見出し画像

天声人语丨「なれ」ではなく「なれる」⁽²⁰²⁵⁻⁰¹⁻²⁵⁾

        部活を終えて飲む水道水は、なぜあんなにおいしかったのだろう。渇ききったのどに、すーっと染みわたる。言葉もきっと同じだ。何げない一言が、若い心を潤すことがある。これで10回目となる「私の折々のことばコンテスト」には、全国の中高生から2万7千件を超える応募があった▼中学3年の占部由布奈(うらべゆうな)さんは、数学を習っていると、教科書を放り投げたくなることがある。そんな時、塾の先生がさらりと言っていた言葉が頭に浮かぶという。「勉強は楽しく生きるための手段だよ」。すると、やる気が湧いてくる▼高校1年の橘葵衣(たちばなあおい)さんは、人に頼るのがどうも苦手だった。小学校の先生が教えてくれた。「人と人のあいだに生きているから『人間』というのです」。頼ることはちっとも恥ずかしくないと気づいた▼高3の水谷心春(みずたにこはる)さんは、中学の卒業式で「君は社会を変える人になれる」と先生に言われたのが、心に残っている。やろうと思ったことは迷わずやりや、と。先生が自分を信じてくれていることが、言葉遣いから伝わった。「なれ」ではなく「なれる」▼たった一文字で意味は変わる。〈違いとは間違いじゃない窓ひとつひとつに別の青空がある〉。歌人の木下龍也(きのしたたつや)さんが、教室を生き抜くための歌を、と求められて詠んだ(『あなたのための短歌集』)
      青春の方程式は複雑だ。答えが見つからないまま、友達、進路、恋愛と変数ばかりが増えていく。そんな時、だれかの言葉が心の支えになるかもしれない。

歌人・木下龍也さん        驚くような短歌が読みたい

        依頼者の「お題」に短歌で応えた「あなたのための短歌集」が10月末、5万部を突破した。2021年11月の刊行以来14刷と版を重ね、1万部を超えるとヒットとされる歌集のなかで注目を集める。100のお題と歌を収め、たとえば「教室を生き抜くための短歌をください」というお題には、〈違いとは間違いじゃない窓ひとつひとつに別の青空がある〉と返した。
        「木下さんの短歌はもやっとした気持ちをすくい、晴れ晴れした所に持っていってくれる。子どもたちが自分の気持ちを掘り下げる助けになるのでは」。こう感じた福島県郡山市の菊地ゆきさん(35)は、自身が携わる中高生向けの「福島学カレッジ」(東京大学大学院・開沼博研究室主催)で講師役を依頼。8月半ばに同県双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館で実施した2泊3日のプログラムの柱に短歌講座を位置づけた。
        「短歌の57577は文字数ではなく音数で数えます」。当日は約40分の座学で基本をおさえた後、中高生10人が「私だけの発見」をテーマに歌を作り始めた。「〈旧友〉は借りてきた言葉では?」など一人ひとりに短く助言し、創作過程を見守った。
        夕食後も相談は途切れず、顔の一部を削り取った跡のある祖母の卒業写真に自分を重ねて詠んだ佐藤実穂さん(17)が納得いく言葉にたどり着いたのは午後10時すぎ。「〈いつもマスクの私も同じ〉と、急に祖母と私がつながった」と佐藤さんが吐露すると、「その瞬間、空気が変わりましたね」と喜んだ。
        短歌を作り始めたのは23歳の時だ。コピーライターになりたくて養成講座に通ったが挫折。すがるような気持ちで通った本屋で出会ったのが、穂村弘さんの歌集「ラインマーカーズ」だった。たった31音で鮮明な映像が浮かぶことに衝撃を受け、穂村さんが選者を務める雑誌の短歌欄に投稿を開始。すぐに頭角を現した。13年に第1歌集「つむじ風、ここにあります」を出版。既刊9冊のなかには、谷川俊太郎さんとの対詩集もある。
        「あなたのための短歌集」の印税に相当する額で現代の歌人たちの新刊歌集を書店で購入し、学校などに贈る活動も、版元ナナロク社(村井光男代表)との共同事業として進めている。今年、全国40の小中高校に計1280冊の歌集を贈った。
        様々な依頼が寄せられるなか、教育にまつわる仕事はできるだけ受けている。「本心を言うと、僕のため。機会がなかっただけで短歌は誰でも作れるし、誰でもホームランが打てる詩型。子どもたちに作り方を教え、いつか、眠っているすごい短歌を引き出したい。驚くような短歌が読みたいんです」

能为之而非要为之

        社团活动挥汗后的那口自来水,为何会如此甘甜,一下子湿润了干渴难耐的喉咙。话语也同理,不经意间的一句话,有时就会滋润年轻的心灵。本次第十届“我时常回忆的一句话投稿大赛”,征集到了来自全日本高中生超过2万7千件的投稿。

        在学习数学时,初三学生占部由布奈,有时会产生扔下教科书放弃的想法。这时他不禁想起补习班老师那句干脆利落的话。“学习是一种为了快乐生活的手段”。于是,自己就又鼓起了干劲。

        高中一年级学生橘葵衣总是怯于寻求别人帮助。她表示,正是小学老师教导他:“正因为我们生存在人与人之间,所以才能叫做‘人’(日语用“人間”表示“人”的概念。)”。由此她才发现寻求别人帮助没什么不好意思。

        高二学生水谷心春在初中毕业典礼上,老师对他说了一句:“你能成为改变社会的人”。他将这句话铭记于心。这句话传达了老师的深情:告诉他想做就去行动,不要犹豫徘徊。老师用的并不是“要成为”,而是“能成为”,言语中传递出老师对自己信任。

        仅仅一字之差,意思就截然不同。诗歌家木下龙也应邀创作了一首激励学子们努力学习的诗歌,该诗收录进了《为你而作的短歌集选》中。诗中写道:“不同并不是错误,每一扇窗户外都有另一片蓝天。”

        青春的方程十分复杂。找不到答案的同时,朋友、前途、恋爱等变量却在不断增加。此时此刻,某人的一句话说不定会成为他们心灵的依靠。

いいなと思ったら応援しよう!