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子どもたちに残すなら いつもご機嫌な奴の真理

悩みを抱える若者が、
絶対に知っておくべきご機嫌の真理がある。

『スマイルノート』

あなたは、最近笑っているだろうか。

誰が始めたかわからないが、
スマイルノートというものが流行っている。
一枚の紙なのだが、何か指示が書いてあるらしい。

時折、授業中に
誰かが唐突に立ち上がり、笑い出す。
ゲラゲラと周りも笑い出す。

最終的に、小柳先生が、
うるさい!廊下に立っとれ!
と、つまみ出す。
それがお決まりのパターンだった。

体罰だ!と言われかねないのだが、
スマイルノートでつまみ出されることは
もはや暗黙の了解となっていた。

さて、そのスマイルノートだが、
はじめてあなたにも回ってきた。

その日は、朝から冷たい土砂降りで、
靴下まで濡れたので、
クラス中が体操服を着ていた。

あなたは、
つい昨日、体操服を持ち帰ったばかりで、
濡れたままの服で授業を受けることになった。
その上、
朝から、母親から小言を言われて
イライラしていたので、気分は最悪だった。

色白の可愛い遠山さんが、
ずぶ濡れのあなたを見て、
いい香りのハンドタオルを渡してくれたが、
タオルがぐっしょり濡れただけで、
何の役にも立たなかった。

移動教室から戻ると、
あなたの机の上に一枚の紙が置いてある。

スマイルノートだと、すぐに分かったが、
むしゃくしゃしていたので、
紙を丸めて窓から投げ捨てた。

スマイルノートを捨てたのは、
あなたが初めてだ。
皆がざわざわしはじめた。

なんだよ。
どうせ佐々木達の仕業だろ。
あなたは机に突っ伏した。

授業中、
突然、クラスメートの半分が立ち上がった。
よく分からない、という顔をしながら、
次々に皆立ち上がった。
あなたも驚いて、一緒に立ち上がる。

黒板の上に、見覚えのある紙があった。
先生は気がついていないようだ。

と、それぞれが、笑い出す。
最初は皆、下を向いてクスクスと笑っていた。

たまにフヒッっと、声が漏れる。

声を我慢しようとしたのか、
可憐な遠山さんが、
フゴッと鼻を鳴らした。

クスクス フヒッ クスクス フゴッ
フガッ ムフッ クスクス

全員が、声を出すまいと
必死に笑いをこらえているのが可笑しくて、
僕もつい、ブッファッと笑い出す。

その声を契機に、全員がゲラゲラ笑い出した。 

結局、
小柳先生が神妙な顔をして、
お前ら全員グラウンド30周じゃ!
と叫んだことで、
全員がグラウンドをゲラゲラ笑いながら
走る事になった。

戻ってくる途中で、
あなたが落としたスマイルノートを見つけた。
それを拾うと、ポケットにつっこんだ。

席について、ノートを開く。

スマイルノートには、こう書いてあった。

お前の機嫌、はよ直せ。
クラスの空気が困っとるぞ。
授業中に、笑い出せ。
By 小柳



実は、自分の機嫌は、誰にもとれない。
自分でゴキゲンな状態に持っていこう。
とりあえず、立ち上がって笑いだせ。

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