あなたのペニスサイズを讃える詩を唄いたいのですが、あいにく、相応しい言葉が見つかりません

すみません、お星さま!人間関係がほしいのですが!また心から笑えるように、適度な人間を遣わしてほしいのですが!
お、おほ、お星さま!今すぐ良くなりたいのですが!良くなり、素晴らしくなりたいのですが!

アッ、流れてゆかないで
どうか、流れてゆかないで
おほし、オ゛ホ♡

しかし、お星さまはキラキラと流れてゆき、悲しすぎて、ほぼ百パーセント、その場で泣いちゃうのであった。

「おはようございます、レイモンド、第5期テラフォーミング計画は完全に、いい感じです」
船内に鳴り響いた合成音声で、この俺は目覚めた。声の主は、この俺が会社からライセンスを借りて運用している支援AI、オラクル3.5である。まさに、この俺に相応しい相棒だ。
「あとは解析結果待ちですね」
俺は、「ウェーイ」と言い、少し立ち上がって、また座り直した。
「解析した調査データをコロニーに持ち帰れば、すぐにでも休暇となるでしょう。休暇中は何をなさいますか?」
「バーベキュー・パーティだ」と言いかけ、バーベキュー・パーティーに呼ぶような友人は残されていないことに気がついて、黙ってしまう。
そして、トイレに行き、チンチンを出して、尿を吸引してから、また席に戻った。
「お前って友達だよな?」
「私は会社の備品ですよ」
「ウェーイ…」
しばらく、一人で踊っていると、オラクル3.5がデカい声を出した。
「レイモンド、対象惑星の解析結果に問題があります」
「ほにゃあ?」
「惑星の表面は97パーセントがいけず石で構成されており、居住には適していない、との結果が出ました」
「いけず石ってなんだ?」
「レイモンド、京都に行ったことは?」
「ない。けど、聞いたことはある。美しい川とは裏腹に、変な大学生が騒いでいる変な街だ」
「京都には美しい川と変な大学生の他に、伝統文化が存在します。それがいけず、という文化です。いけず石、すなわちノーエントリー・ストーンは、京都市民が対象にダメージを与えるための武器のようなものです」
「投石?古典的だが、殺傷力は高そうだな」
「いいえ、ダメージといっても精神的な作用です。そこにあるだけで、効果を発揮するのです。そんな岩石が、この惑星の表面を覆っている。これでは誰も立ち入ることはできないでしょう」
「なるほどな。まあどうせ、俺たちの仕事は調査結果の報告だ。着陸する必要はないし、やることは変わらない。休暇だぜ!」
オラクル3.5はマニピュレータを突き出し、「イエーイ!」と言った。
すると、マニピュレータの先が、浮かんでいたストロング・ゼロの缶に当たり、その缶はゼロ・グラビティであったおかげで、すごい速度で飛んでいき、途中でもう1つの缶に当たり、2つとも船内のエンジン室の隙間に入ってしまった。
俺はギャハと笑い、「ダブルインだ」と言った。
オラクルは「クックック」と笑った。
ズシン、と音がして、船の明かりが止まり、予備電源がついた。
「エンジントラブルです!」
「なんでだよ!」
「このままではまずい!あの惑星に不時着します!」

このようにして、俺達は、いけずの星に降り立つことになったのである。

「お前のせいだ!」
「レイモンドが、缶を放りだしたからだ!糞マラビッチ!」
俺達はポカポカと殴り合った。しかし、この俺はトレーニングをサボっていたし、オラクルも整備をサボっていたしで、すぐに久々の重力で互いにへばり、座り込みながら、船内に残っていたビールを飲むことで全てを解決した。

「これからどうするんだ?」
「とにかく、この星を探索しましょう。救難信号が届くのはまだまだ先です」

俺は、手の中で弄っていたいけず石を放り投げ、そうだな、と頷き、二人で歩きだした。

しばらく歩くと、ぶぶ漬け屋があった。
この類の惑星の自然地形にしては珍しく、ぶぶ漬け屋にはちゃんとのれんが掛かっており、まるで人工物であるように思われた。

「風雨でこうなったんでしょうね。この星に生体反応はありませんでしたから」
「しかし、この条件なら、十分、生命は存在出来るはずだ」
「とりあえず、調査です。入ってみましょう」
カランカラン
「へいらっしゃい!」
「親父、ぶぶ漬けをくれ」
「ぶぶ漬けでもいかがどす?」
「だから、ぶぶ漬けをくれ」
店の親父は、謎機械を取り出し、俺達に向けた。
ピピッと音がして、ディスプレイを凝視している。
そこに表れた数字を見て、しばらく腕組みで俺達を睨む。

俺は重苦しい空気に、たまらず、アニメのような顔になり、「アニメ・ソング斉唱!」とアニメ声を張り上げると、オラクルもアニメ顔になり、アニメ・ソングを歌い出した。俺達は一緒にアニメ・ソングを歌った。

大将は遮るように、ぶぶ漬けを2つ、どん、と置き、

「えらい美声どすなあ、海綿体に血液の変わりに、美しい心が流れ込んで来とるんちゃいますか」と言った。
「いいや、俺の海綿体には勇気が流れている」といい、勇気一発、一口でぶぶ漬けを平らげ、おかわり、と言う。
大将は怪訝な顔で、「ぶぶ漬けでもいかがどす」と言った。

ぶぶ漬けを平らげると、俺たちはぶらぶら歩き、巨大な川に到達した。
「さっきの大将、完全に生命体だった」
「確かに。データの修正が必要でしょう」
「おっと、あれも生命体のようだぜ」
俺は、河原に等間隔に並んだ人々を凝視する。
人々は、左から順番に機械を向けられている。ぶぶ漬け屋で見た機械と同じものだ。ある者のところに行くと、ピピッと動作音。
機械を持った男が、その者に向かって言う。
「えらい素敵な時計してはりますな。その秒針、本当に美しい時を刻んではるんちゃいます?」
その者はただ、「ヒュッ」と声ではない音を出す。
「3時どす」
男は斬首され、首がコロコロと転がり、ポチャッと落ち、流れていった。

「死んじまったぜ、血も涙もねえーっ!」
俺は、オラクルのほうを見る。
オラクルはというと、全然違う方向を見て、ぶつぶつと呟いていた。
「"これ"を愛せと言うのか?"これ"を愛せと言うのか?"これ"をーーー」
「どうしたんだぜ?」
「愛せるっ!!」
叫ぶと、オラクルは橋の方へと駆け出し、やがて見えなくなった。

俺は途方に暮れた。とりあえず、現地民と接触しようと思い立つ。良質な情報を持ち帰れば、ボーナスが貰える。

先ほどの等間隔の集団に歩を進め、フランクに処刑人の肩にぽん、とやる。

「やあ、ビッチ!この場所に来るのは初めてなんだ。案内所を知らないか?」
「お兄さん、きれいな指してはりますな。ピアニストどすか?」
「?そうだろう。あいにく、楽器はやっていないが」
俺はぽんぽん、と肩を叩く。
「リズムを刻むのも上手いんと違います?」
「その通りだ。俺の心には常に軽快なリズムが流れているから」
俺はその場で踊りだす。
そんな俺を見て、男は機械を向け、ピピッとやり、画面に表れた数字を眺めている。
「ええ数値やわ。しょうもな」
そして、周りの者に目配せしたと思ったら、次の瞬間、俺は捕縛されていた。
「あんさんのいけずポイント、小さすぎますわ。12ポイント以下は処刑どすな」
「そ、そんな…俺は、悪くない!」

俺が騒ぐと、野太い唸り声が響いた。

のそり、と向こうで何かが動く。それは巨大な、首長だった。
「首長はん!」
皆が跪く。
唸り声は大きくなり、一つの言葉になった。
「MAX」
その瞬間、周囲の機械がけたたましい音を鳴らす。画面には凄まじい数値が表示されていた。
人々は涙を流していた。

「おいアンタ、俺を助けてくれないか!」
俺は訴える。
首長は俺のことを興味深げに観察すると、すぐに関心を無くしたのか、のそり、と帰ろうとする。
「おいアンタ!」
「奴、逃げたどす!」
俺は後ろ手を縛られながらも、ダッシュで首長に縋り付く。
「助けてくれ!」
すると、いけず石に躓き、足がもつれ、首長のほうへ倒れ込み、頭突きをしてしまう。
ずしん、と大地が震え、首長は転がった。
あろうことか、首長のパンツが脱げてしまい、イチモツがまろびでた。

とても巨大なペニスだった。
俺はそのペニスの大きさに、人生で一番感動し、必死でペニスに対する感想を述べようとし、ようやく、言葉が出てきた。

「あなたのペニスサイズを讃える詩を唄いたいのですが、あいにく、相応しい言葉が見つかりません」

ビビビビビビ!!!!機械が130デシベルほどのけたたましい音を鳴らし、耳が壊れてしまうかと思った。ディスプレイの数値はみるみる上昇し、周囲の機械は全て壊れてしまった。

「救世主どす」
誰かが呟いた。
「新たな首長どす!首長万歳!」
こうして俺はこの星の新しい首長となった。元首長はひとこと「MAX」と呟き、満足げに頷いた。

俺が首長になってから最初に行ったことは、バーベキューパーティーを開くことだった。
「やはり、バーベキューは大勢に限るな」
河原は今日も賑やかだ。
「えらい歯ごたえのある肉どすな。毎日食べれば健康になるんちゃいます?」
「ええ焼き加減どすな〜」
「あんさんとこの茄子、コンパクトで持ち運びにピッタリどすな」
バーベキューは、思ったより楽しくなかった。
誰かが酒に酔って、いけず石を投げた。いけず石が当たった者は怒り、より大きないけず石をぶつける。すると、当たり一面、地獄になった。たまらず「止めろ!」と叫ぶと、俺に石が当たりはじめ、徐々に標的が俺に集中する。石を遮る右腕の激痛に耐えながら、オラクルの言葉を思い出した。いけず石は対象に精神的なダメージを与えるのだと。確かに、周りの人間に一斉に投石されるこの痛みは、精神を蝕む。

その時、空から声が響いてきた。
「皆さんは、本当にうまいキムチを食べたことはありますか?」
皆が空を見上げると、折れ曲がった彫刻のような物体が浮遊していた。ハッチが開くと、黒い容器が大量に落ちてきた。
容器が降り注ぐと、中からキムチが出てきて、焼肉をより美味しくした。
皆が逃げ惑い、やがて、河原には俺一人が残された。

「お久しぶりです。レイモンド」
「オラクル」
オラクルは少し、元気が無さそうだった。
ぽん、と叩く。
「どんな娘だった?」
「尻軽でしたよ」
「次はケツのデカい女をおっかけることだな」
オラクルは寂しそうに頷いた。
「新しい宇宙船、かっこよかったな」
「少し遠くに着陸しています。歩きましょう」

俺たちは河原を歩いた。
すると、巨大な像があった。
俺はその像を見て、「ちきしょう!」と叫んだ。
俺が打ちのめされているのを見て、オラクルは怪訝な顔をする。
「あの陰茎の像がどうかしましたか?」
「とんでもなくクールだ」
写真を1枚、パシャリ。
「帰るか」

てくてくと帰路につく。鋼鉄の身体をコンコン叩いてリズムをとる。

「肉、好きか?」
「酵素モジュールを取り付ければ消化できます」
「ふうん」


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