14.速杉ホクト_大人たちの過去(2)

14.速杉ホクト_大人たちの過去(2)

超進化研究所という謎の組織にスカウトされたホクトにとって清洲チクマはおそらくメンターの役割を担っている。正確な意味とは少し違うかも知れないが、要は生き方の手本として見ていた部分があるのではないか。バリキャリの科学者でありつつ家族に内密の仕事を抱えている先輩。仕事はもとより、妻子とどう向き合ってゆけば良いのか、家のローンはどう組むのが良いのか、貯蓄の運用方法、幼い息子への誕生日プレゼント。たぶん全部質問してる。

転職したあたりでホクトは30代に入ったくらいではないかと思われるが、そのくらいの男性は自分より6~10歳程度年上の実績ある先輩って憧れるし話を聴きたくなるものではないだろうか。「あの、これからこの業界、どうなっていくと思います?」みたいな。実際にリアルでそういったシーンはよく見掛けた。

だからきっと、そんな感じだったと思うのだ。出水のような気心知れた同期とはまた違う、精神的な拠り所として、チクマの存在は大きかった筈だ。


ここでまた引っ張り出すけど、「桃園の誓い」なのである。生まれた日は違えども、死ぬ時は同じであらんことを。それなのに。


明日に続きます。