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2025年テック産業の7大注目トレンド
こんにちは。シリコンバレーで働く日本人プロダクトマネージャーのAkiです。本業では大手のテック企業で働きながら、テック産業の動向を追っています。新年をきっかけに、Noteを始めることにしました。1-2週間おきくらいのペースで、テックやプロダクト開発についての気になるトピックについて書いていきます。よろしくお願いします。第一回は、年初ということもあり、2025年に注目のテックトレンドを挙げてみます。
スマートグラス
Agentic AI
スマートなスマートアシスタント
空間知能(Spacial Intelligence)
ヒューマノイドロボット
第二次トランプ政権
中国テックの躍進
スマートグラス
2024年、個人的なベストガジェットはMeta Ray-ban Wayfarerでした。この年末の休暇もレイクタホにスキーに行きましたが、どんどん上達する子供の滑りを逐一記録してくれました。本記事のヘッダーの写真も同スマートグラスで撮影したものです。読んでいるKindle書籍をAlexaに読み上げさせて、スマートグラスで聴いて、隙間時間に読書をしたりしています。モバイル環境でAlexaのようにタイマーを設定するなども活用しています。完全にスマートグラスが生活の一部になりました。Metaは完全なARグラスの試作(Project Orion)の発表などもしていますが、ARグラスが一般消費者向けに提供されるようになるにはまだ年単位の時間がかかりそうです。ただ2025年には、ARではなく簡単な視覚情報の表示を行うスマートグラスがMeta他から提供されるでしょう。ハードウェアとしてのスマートグラスは着実に利用を拡大し、近い将来のARグラスへの道を拓くでしょう。
Agentic AI
昨年までのテック産業を席巻したAI技術にとっては、2025年は一つの山場となりそうです。これまではモデル開発などに膨大な先行投資が行われてきましたが、その投資に対するリターンが求められています。その本命として期待されているのが、Agentic AIです。Agentic AIとは、一言でいうと、対話することで実際に旅行の予約やレポートの作成などのタスクをこなしてくれるAIです。実際に利用できる例として、Anthropic Claudeに搭載されたComputer Useがあります。これはClaudeに入力した指示に基づいて、ClaudeがWebブラウザを実際に操作して処理を行ってくれるというものです。このようにコンピューターの操作を代行するパターンと、WebやモバイルアプリのAPIを利用するパターンが考えられます。ChatGPTなどが非常にインパクトがあったとはいえ、対話応答するだけのAIにどれだけ料金を払うかは疑問です。2025年はAgentic AIによって本格的に人間の仕事がAIに置き換えられていく最初の年になりそうです。
スマートなスマートアシスタント
2012年にSiriが登場して以来、Amazon AlexaやGoogleのスマートアシスタントは大きな注目を集める一方で、SF的なスマートアシスタントの期待には応えられずに来ました。しかし2025年は、LLMとAgentic AI技術によってそれがついに実現する年になりそうです。Siriはデバイス内のアプリの情報を用いたパーソナライゼーションと、アプリの機能の操作の実現が予告されています。GoogleはLLMベースのGeminiのサポートと機能を着実に拡大し、現在利用可能なアシスタントの中では頭一つ先行しています。モバイルにおけるスマートアシスタントに注目している理由として、モバイルアプリの飽和があります。継続して利用している新しいアプリを最後にインストールしたのはいつでしょうか。スマートアシスタントを通して、ユーザーの抽象的な要望に対して、適切なコンテンツやサービスをAIが発見し、提供することで、この問題が解決できます。長期的には、スマートフォンを巨大産業にしたアプリという概念が置き換えられていくと思っています。
空間知能(Spacial Intelligence)
ディープラーニングによる高性能な画像認識の実現に貢献し、スタンフォードのHuman AIラボのディレクターを務めていたフェイフェイ・リー博士が、2024年にWorldLabsというスタートアップを創業しました。WorldLabsの目的は、今のマルチモーダルLLMがしているような画像の内容の要約などを超えて、画像の入力から現実世界で起こっている状況を認識したり再現したりできる空間知能(Spacial Intelligence)を実現することです。現時点では、画像を一枚提供することでその中を動いて探索できる3D空間を構築するデモを公開しています。こうした技術には映画やゲームなどのコンテンツ制作はもちろん、リアルタイムの画像入力から周辺環境を理解して行動する自動運転車やロボットなど、幅広い応用が考えられます。
ヒューマノイドロボット
LLMや空間知能の延長上に、現実世界での物理的な仕事を行うヒューマノイドロボットの実現が現実味を帯びてきました。NVIDIA CEOのジェンセン・ファンは、年次の開発者会議で、今後のAIの重要市場は自動運転とヒューマノイドロボットだと述べました。テスラは、Optimusというロボットを発表し、自社の工場などで利用していくとしています。中国のUniTreeは安価で軽量なヒューマノイドロボットを発売して注目を集めています。ヒューマノイドロボットは当初は工場での作業のような仕事で利用されていくと考えられますが、家事などを行う家庭向けも遠からず実現するかもしれません。
第二次トランプ政権
昨年最大のニュースの一つは、ドナルド・トランプが大統領に再選されたことです。そしてトランプ政権は、テック産業と密接な繋がりを持っています。第一次トランプ政権の最大の支持者の一人は、PaypalやPalantirの創業で知られるピーター・ティールでした。今回は、イーロン・マスクが、X(旧Twitter)を通してトランプ/MAGAの後押しを行いました。結果、マスクは共同大統領と言われるほどトランプに近いポジションを得ました。政策への直接的な影響としては、連邦単位での自動運転の規制緩和が噂されています。これは、自動運転タクシーへの参入を発表したTeslaへの便宜になります。同じくTeslaの事業を有利にするよう、EV購入時の補助金にも手が入れられるでしょう。またトランプは選挙戦中から暗号通貨への前向きなスタンスを打ち出しており、規制緩和が進められると予想されます。
中国テックの躍進
テック産業においては、規制の少ない中国が技術開発で先行しつつあります。スマートフォンにおいても、1インチの大型カメラセンサー、リチウムイオンに代わるシリコンカーボンの高密度バッテリー、薄型の折り畳みディスプレイなどの提供において米国系のメーカーに先行しています。ファーウェイは、今年世界初の三つ折りスマホ(Mate XT Ultimate)を発売して、世界の度肝を抜きました。また自動運転タクシーにおいても検索エンジン大手のBaiduがすでに11都市で運行を行っています。ヒューマノイドロボットも続々と製品が発表されています。トランプ政権の米国と、中国の間で、交通や通貨などの社会インフラのDXの激しい競争がなされるでしょう。
まとめ
こうして整理してみて、やはり2025年もAI技術が注目の的となりそうです。技術開発だけでなく、本当に人間の仕事を代行したり、また現実の世界とも関わっていくようになりそうです。シリコンバレーでは、AIが仕事や生活のインフラとして実装されていくと期待しています。本noteでもその動向をレポートしていきたいと思います。よろしくお願いします。