38.シンカリオン_第58話
38.シンカリオン_第58話
第58話。大人たちの過去の話。これを私は冬の感謝祭会場で観たのだった。
あの日有楽町はかなりの寒さで、午後から雪が降り始めた。経路の関係で東京駅から歩いた。ガード下をくぐりヒューリックホールへ。
ホールのある階の窓からは東京駅への線路が見えた。しんしんと降る雪のなか、数台の新幹線がこちらを向いている。賑やかな会場なのに不思議と静寂も感じた。時間が止まったような感じだ。
58話の上映が始まる。過去の話だ。私が渇望していた大人たちの過去の話だ。若い時代の大人たちが希望と熱意に燃えて夢を語る。いつか見たような懐かしい光景。だが物語は暗転し、大切な同志たちのの失踪と死。血を吐くような悲痛な叫び。
ホクトは500で出撃する。捕縛フィールド接近の直前に一瞬我を忘れている。運転士としてあってはならない心ここに在らずの状態になるほどあの思い出は彼に影を落としている。
そこに失踪した本人が現れる。よもやの敵として。悪夢のようだろうが、観ている私たちも不可思議な夢の中にいるようだった。
まるで集団幻覚のような雪の夜。今でもどこか現実と思えずに私たちは思い出を辿っている。正直まだ整理のつかないまま。