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上場AI社長がタイミーでスキマバイトしてみた

アイデミー代表の石川です。11月の3連休、時間ができたので、以前から興味のあったタイミーのスキマバイトのワーカーとして、4時間働いてみました。実際に自分が働いて思ったことの感想を、このnoteにまとめてみたいと思います。

なぜやってみたいと思ったのか?

話題のサービスを評論するだけでなく、実際にユーザーとして体験してみたかったからです。体験して初めて得られる新たな発見や面白さがあると思い「まずはやってみよう」という精神で、アルバイトに応募してみました。

私が創業した会社「アイデミー」は、2023年に東証グロース市場に上場した、東大発のAIスタートアップです。顧客は、製造業や飲食業、小売業、運送業などリアルなアセットやオペレーションを持つ企業がほとんど。我々が身を置くAI/ITドメインではなかなか体験できない、現場オペレーションのリアルな理解を自ら体験し、そして「工場見学やインターン」といった見せるために創り上げられた空間ではなく、自らもみくちゃになりながら身を粉にして働いてみたい、という気持ちがありました。

もちろん、4時間ほどの経験なので触りだけの体験で、まだ真髄に触れられていないと思いますが、普段の運動不足も相まってか、想像以上のクタクタになって濃密な時間を過ごすことになりました。

「タイミー史上、もっとも活躍したワーカーだ!」と褒められるべく、意気揚々と向かう様子

タイミーで体験した怒涛のオペレーション

今回働いたのは、ホテルチェーンのバイキングレストランで、お昼時の約4時間のシフト。従業員専用の入り口から入ったものの、バッグヤードが少し複雑で迷ってしまいました。そのとき、親切な方が声をかけてくれ、「案内するよ」と親身になってくれ、温かさに少し感動し、働くモチベーションも上がりました。

その方に「もしかして同じタイミーですか?」と聞いたところ、「いや、社員だよ」と返され、「あ、すいません」と思わず謝罪の言葉が口から出ました。(少し気まずい雰囲気に。)「社員って偉いんだな」といった、アルバイトの時に感じたヒエラルキーを思い出しました。笑

戦場のような現場

3連休の昼時でバイキングは大盛況。現場はまさに戦場といった状況で、クルーがオペレーションを必死で回している様子が印象的でした。4時間の間に、私は67種類の仕事を任されました。業務が逼迫しているため、社員からアルバイトまで、ありとあらゆる人から、僕に仕事が降りそそぐスタイル。具体的には、カトラリーの清掃、バッシング(食器の回収)、ゴミの分別、さらにはホウキでの床掃除など、さまざまな作業を担当しました。

非常に美味しそうな料理が並ぶ(画像はイメージ)

普段やらない慣れない作業ということもあって、「何やってるんだよ!」「ちゃんとやれよ!」と何回も爆詰されながら叱られました。涙 (この数年で一番叱られた4時間でした… )戦場のような現場で、定着するかどうかわからないタイミーワーカーを、ゆっくり指導することは現実的ではないと思いますし、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

そんな中、一緒に作業をしていた仲間同士の人間関係にも触れることができました。おそらく40-50代のベテランに見える男性が、職人のような覇気を伴ってゴミの分別をしており。「この方はプロフェッショナル社員に違いない」と確信し、気に入られるようと少し雑談をしてみたところ、実際には週1くらいアルバイトで、まだ10回程度の勤務とのこと。社員に取り行って、楽な仕事に変えてもらおうとした目論見は立ち消えました(笑)が、アルバイトであの覇気を出せるものか、と感心しました。素手でゴミの分別をしていた僕を見兼ねてか、「これ使えよ」と無愛想な様子ながらもゴム手袋を渡してくれて、温かい現場の空気に触れることができました。また、お客様の「ありがとう」「ご馳走さまでした」という言葉は何よりのモチベーションになりました。

この数年で一番叱られて、心の中の自分の様子

現場で感じた“リアル”な課題

今回、現場で働いて最も耳にしたことは、アルバイトや社員の方々が口々に「オペレーションが回っていない」と話していたことです。例えば、本来のルールでは、使い終わった食器はすぐにバックヤードに戻すべきなのですが、バックヤードのキャパシティがオーバーしており、使い終わった食器がバックヤード脇に置かれたお客様用のテーブルに山積みになってなっていました。ギリギリお客様からクレームが来ない範囲の中で、なんとか限られた人員で現場を回している雰囲気を感じました。現場に疲労が蓄積している様子もありつつも、どのクルーも当事者意識を持ってお客様に迷惑をかけないよう全力で取り組んでいる姿勢は素敵であり、組織力の高さが感じられる場面でもありました。

IT企業の視点と現場のリアルな葛藤

このレストランではスペシャルメニューがあり、それを注文すると他のメニューとは異なる特別な食器が提供され、ゴミの分別も一段階オペレーションが増えており、現場の愚痴のタネの一つになっていました。(もちろん、結果的にはオペレーションが回っていますし、顧客単価が上がっているのであれば「問題なし」と評価しても差し支えないレベルとも思いますが…)

私自身、過去にITの立場から、無邪気に「現場にXXXしてもらうことで、新たなデータが蓄積されてこんなビジネスインパクトが期待できるのでは?」といった、現場に皺寄せが行きかねないオペレーションを増やす提案をした経験がありましたが、今回の体験でその時の反省が強まりました。僕がイチ現場のオペレーションを回した経験者として発言の機会を求められれば、「本社のITは現場の現実をわかっていない」と言いたくなると思います。現場オペレーションの負荷の高さを痛切に感じる機会となりました。

このレストランでは、アプリでクーポンを利用して無料ドリンクを提供するサービスがありました。しかし、実際に現場でそのクーポンの扱いについて聞かれても、スタッフの多くが把握できておらず、混乱が生じていました。こうした「何気ない」プロセスの追加も、現場での運用まで考えると現実的でないことが多いのだと改めて実感しましたし、業務研修がほぼない状態のクルーであるタイミーワーカー前提でもお客様を混乱させない、簡潔なオペレーションの現場が求められているようにも感じました。

幸いにして、このレストランにはQRコードでオプションメニューを注文できる仕組みがありました。クーポンによる注文も、QRコードを通じた注文プロセスに一貫することで、現場の負担を増やすことはないでしょう。(一方、それはそれでIT屋からすると、それは簡単に見えて各ベンダーやサービスの機能解放等が十分に進んでおらず、非常にハードルの高いプロセスだったりするのですが…)今回の体験を通じて、ITの立場から現場をサポートするデジタル化の在り方について、多くの学びを得ることができました。

三連休の混乱している現場の様子

一方、タイミーで現場で働くなかで、「細かい改善で現場の負荷が下がる要素はまだ残されている」なぁと思った点もありました。例えば、お客様の荷物が汚れないようにかける布。お客様が退店される度に折り畳み直すのですが、この布が毎回安価な素材で折り目もなく、たたみ直すのに膨大な時間がかかっていました。ここをもう少しコストをかけて品質が良く畳みやすい折り目のついた布にするか、再利用する必要のない使い捨ての紙ナプキンに変更するだけでも、オペレーションが格段に楽になるでしょう。

AI/ITの利用によってオペレーション負荷が下がるポイントもいくつもあるはずです。現場の負荷を軽減することと、単なる改善ではなく収益性が変わる(採算性)といった観点を両立をしながら、現場と経営視点を行き来するAI/IT活用のポイントを考える大切さを改めて実感しました。

タイミー体験の感動

交通費を合わせ、5,300円の報酬を得ることができました。職場もタイミーへの理解も深く、シフトが終わる15分前には仕事が終わり、ゆっくり着替えてチェックアウトできる余裕がありました。仕事終わりに「お疲れ様でした」とアプリに表示された瞬間は、想像以上に感動しました。

タイミーのワーカーとして登録するまでのプロセス非常にシンプルで、ドタキャン等のペナルティルールも明快。1分前まで募集している仕事も数多くあります。昔、派遣バイトに登録したこともありましたが、登録や面接のプロセスが複雑だし、シフトの確定もギリギリでも数日前までで面倒でした。「派遣」とは全く異なる、素晴らしいユーザー体験に触れることができました。

バイトが終わったのが嬉しくて、思わずスクショしました

私と一緒に働いていたタイミー利用者の中には、30〜40代の女性で、一人の方は「平日社会人だけど、暇な休日に働くようにしてるの」とお話されていました。タイミーが幅広い年代の方に広く利用されていることを実感しました。(ちなみに彼女からには「学生ですか?」と聞かれ、久しぶりに学生と間違われました。歓喜

改めて、初めての経験で、現場の社員の方々に迷惑をかけてしまったこともあったかもしれませんが、温かく接していただき感謝しています。そして何より、これから飲食店にいく時は、現場のクルーへの感謝の言葉をちゃんと口にしよう、と思いました。

4時間立ちっぱなしで疲れ切った後に飲んだレモンスカッシュは格別で、普段のオフィスワークでは忘れがちな達成感を味わうことができました。久しぶりに、部活終わりの美味しい炭酸の味を思い出した気がします。

今回の体験を通じて、現場での働き方に対する理解が深まり、そこに潜む課題や改善の可能性を肌で感じることができ、現場を知ることの大切さを再確認した貴重な体験でした。これからも、現場で働く全てのワーカーの方へ感謝を忘れず、AI/ITをはじめとする先端技術の力で、世界をより良くしていきたいと思います。

ぶじGoodを獲得!

アイデミーでは、コンサルティング/開発支援を通じて現場のAI/DX改革を支援しています!

アイデミーでは、製造業や飲食業、小売業、運送業などリアルなアセットやオペレーションを持つ企業のAI/DX改革を支援するコンサルティング/開発支援 Modeloy を提供しています。エンタープライズのお客様から、成長企業のお客様まで、幅広い支援実績があります。

他のコンサルティングファームやSIerと異なり、小資本(数百万円〜)からアジャイルに開発を進め、投資で現場で必要とされる「価値筋」を検証することが強みです。上場後、2社の優秀な技術者が集まっている開発会社もグループにお迎えし、幅広いテーマで実装支援ができるようになりました!

ご興味ある方は、お気軽に石川までメッセージいただくか、以下のサイトから問い合わせくださいませ!


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