困っている人がいたら、社会の側から、助けにいこう
今でも、忘れられないニュース映像があります。約7年前の、千葉県銚子市で起こった、悲しすぎる事件。
当時親子が住んでいた県営住宅の居間で、母親が中学2年生になる娘を絞殺。凶器は、その4日前に行われたばかりの中学校の運動会で、娘が使っていた赤いハチマキでした。県の執行官が踏み込んだ時、二人がいた居間のテレビには、娘さんが映る運動会の映像が流れていたといいます。
この親子は、大きな借金を抱え、家賃をずっと滞納していました。犯行の日は、行政による部屋の明け渡しの強制執行が行われる日でした。行くあてのない親子、母親は追い詰められ、最悪の選択をしてしまったのです。
私はずっと、日本国民の命と平和な暮らしを守るべく、外交安保に注力してきたのに、肝心の足元で尊い命が、全然、守れていない。そのことに、愕然としました。
当時まだこの分野に明るくなかった私は、資料を取り寄せ、こんなことに至ってしまった原因を手探りで、徹底的に調べまくりました。そこでひとつ、衝撃的な事実を知ります。
母親は、一度、市役所に相談に行っていたのです。しかし、そこで生活保護など必要な説明を受けていませんでした。なぜなら、聞かれなかったからです。
生活保護を受けることは国民の権利です。申請されて初めて対応するというやり方は、人員や予算不足による行政側の都合にすぎません。この時は、本当に悔しかった。当日の面接記録を見れば、行政は、明らかに母親が苦境に陥っていたことはわかっていたんです。でも、何もしなかった。
一方の母親は、生活保護を受けるのに必要な条件や手続きを知りません。だから尋ねようもない。結果、本当に支援が必要な人に、支援が届かない。こんなバカなことがあるのか、いったい行政は、政治は、なんのためにあるんだと、怒りが込み上げてきました。利用を制限する水際作戦など到底受け入れることはできません。でも、はたと我に返ってみると、自分は国会議員として、いったい何をしているんだろう、と思いました。やれることがあるはずだ、と。
この時から、私の注力する政策分野に、外交安保と、親子の福祉が加わります。
それから、早速、動きました。2016年には、経済的に苦しい家庭の子どもたちを支援するため、与野党の国会議員有志約60人で超党派「子どもの貧困対策推進議員連盟」を結成します。私は呼び掛け人として、幹事長に就任しました。給付型奨学金の創設や、生活保護世帯の子どもの大学進学への道を開くなど、様々な施策や制度改正を実現させます。
でも、ずっと引っかかっている思いがありました。行政の申請主義です。
色々、支援のメニューを整えても、あの時の親子のように、その支援は本当に必要な人に届かないと、意味がありません。この壁をどう乗り越えたらいいか、考えあぐねていました。
この壁は、コロナ禍でますます大きなものとなってしまいます。例えば、母子家庭です。母子家庭(世帯)の相対的貧困率(可処分所得が全体の中央値の半分に満たない人の割合)は51.4%、半分を超えています。その多くはパートや派遣で働いているので、コロナ禍で仕事を減らされ、それが収入減に直結しています。
これまでなら「子ども食堂」などの場を通じてご飯を食べれていた場合でも、新型コロナの影響で閉鎖に追い込まれてしまいました。栄養不足だけでなく、人との交流も絶たれ、家庭内のリスクが急激に高まっています。
彼、彼女たちからのSOSを待つまでもなく、社会の側から、助けに行くことはできないのか……、その方法を模索していました。
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そんな時に知ったのが、認定NPO法人フローレンスが展開していた「こども宅食」です。これだ、と思いました。「こども宅食」は、社会の側から出張って食料をお届けする(=アウトリーチ型)事業です。これなら、「密」を避けて必要な食料をお届けできるだけでなく、この接点をきっかけにして、親子とコミュニケーションをとり、必要と判断した場合は適切な支援に繋ぐこともできます。
困っている人が来るのを待つのではなく、むしろこちらから届けに行く。この仕組み、というより、姿勢が行政に求められていると強く感じました。
当時、この取組みは、日本中の行政、民間団体に広がりつつありました。令和2年度の第二次補正予算では、「支援対象児童等見守り強化事業」にこども宅食も含まれていたのです。
しかし、これはあくまで「補正」予算です。つまり、この年だけの単発の予算でした。次の年度も同じように予算がもらえるかはわかりません。与党が編成する毎年の本予算に入れなければなりません。貧困に苦しむ親子には、確実に必要なのに……!
ここでやらずに、いつやるのか。私は、動きました。稲田朋美議員、木村弥生議員らと共に発起人となり「こども宅食推進議員連盟」を設立します。次年度の予算にも「こども宅食事業」を盛り込むこと、そして、恒久的な制度化を目的とするものです!
2020年8月27日に行われれた設立総会の様子
この議員連盟は、早速、大きな成果を出すことができました!
令和3年度の予算にこども宅食は組み込まれ、しかも、こども宅食団体への政府備蓄米の無償提供まで実現出来たのです!(紙幅の都合でサラッとしか書けませんが、これは、多くの親子を救うことにつながる素晴らしい成果だと思っています!詳しくは下記のリンクをご参照ください!)
まだまだこれからとはいえ、これで多くの困窮家庭に栄養価の高いご飯や、子どもが喜ぶおやつ、そして、社会との接点を届けるチャンスができたのかと思うと、政治家になって、本当によかった、としみじみ思いました。
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こういった「社会の側から困っている人を助けにいこう!」という政策を話すと、「長島さん、そりゃ、甘やかしすぎだよ」という反応をいただくこともあります。
でも、私は違うと思います。というより、最近、私の伝え方がよくなかったと思うようになりました。
というのも、世の中には「困っている人」がいるわけじゃない。「困っている時」が誰にでもあるだけ。明日は、私が困っているかもしないし、誰だって、困る可能性があるのです。
だったら、いつ自分が困ってもいいように、今困っている人を助ける仕組みを作った方が、お得ではないでしょうか。