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一日にたった一度だけ、
わたしの名前を呼んでください。
そうしていつか焼きついて、離れがたくなりますように。
#三行ラブレター #ちょっと呪いっぽい
さよならには足りない
兄のように慕っていた友人が亡くなった。
9月で33歳を迎えるはずだった。
8月12日土曜日の朝、友人から連絡があった。「実は入院していてさ、暇なんだよ」
目の保養になるようにおめかしして来てよ、と付け加えた、軽い連絡だった。
言われたとおり、普段はあまり引かないアイラインをはねあげて、病院へ向かった。
退屈しているだろうから…と、課金ができるようiTunesのカードと何冊かの本を手土産に。
由緒正しき、喫茶店に寄せて
その喫茶店は、たしか神保町の商店街を一本入ったところにあった。
たしか、というのは、通っていたのがもう何年も前のことで、店名はおろか、店の位置が合っているかどうかさえ疑わしいからだ。
急な階段を下って地下へ。重い扉をひらくと、何年も染みついた古い煙草の臭いが飛び込んでくる。
なんとなく、いつも麻雀ゲーム機のテーブルに座る。
ゲームとして稼働していたことがあったのだろうか、なんてぼんやり考えながら
一日にたった一度だけ、
わたしの名前を呼んでください。
そうしていつか焼きついて、離れがたくなりますように。
#三行ラブレター #ちょっと呪いっぽい