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専門業務の研修に行って気付いた「教えるスキル」そのものの価値

来週から始まる某所の接客業務。

非常勤として申し込み、今週3日間、業務についての研修を受けました。業務は、専門的な知識に基づいて、お客様のスマートフォンの操作をサポートすることです。
ここに参加して、ある重要な気付きを得ました。
それは「教える」というスキルのもつ価値についてです。

私は以前、小学校教師として教壇に立っていました。その経験を通じて、同じ内容でも教え方一つで生徒の理解度が大きく変わることを実感してきました。今回の研修を受けて、この「教えるスキル」の重要性を、別の角度から再認識することになったのです。

専門知識と教えるスキルは別物

3日間の研修で感じたのは、業務に関する専門的な知識をもっているだけでは、効果的な指導は難しいということです。
今回の研修は2つの目的がありました。
一つは、専門的な最低限の知識を身に付けること。
もう一つは、スマートフォンの専用サイトの操作方法を身に付けること。
研修担当者は確かに業務のエキスパートでした。しかし、5センチもの分厚い専門知識の内容を、体系的に整理して伝えることに苦心されているようでした。

例えば、

  • 説明が体系的に整理されていない

  • 視覚的な補助教材が少ない

  • 受講者のレベル差への配慮が不十分(経験者と未経験者)

  • 情報量が多すぎて焦点が定まっていない

これは決して研修担当者の努力不足ではありません。むしろ、「教える」という専門性の重要性を示す例だと考えています。
また、専門知識のインプットが中心となってしまい、スマートフォンの操作については、口頭での説明ばかりでした。研修受講者の主な業務は、スマートフォンの操作サポートですから、研修受講者(私を含め)は、不安を募らせていました。

私は、専門知識はなかったですが、研修を受けた今なら、この3日間の研修を受講者に意味あるものとして組み直す方法をいくつか提案できます。

例えば、

ゴールを明確にする
3日間という短い研修期間で、最低限のスキルとして身に付けてほしいことと、実際に業務の中で身に付けられることを区別します。
膨大な資料があっても、まずは「ここだけは絶対に覚えて帰ってほしい!」という部分に絞って構成すると、理解度が格段に上がります。
視覚・聴覚に訴えるツールを用意する
文字だけでは理解しにくい部分は、実際の操作画面や動画、画像などを活用することで一気に理解が進みます。プロジェクターをスマートフォンとつないで、実機の操作画面を提示しながら研修すれば、何をやっているか分からなくなる人がいなくなります。
レベルに合わせた説明と練習問題
経験者と初心者が入り混じっている場合は、まずは初心者向けの講義を丁寧に行い、その後に経験者向けの発展的内容を用意するといった二段構えが有効です。知識レベルが異なる受講者を一律に扱うと、初心者は置いてけぼり、経験者は退屈になりがちです。
トラブルシューティングをしっかり行う
経験者に「こんな事例が困った」ということをいくつも挙げてもらいます。
それを解決した方法を話してもらうと同時に、講師が専門的な立場からアドバイスを付け加えればよいのです。講師が全部行う必要はありません。

教えるスキルの新たな可能性

今回の研修を受けて感じたことは、研修する側が、
「『大人だから、話して教えるだけでも大丈夫。』と思っているのではないか?」
ということです。
これは、かなりまずい勘違いです。
世の中の半分は偏差値50以下(当たり前)です。
それを前提に研修を組み立てる必要があります。
「大人だから理解できるはず」は大間違いなのです。
分かりやすい資料を作ること、分かりやすい組み立てをすることは大前提で研修を組まなければなりません。

そう考えながら研修を受けていたら、こんな考えが浮かんできました。
実は、「教師経験者が持つ「教える」というスキルはものすごく価値があるのではないか。市場価値もあるのではないか。」
ということです。
一般的に「教師の経験は他の職種に活かしにくい」と言われがちですが、実は大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。

教師の持つスキル:

  • 複雑な情報を分かりやすく整理する力

  • 受講者のレベルに合わせて説明を調整する能力

  • 効果的な教材を作成する技術

  • 学習者の理解度を確認しながら進める手法

これらのスキルは、企業研修やスキルトレーニングの場面で、非常に重要な価値をもつはずです。

新しいキャリアの可能性

実は、「教える」というスキルそのものが、立派な専門性として認められる時代が来ているのかもしれません。
企業内研修、社員教育、顧客向けトレーニングなど、様々な場面で「教える」プロフェッショナルの需要は確実に存在します。

教師経験者は、その道のスペシャリストでなくても、「教える」というプロフェッショナルとして、新しい価値を生み出せる可能性があるのです。

この気付きは、教師経験者の新しいキャリアの可能性を示唆しています。教えることの専門家として、様々な分野で活躍できる道が開けているのではないでしょうか。

研修を終えてのまとめ

今回の研修を通して、改めて「教えるというスキルそのもの」に大きな価値があると感じました。専門家としての知識も大切ですが、それを分かりやすく伝え、相手が理解できるようにサポートすることができるかどうかは、まったく別のスキルです。
先ほども書きましたが、「教師の経験は他の職種に活かしにくい」などと言われることもありますが、「教えるスキル」そのものが大きな強みといえるのではないでしょうか。
職場でも、研修でも、家庭でも、「分かりやすく教える」ことは常に求められるもの。教え方にフォーカスを当てた研修や指導がもっと広がれば、多くの場面で効率と理解度が高まるはずだと感じています。

忙しい中でも懸命に研修を行ってくれた担当者の皆さまには感謝しています。私自身もこれからは、教師として培ったスキルをもっと活かせるのではないかと可能性を感じました。
「教える」という行為には、目に見えにくいけれど確かな価値がある――それを実感した3日間の研修でした。


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