恐竜になりたい。
恐竜になりたい。
自分が、一番最初に思いついた夢だ。
幼稚園のときに、唐突に僕が母に言ったらしい。
「大きくなったら、恐竜になりたい」と。
母は、笑っていたが、一つも否定することなく、その夢を褒めてくれた。
そのときから、ずっと何かの夢を追っている気がする。
小学校、中学、高校と時間が経つにつれて、たくさんの夢が思いついた。
詳しいことは割愛するが、大人になるにつれて、より芸術的なものに関わる夢になっていった。
そして、気づけばそういったことを勉強する学校に通っている。
堅実でより幸せになれるチャンスは山ほどあった気がする。
それでも、捨てきれない憧れを盾にして、今まで夢を追ってきた。
もしかしたら、嫌なことからただ逃げていたのかもしれない。
そうだとしても、多くの道を好き嫌いしながら、どうにかここまで信じてやってきた。
だが、時間が経ち、年を取るたびに思ってしまう。
正しかったのか、やり方はあっていたのだろうか、こうしておくべきだったんじゃないかと、日に日に後悔が押し寄せる。
同年代の凄まじい人ばかりに目が行き、焦りと不安ばかりが募っていく。
そして、気づかないうちに、正しさばかりを追い求めてしまっていた。
もう間違わないようにと。
でも、ふと思ったことがある。
上手な進み方を探し出すあまり、結局何も進めなくなっていないか。
いつも最短距離で成果を求めていく姿はおそらく正しいのだと思う。
でも、近道を選ぶことがいつも正しいとは思わない。
進み方だって、好き嫌いしたっていいんじゃないか。
間違えて、遠回りして、泣いたり、笑ったりして、そこで得るもの、出会う人は、きっと人生を素晴らしくしてくれるはずだ。
憧れた人のようには、なれないのかもしれない。
不安と焦りには勝てないのかもしれない。
そうだとしても、結果ばかり追い求めてしまう前にまず、目の前を楽しめないだろうか。
たくさん好き嫌いして、間違えて、でも、ここまで進んできたことを誇って生きていけないだろうか。
そういう生き方を、許せる自分に僕はなりたい。