知らない子供

第2回目のりのイベ、お題は『ハロハロハロウィン』って事なんだけど、何書こうかなぁって考えた。で、怖い話を書いてみようかなって思った。
僕には霊感の類は全く無い。それは自信持って言える。霊感を感じた事とか一切ないしね。
でも、過去に二回だけ、あれ?って思うものを見て感じた事がある。1つはそんなに大した内容じゃないから、今回はもう1つの僕が実際に体験した話を書いてみるよ。

僕の大学時代だからかなり過去の事だけど、僕は大学へ進学するにあたって実家を離れて一人暮らしをする事になった。
その為に住まいを探したんだけど、初めての一人暮らしという事もあって、食事付きの下宿に住む事に決めた。その下宿には同じ大学へ進学した友達もいたし、近所にはアパート暮らしを選択した友達も住んでたから、不安が無かったからね。
下宿は木造の二階建てで、部屋だけ個別になっていた。食事は食堂で用意されたものを食べ、トイレや風呂も共同だった。
僕の部屋は二階の突き当たりで、横には非常階段があって、通常の玄関とは別にそこからも出入りが出来た。二階フロアの概略を書いてみたから、参考にしてみてね。

二階の概略図

下宿の管理者は気の強い老婆だからだったけど、昼間からお経を唱えたり信心深いところもあって、聞こえてくるお経が少し嫌だったけど、初めて実家を出て暮らし始めた事の新鮮さで、それなりに楽しい日々を過ごしていた。

そんな生活にもある日の夜の事だった。
風呂から出て気分の良かった僕は、概略図の②の方向から鼻歌を歌いながら自室へ通常向かって歩いていた。人の気配も無く誰もいなかったから、少し大きな声で鼻歌を歌っていたその時、①の方向から来た人と唐突にすれ違った。
誰もいないと思っていた僕は、鼻歌を聞かれた事の恥ずかしさでめちゃくちゃ動揺していた。
でも、すれ違ったその人は表情一つ変えず、そのまま廊下の奥へ歩いて行った。
そして「あー、恥ずかしい!」と思いながら部屋に戻って落ち着いた時、初めて違和感を感じた。
「さっきのすれ違った人、なんか変だな?」
すれ違ったその人物は、背丈が僕の肩よりかなり低かった。僕の身長が170cmちょうどだから、子供くらいの身長だ。
見た目も変だった。髪形は黒い髪のおかっぱで、何かリュックみたいなものを背負っていた。
園児が被る様な黄色い帽子を被っていた気もする。明らかに大学生には見えない。そう、保育園児くらいの子供にしか見えなかった。それも、一昔前の子供の様な。その顔は無表情で、顔のパーツもよく思い返せない。ただ、動揺する僕の事など見向きもせず、真正面を向いたまま歩いていった。その気配が全く感じられず、すれ違うまで僕は全くその存在に気付けなかったくらいだった。

「あれは誰だ?」
全く知らない子供。特に怖いとは感じなかったけれど、僕は急にその人の正体をはっきりさせたくなった。
まず、僕の部屋の近くにある非常階段を確認した。特に脱いだ靴も無く、ここから入って来たのではないらしい。ならばと思い、階段から一階に降りて共同の玄関を確認したけど、それらしき靴はやはり無かった。更に、他の下宿人の部屋全てに来客が無いかを訊いて回ったけれど、そんな訪問者の事は誰も知らないとの返答だった。
結局、その謎の子供の痕跡を見つける事は出来ず、スッキリしないまま探索を断念した。
あの子供はなんだったんだろう?下宿管理者のお婆さんがお経とか唱えたりするから、霊的な何かを呼んだのか?それとも僕の見た幻だったのか?
それは今でも謎のままだ…。

僕は大学生2年生になり、下宿暮らしが物足りなくなった事もあり、その下宿を出てアパートを借りた。
その後で聞いた話だけれど、その後あの下宿に住んでいた一年下の下宿人が、突然血を吐いて倒れ、そのまま亡くなったとの事だった。
更に、下宿管理者のお婆さんの息子が事故か何かで大怪我を負ったという出来事もあった。
それら一連の出来事と、僕が遭遇した知らない子供とに因果関係があるかどうかは分からない。
でももしかすると、あの下宿自体に何か禍々しいものが巣食っていたのかも知れないって、今は思ったりする。

場所は詳しく言えないけれど、もう今はその下宿も取り壊されてみる影もない。
全ての怪異も、やがては僕の記憶の彼方に葬られていくんだろう…。

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