が最後にARTISUL社さんの「D22S」という液タブを購入した決め手は、その外観を見た時の第一印象でした。

「あ、これ一番最初に、箱の絵が可愛いな、一番好きって思ったやつだわ」 

その瞬間、「あ、コレで良いんだ。多分コレが私の探していたやつだわ。」と直感的に思いました。そうです。最後は勘でした。

そして、ARTISUL社さんの日本版公式Twitterアカウントを調べてみると、定期的にかなりお得な割引セールをされている事が分かりました。

「セールを利用すると、ほぼ同スペックで最高クラスの液タブの10分の1の値段で買えるな。この金額なら失敗してもダメージが少ない。
いつ目当て機種のセールが来るか分からないけど、これくらいの値段なら、あと少しで液タブ購入分の資金も貯まるし、よし!」

資金が貯まる頃までにセールが開催されたら、
私にこれを買えという天からのお導きじゃあ!!

と、謎の決意をして公式Twitterをストークする事、1週間。
お目当ての機種のセール告知が出ました。
支払いは、ピッタリ購入資金が貯まる頃でした。
こりゃもう天のお導きですな。

そうして、恐る恐る迎えた液タブは、日本や、アメリカ製電子機器のかっちり清潔な機械的な梱包というよりは、綺麗に手作業で1つ1つ丁寧に梱包された印象の箱詰めをされていました。
ああ~何かもう好きこの感じ。するするした箱の手触りと色味も好き。手袋は何故かジャストサーイズ!

画面の柔らかさと少し沈み込みのあるペンの感触は、わたしが使っていた丸ペンの弾性そっくりでした。(前回の記事で描いた少し特殊な描き方です。)
デジタルペンは軽く、しっとりとした手触りで、重心は真ん中より少し前寄り、太いタイプのシャーペンに似ていて、理想的でした。
視差は、ポインターの初期設定が私にとっては最適で、問題なく絵が描けました。カラーカバー率以外の残りのスペックは目的地オールクリアでした。
実際使ってみると、カバー率は白黒の漫画の原稿を描く上では気にならなかったです。画面上の色味は同じ絵をスマホで見るよりは、少し落ち着いたマッドな色合いかな~という感触でした。
デジタルなので、気に入らなければ、色味の調整も可能です。

とにかく、液タブの中でもかなりのお買得、からの、ハイスペックでした。

うわぁぁやったぁ!これで移行出来る!!天よ!有難う!!「ARTISULって所もあるみたいだよ」の人も有難う!!

画像1

(新作『神垣は緋』より)

こうして、どうにかこうにか、今までアナログで描いていた感触に近い液タブを入手する事が出来、アナログからの劣化もなく、新作の線画が出来ました。

(私の最後のアナログの線画は、前回の第1回の漫画制作マニアック記事に貼り付けてあります。よろしければご確認下さい。)

このように私は、液タブ探しに難渋し、かなり時間が取られました。
せっかく調べた色々な事も、これきり私は使わないので、勿体なく思い、こちらに記録しておくことにしました。
アナログでゴリゴリに描いていた人のデジタル移行レポートも、ARTISULさんの液タブについては、見つけられなかったので、漫画を描くのがお好きな誰かのお役に立てばと思い残しておきます。

最後に、この機種を入手したい方がいても、やはり画面の感触などが分からないと買いにくいと思うので、いくつか役立てばいいなという情報を載せておきます。

〈 ARTISUL D22S 〉の画面の柔らかさとペンの描き心地は個人的には、日本の(株)日東さんの、「ペーパーレスメモパッド」という電池式の電子メモパッドに近かったように思います。
これ自体は、小さいものなら比較的、安価に手に入り、ちょっとしたメモや落書きなどに便利です。
また、ペンと画面の触れる感触や描き味は、金属バリが完全に磨耗し、用紙に引っ掛からなくなったつけペンで線を引く感覚に近いです。
商品レビューで、私の購入した液タブ〈 ARTISUL D22S 〉を使いにくいとされていた方は、もともと他の会社さんの高スペックな液タブを使われていた方が多く、液タブ初購入の方は、問題なく使えたという方が多かったように思います。

多分、今回の内容と、前回のペンの使い方をご覧頂いて、私と描き方や環境、用途の近い方であれば、この機種がフィットする可能性が高いかと思います。

ただ、1つだけ確かな事は、最後に頼れるのは、ご自分の勘です。あとは、天の導き 笑

今回のマニアックは以上です。お付き合い頂きまして有難うございました。

また何か、漫画についてお伝えしたいニッチでマニアックな事が出来ましたら記事に致します。
それでは!

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晏藝嘉三《アキ ヨシミ》
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