16.速杉ホクト_確執

16.速杉ホクト_確執

研究所絡みのホクトのトラウマとして、やはり八代所長は外せない。この人は死なずに地底で生きていたのである。行方知れずになって以来、残ったメンバーたちにずっと腑に落ちない何かを与え続けた挙句の敵としての登場である。そりゃあ格段のショックだろう。


しかも開発者本人である。ホクトたちは開発者と主任が去った後の訳の分からないロボット兵器を逡巡しながらも血の滲むような努力で作り上げたのである。それが。

まさかの敵ですか八代さん嘘でしょう。俺たちは何だったんですか。何の為にやってきたんですか。少なくとも理由だけは。理由だけはどうか教えてください。それがホクトたちが対話にこだわった理由だろう。そのまま仮に敵として倒したとてわだかまりは残る。もはやオトシマエに近い何かをつけなくては自分の存在意義に関わる。そんな思いだったろう。だからやはりホクトたちは地底に降りてゆかなくてはならなかったのだ。命の危険をおかしてまでも。


少なからず入所当時は八代さんは凄い人だと思っていたに違いないのだ。ある意味親に裏切られたというのにも近い。こんな思いを抱えて地底へ赴く様は目が離せない。