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組織が自分で変容するために何ができるか:組織変革のためのプロセスファシリテーション
組織変革は組織が自分で変わろうとする活動だ
私は人と組織に関わるコンサルティングファーム株式会社MIMIGURIに所属して日々組織の課題に関わっている
様々な組織に関わる中で、組織変革というのは組織が自分で変わろうとする活動だと日々感じる。外部の人間が一足飛びに答えを出すことはできない、一緒に考え悩みながら変化のための苦楽を共にし、知恵を絞り、愚直に行動していくしかない
組織の主体者である人が、自ら組織を変えようとする活動を支援したいと思っている。そのプロセスは成果と学びが渾然一体となった活動になると経験から実感しており、プロセスファシリテーションと呼んで探究している
組織変革の立役者
組織が変わろうとする時、組織内でその活動を始めるチームが組成されることが多い。この記事ではそれを「変革の推進チーム」と呼ぶ
変革の推進チームの活動は、自身が変革を推進する主体的な存在であるという側面と、自組織の外部的な存在として変革を支援する客観的な存在であるという二面性を持っている
推進チームは組織の内部にいながらにして、組織を変革するという主体と客体が混在した存在となり、その立場ゆえに、アンビバレントな感情を抱くことも多く、精神的にタフな状況も発生する
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変革の推進チームは、そのような支援活動の基本的な技術や経験を持っていない事も多い。また、技術的なサポートと共に、相互にケアできる共同体推進のサポートも必要となる。MIMIGURIではその前提を持ち、共にプロジェクトを組成し実行している
組織変革のための2つのプロセス
組織変革のプロセスを考えるために「どのように変化していくか」「いかに変化を起こすか」という2つの問いを考える
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そしてそれぞれの問いについて、組織が変容する「サクセス」のプロセスと、それを支援する「エグゼキューション」のプロセスとして設計していく
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組織が活動の中で変容するプロセスと、変化を起こすための実行支援プロセスは相互に影響しあう関係になっていて、変革支援チームは変化を起こす働きかけを行いながら、組織の今の状態に眼差しを向け適切な支援が行えるように、自分たちの支援活動を修繕しつづける必要がある
組織の活動を仮説立てるサクセスプロセス
組織変革のサクセスプロセスは、組織が変わっていく一連のストーリーであり、誰が、いつ、どうなるかを仮説立て、フェーズとしてマッピングされたものとして表現される
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組織のあるべき姿のビジョンと、そのプロセスにどのような人がどのように関わるかの仮説設計が必要となる
この領域は組織開発に知識や経験のあるコンサルタントや、協働プロセスの技術を持つサービスデザイナーやファシリテーターの知見が役に立つ
具体化する2つの目標
フェーズにはそれぞれ、状態目標として、成果目標と学習目標を設定すると良い
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①成果目標:成果目標は、組織変革に関わるステークホルダーの活動が、組織の変革のために生み出す所産、達成する目標等を書くと良い。所産は、ビジョンやミッション、ロードマップ、それを通して何を見通したいのかを描く
②学習目標:学習目標は、その活動の中で組織に新しい関係性が生まれ、その経験から組織に新たな学びが生み出される。目指すべき状態を描く
支援アクションを検討するエグゼキューションプロセス
エグゼキューションプロセスは、サクセスプロセスを実行するための支援プロセスを記述するもので、組織変革の動きを起こすための変革支援チームが誰が、いつ、何をするか。についての計画を立て、チームが足を止めず試行錯誤し続けられる活動基盤となる
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アクションプランを具体化する
このプロセスは変革支援チームが実行する施策と、それを準備・行動・検証するためのタスクと、より具体的なアクションで構成される
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エグゼギューションプロセスはタスク化が可能な粒度まで具体化されている事が好ましい。そうすればチームの力で推進が可能だ
どの程度具体化するかは、リソースや規模によって検討が必要だが、詳細化することでチームでの実行が可能となる。初期の計画をなぞるのではなく、プロセスのダイナミズムを掴み、創意工夫しながら修繕し続ける活動をルーティン化していく
この分野はプロジェクトマネジメントやアジャイルの知見が非常に重要になる
2つのプロセスをみたてながらことを成していく
変革支援チームは組織がサクセスプロセスを歩むためにあらゆる方法で支援をする
まずはサクセスプロセスを仮説立て、その実現支援のためのエグゼギューションプロセスを描く。サクセスプロセスの仮説がないと、支援施策が目的化してしまい、変容につながらない
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また、サクセスプロセスは線形プロセスを成さない。活動の中で学びが生まれ組織が発達する中で思ってもいなかった可能性が生まれる事もある。というより、サクセスプロセスに想定外の可能性が生まれることこそが組織の変容のバロメーターとも言える
現在このみたてを行うためのフレームワークと、実行プロセスを形式知化している。実践で有効性が検証できたら改めてまとめて公開したい
今考えうるサクセスプロセスを仮説立て、その実現のためのプロセスを精緻化し、それを実行する中でまた組織の変容のプロセスを修繕していく
どんな大きな展望があれど、まずは水面に小石を投げ込んで、はじめの小さな波紋を生み出すところからはじめなくてはいけない
その小さな波が消えないように、組織が変わるプロセスと、それを支援するプロセスの連鎖を起こしつづけ、変革の波がだんだん大きなうねりになっていくプロセスをつくっていくことが重要だと考えている