企業研究者:得意なことをいくつか持つととんでもない強みになる①
昨日、テレワーク上で仕事納めを迎えました。お蔭様で、研究所時代のプロジェクトに対して全社研究開発部門で最優秀賞をいただいたことに加えて、別のプロジェクトに対しても研究所長賞にもエントリーされたと聞きました。今年もコロナで苦しんだ1年でしたが、前向きになれるニュースでした。
大学と企業での研究における専門性
さて、企業研究職として12年間携わっていた中で、研究におけるあなたの専門は何ですか?と聞かれたときに、以下のように答えます。
学生の頃
① 海洋生物、褐藻類、カルモジュリン、分子生物学
会社に入ってから
① バイオ(合成生物学、酵素工学、発酵工学、微生物・複合微生物学)
② 化学工学(水処理、生物化学工学)
③ 高分子化学(ポリマー合成、物性評価)
改めてみると、いろいろやっていたんだなあという印象です。入社当時から狙って勉強したのかといえば、それは違います。いずれも任された担当業務でOJT、OFF-JTで身に着けたものです。入社当時は②、③が強いプロジェクトを担当しておりました。
学生時代の専門性だけで企業を生き抜くのは厳しい現実
学生時代はラボで修論(博論)に向けて専門性を磨く日々だと思います。誇りと自信をもって取り組んでいるので、誰にも負けないし、誰に対しても(就活なら面接官に対しても)語れる熱量があると思います。となると、就職後も専門性の延長に携わる分野で就職したいなあと思うのも当然かもしれません。
一方で、見方を変えると、1つの事しか出来ない、やりたくありませんという人材は、世界一の水準であれば別ですが、企業研究者として生きてゆくのは極めて厳しいと思います。例えば、バイオの世界であれば、世界中に似た研究をしており、著名な研究者が切磋琢磨しております。イノベーションな研究を起こしている領域は、生物学とは異なる分野(高分子、有機化学、情報学、物理学などなど)からの参入が圧倒的に多いです。双方の境界線で新しいイノベーションが起こっているといっても過言ではありません。
肌感覚として、1つの事だけやっていては、旧来のやり方から脱出できない、今までと異なる発想に基づいた技術革新が起きてしまうと、パラダイムシフトが起きて、自分の持っている技術があっという間に陳腐化してしまいます。
学生時代の専門性と異なる領域に飛び込んでみた
私は分子生物学一辺倒でしたが、修士2年目あたりで基礎研究に行き詰まってゆき、別の分野にチャレンジしたいと思い始めました。ここで皆さん懸念するのが、今までの専門性が役に立たなくなるではないか?ということですが、そんなことは全くありません。ベースとなる科学的思考による解決アプローチは、専門を変えようとも、職種が変わろうととても役に立つ力です。MBAで学ぶクリティカルシンキングはまさにこのアプローチです。
私は、たまたま本で読んでやってみたいと思った拍子で、大学で勉強したことがない水処理、高分子の世界に飛び込むことにしました。
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