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いつか必ず、サクラサク

 今年の桜は、もう咲いてしまいました。人に見られなくても変わらず、たおやかに咲き誇っていました。
 街中の花々も、早々と咲き始めたようです。
 先日、道草つづりの表紙になっている「ヒメツルソバ」を見かけたと言ってくれた人がいました。それまで、気に留めたこともない花だったのでしょう。私は花の名前をかなり知っています。そのことについて「勉強したのですね」と言われました。私は「勉強」という言葉に違和感を覚えたのです。
 受賞したことが新聞に載り、友人から沢山のメールをもらいました。記事の中に小説ゼミに通ったことも出ていたので、「努力したんですね」と書いてありました。ここでも「努力」という言葉に反応しました。
 
 昨日、朝ドラ『エール』を見ていて、ハッとしたのです。
 主人公の裕一は、何の取り柄もないみそっかすと思われていました。けれど、どうやら音楽の才能があるようです。担任の先生が言います。
「人よりほんの少し努力するのが辛くなくて、ほんの少し簡単にできること。それがきみの得意なことだ。それが見つかれば、しがみつけ。必ず道は拓く」

 それを聞いて、私は小学校で6年生に読み聞かせしていた本を思い出しました。『雪の写真家ベントレー』という本です。
 ベントレーは、今から100年ほど昔、アメリカに実在した人物です。
 豪雪地帯のジェリコに暮らし、農作業の傍ら、雪の結晶の写真を撮り続けました。彼の3000点の写真を収めた『Snow Crystals』は、雪の研究の礎となり、後進の研究者、芸術家に多大な影響を与えました。
 彼は、名誉が欲しくて続けていたのではありません。雪の結晶の美しさに魅せられ、それを写真に残したかったのです。好きなことを貫き通したのでした。

 私が花の名前を覚えたことも、小説のゼミに通ったことも、私には努力や勉強をした感覚はありません。好きなことにのめり込んだ感じです。生活には直結しないし、しなくても何の支障もありません。いわば「オタクさん」なのです。好きなアイドルのことをとことん知り尽くしたいという欲求と同じです。

 「好きなこと」が見つかり、それにまい進できるのは幸せなことです。
 確実に、人生が豊かになります。
 小説を書くことが好きだと見つけたみなさんは、それだけで幸せです。
 石にしがみついてでも、食らいついていきましょう。
 「思う一念、岩をも通す」です。
 いつか必ず、道は拓くと信じて。

 そして咲き誇る桜を思い出しましょう。
 イメージは大事です。
 サクラサク……。
 人生の春は必ず来ます。

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