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不確かな福富太郎の眼展-回顧録

3年前の旅メモを発掘して蘇った、当時の記憶を辿る第三弾。不確かすぎて何故書いているのか訳がわからないが、とにかく書きたいので書いている。

前回のメトロポリタン美術館展の投稿はこちら。

もう既にこのまま帰ってもいいかなと思うくらい満たされていたのは事実だ。
だがせっかくなので一期一会なアートを楽しもうと思い軽い気持ちであべのハルカスへ向かった。

大阪市立美術館と打って変わって、公開初日にもかかわらずこちらはガラガラ。福富太郎の眼、展。これが思いの外良すぎて滞在時間3時間、、、。コレクターの展示って面白くて、ツボがはまれば全てが好み。手に入れた経緯がわかったり、福富さんが一目ぼれした作品、無名の画家の最高の絵、色々あってとにかく面白い。

旅メモより

本当にガラガラだった。

あべのハルカス美術館

そもそもあべのハルカスに美術館があるということを、恥ずかしながら知らなかった。
観光がてら行ったと言っても過言ではなかった。しかし本当に良い意味で期待を裏切られた。

コレクターの展示で有名なところでいうと、ジョー・プライス氏だ。
私も昔、九州国立博物館の【プライスコレクション『若冲と江戸絵画』展】で伊藤若冲に出会った多くの人のうちの一人だ。

まだ小さかった私は、伊藤若冲の絵画に「すごい」「なんて緻密で雄大で華やかなんだ」と思った。
母からアメリカ人コレクターの展示なんだよ、と聞いて「逆輸入ってゆうやつ?」「芸術というのは誰かに見つけられてその価値が見出されるのか」と思った。 

今回の展示も正に福富太郎氏によって見つけられ、多くの人の目に留まっている。

美人画が多くて、これから心中するカップルだったり、処刑される前に最後のお願いで桜を見る花魁だったり、嫉妬の顔・憂い顔・大人びた子供・どれも表情に吸い込まれる。満足感が高い展示会だった。

旅メモより

福富太郎氏のコレクションは妖艶な女性が描かれたものが多かった。
一つ一つの表情に見惚れてしまった。

1番の目玉として展示されていたのは北野恒富の道行。

北野恒富【道行】

これから心中する男女が描かれている屏風だ。

混ざることのない目線、絶望した表情とは裏腹に熱を帯びた指先、烏の描かれ方や余白の部分にもなんだかウットリしてしまう。
アートの楽しみ方なんて自己流だが、とにかくこの絵の前に椅子を持ってきてお酒が飲みたいくらいには見入ってしまった。


松本華羊【殉教(伴天連お春)】

恍惚とした表情で桜を見つめる女性。その手首は鎖に繋がれている。
諸説あるようだが展示には、恋人に処刑される直前の遊女と解説がされていた。
打ち首が決まり、最期のお願いとして桜が咲いたら桜の木の下で死にたい、と願ったらしい。
死をイメージさせる桜を見つめるこの女性が何を思っているのか知りたくて、この主題と言われている歌舞伎『切支丹屋敷』を見なくてはいけないなと思っているところである。


鏑木清方【薄雪】

遊女を身請けするために他人のお金に手を付けてしまった男と二人、追手から逃れようとしているところだ。
この二人の結末は言わずもがなであるが、このタイトルも素敵だなと思う。

日本画の素晴らしいところは女性の表情にあると思う。

侘び寂びを説明するのは難しいが、日本画を見せるというのが1番の手である。

ひとつひとつにウットリして、図録を買えてホクホクして、ふと思い出して時計を見る。友人との約束の時間まであと少しだった。
展示数は少なかったが3周もしたせいで3時間滞在していた。

こんな素敵な出会いがあるのだから、ひとり旅はやめられない。

もっとたくさん書き連ねたい絵はあるが、私が解説したところでと思い始めたのでこの辺りでやめておく。(とても今更だ)

ということでひとり旅の回顧録でした。

ではでは。

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