
【一週一筆】その2 虎に なんとやら
今年の4月から半年間、私が毎日息を吸うための気力になっていたドラマがある。
日本ではじめて法の世界へ進んだといわれる女性が、その“地獄”の道を歩む姿を描いた物語。
誰かが“地獄”を進んだから今の世の中があるんだな……とも思うし、
誰かが“地獄”を進んでもなお、変わらないものもあるな……とも思った。
私の中の得体のしれない不安や怒りを一緒に考えてくれるドラマでもあり、私のモヤモヤを晴らしてくれるドラマでもあり、私に新たな気づきをたくさん与えてくれるドラマだった。
そして「男尊女卑に苦しむ女性」の他に、「“男らしさ”という鎖に縛られて苦しむ男性」が描かれていたのも、私がこのドラマを好きな理由の一つだ。
※ここからは、ちょっくらフォトギャラリーとなります。
ドラマ放送開始以前や以後に、ゆかりのある場所へ行けていたもので。





そしてこのドラマは、最後の最後まで私の胸をぐしゃりと鷲掴みにして離さなかった。
以下、ネタバレをご容赦ください。
最終回の、ほぼラストのシーン。
“地獄”の世界で、主人公の寅子と何度もぶつかりながら、ずっとそば見守ってきた桂場さん。
彼と寅子との会話を、きっと私は、生涯忘れることはない。
「君のようなご婦人が特別だった時代は、もう終わったんだな」と桂場さんに言われた寅子が、お決まりの「はて?」の後にひとこと。
「いつだって私のような女はごまんといますよ。ただ時代がそれを許さず、特別にしただけです」
このセリフを聞いたとき、部屋で一人ぼろぼろと涙をこぼしてしまった。
女性がこれまで足を踏み入れなかった場所へ飛び込んだり、世の中の理不尽と向き合い続けたり。
このラストシーンには、寅子と同じように、“地獄”で光を見出そうと戦ってきた女性たちがたくさん居合わせていた。
世間が許さなかっただけ。“いないこと”にしていただけ。こんな女性たちは、これまでも確実にいたはず。
「よく言ってくれた!」と言えば、そうだ。
でも、そんな偉そうなことを言えるほど、私は寅子のように強くも賢くもない、挑んでもいない。
ただ、私を肯定してもらえたような気分になったんだ。
「虎に翼」とは、「鬼に金棒」のような意味で、もともと強いものや優秀なものが、さらに力や勢いを持つこと。
私は決して、虎ではない。決して、強い女ではない。
でも、気の強い女ではある。
自分なりの考えがあって、曲げられない正義もあって。この世界に異を唱えて叫んでやりたいことがたくさんある。というか、たまに叫ぶ。
私をかわいくないと思う人たちは、確実にたくさんいる。それをひしひしと感じながら生きている。
どうしてもっと柔軟に生きられないのか、社会になじんで生きられないのか、どうして笑ってやり過ごすことができないのか。
曲げられない自分が嫌になって、毎晩のように、世界だけではなくシャワーに向かっても叫び、シャワーに打たれながらうなだれる。
ーーそんな自分は、変じゃないんだと、それでいいんだと。そう言ってもらえるようにも、感じた。
ああ、またひとつ、
「このドラマに出会えて、本当に良かった」と思える理由ができてしまった。
それから。
私は寅子のような虎にはなれない。
けれど、弱い私でも、そんな私の翼になってくれる人は、まわりにたくさんいるな、とも思った。大切にしなければね。
気づかせてくれてありがとう。
(ここまで言葉を選んできたつもりだけど、誰かにとって野暮な言葉になっていたらごめんなさい)
もうこれを超える朝ドラは出てこない……今後もう、朝ドラ観られん………
いやごめんなさい、普通に、毎日楽しみに観てます。
※見出し画像のイラストはフリー素材画像です。
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