エグザイルが好きな美容師さんと、どう接したらいいのか
僕は過去10年間、転勤を繰り返してきたので、馴染みの美容室や床屋がなかった。
転居先で新たに美容室や床屋を探すので、新しい美容師さんと知り合い、しっくりきたらそのまま通うつもりにするのだが、しっくりこなかったら別の店へ。
でもなかなか最初からしっくりくることはなく、適当にいろんな店に行き、まぁ髪なんか切れればどうでもいいやという期間が続く。いわゆる初回荒らし。この時期を経て、やっとこの店ならしっくりきたかなと思って一年弱くらい通っていたら、結局はまた転居の時期になってしまい…。そんなことばかりだった。
だから、接してきた美容師さんの数はそこそこ多い。そのなかでも先日困ったのは、「エグザイルグループが好き」という話をしてきた美容師さんだ。
土下座されても入りたくない
何が困るかというと、僕は、全くエグザイルとかに興味がないし、ダサいカルチャーだなぁと思っているということ。というか、別に積極的嫌悪というレベルにもない。視界に入れずに生きている。
しかし、それくらいのことはなんとなくムードでわかるはずなのに、わざわざエグザイルが好きだ、と僕に言ってくる美容師さん。わざわざ言うということは、押しが強い性格なのだ。思い込みが強い、とも言う。
案の定、カットやトリートメント、ストレートパーマの種類について力説が始まった。そして、僕が予約したメニューから内容を大幅に変えたほうがいい、と勧めてきた。しかも、値段が高くなるわけではないようだ。値段が高くなるならただの営業トークだが、そういう下心すらないということ。
これは、非常に困った。この美容師さんはエグザイルを最上の男性像という位置に置いて話している、ということは、僕をエグザイル化しようとしているということだから。僕は、土下座されてもエグザイルには入りたくないのに。しかし美容師さんの価値観に従えば、おそらくエグザイル…少なくともそれに連なるカルチャーの人間っぽい髪型にされてしまうのだ。美容師さんは一銭の得にもならないのにこんなに力説するのだから、よっぽど想いは強い。
どうでもいいけど、嫌なもの
いやまぁ髪型なんてどうでもいいんだけど、嫌な種類はある、にはある。「どうでもいい」けど「それはヤダ」、ワガママな感じで情けないが事実だ。夕飯の献立だとすると、どうしてもカレーが食べたいとかハンバーグ食べたいとか強い意志があるわけではないから「どうでもいい」んだけど、ちなみに豆ごはんとかはフツーに嫌いだからやめてほしい…みたいな。
エグザイルというのはその嫌な種類になっちゃうわけだから困る。しかし、なぜ困るかと言うと、相手が先にエグザイルマインドを開示した上で髪型を提案していること。この提案を拒否するのは、エグザイルの否定。そう取られかねない。
別にエグザイルを積極的に否定したいわけではないが、嫌いだからやめてほしいのは確か。もちろん「エグザイルが嫌いだからやめてくれ」と言うわけではないが、「髪をすきましょう」とか「パーマは自然なボリュームダウンにしましょう」とか「毛先は減らしましょう」とか言われて、よくわからないがその先にはエグザイルがあるし、またそのエグザイル的価値観に由来しこれらの提案になっているはず。
だから「髪をあまりすかないでほしい」「ぱっつんがいい」「いや仕上げはワックスやジェルじゃなくてオイルくらいでいいです」とか言った場合、美容師さんからしたら「エグザイルを否定された」というか、「エグザイルが大好きな自分の価値観の系統を、エグザイルが大好きだと伝えることで示しているのに、それを否定された。こいつを許すつもりはない」となりかねない。美容師さんはエグザイルのために都内から地方都市まで遠征するくらいの入れ込みかた。フツーはドン引きするそんなダサすぎる事実をわざわざ僕に伝えてるわけだから尚更。だいたい、抽選でドームコンサート行く層自体、僕は苦手なのに。
いやこちらだってわざわざ他人の価値観を否定したくない。というか踏み込むつもりなんてない。だからこそ躊躇してしまい、本当にやりたい髪型のムードが伝えられなくなる。いや本当にやりたい髪型とか特になくて、もっとも嫌な種類の雰囲気漂う髪型にはしないでほしい、だけなんだけど。もうはっきり言うと、美容師さんは頼むから、エグザイルの話をしないでほしい。
チェンジやマッチングシステム作れ
そもそも初めて会った美容師さんがエグザイルの話をしだした時点でチェンジできるとか、そういうシステムがほしかった。現実には、僕は角を立てたくないので美容師さんの言いなりになってエグザイルを極力尊重しておいたけど。こちらも意地があるから施術途中に「もう少し、あの、えっと前髪をもう少しアレで」とか口を挟んだが、そのたびにチッと舌打ちされたような感じがして、気まずい雰囲気が漂った。結果的にもしかしたらエグザイル的な成分を含んだおかげでいい感じにかっこよくなったのかもしれないし、別に仕上がりに不満はないが、とにかく望んでいないことをされた感覚が消えない。あの美容師さんは、僕のむこう数カ月の人生にエグザイルをぶっこんできた、という胸のつっかえがしばらく残る。もしこれで女性にモテたとしても、僕がモテたのではなくエグザイルがモテたのでは?という疑念が消えない。
というか美容室がアマゾンや各種サブスクのサービスと連携し、好きな音楽と映画や書籍をもとに、美容師さんとユーザーをマッチングできるようにしたらいいのではないか。もしくはエグザイルみたいに、このカルチャー系はNGです、と登録するとか。
いくらプロでも、趣味の合わない人間に施術されるのはほんと苦痛。ガチャみたいにたまたま趣味合う人間を探すために初回荒らしを続けたくもない。かといって自ら「カリスマ」とか言ってる人もこわい。だから自動でマッチングやサジェストをしてほしい。
別に施術中に趣味の話をしたいわけでもない。普通に施術してくれたらいい。だから美容師さんの接客の手間を増やせという意味ではない。エグザイルとか言ってる人間に身だしなみを整えられてしまうという割と深刻な人権問題を回避したいという願い。僕に年間2000万くらいくれるなら、このビジネスアイデア誰でも使っていいよ。
ホットペッパービューティーの担当者さんとか、連絡待ってます。
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