おとうさん!おもしろいおはなしして!をデザインとファシリテーションでなんとかした話
6歳の親戚の子と我が子と私の3人で一緒にお風呂に入る事がある
私が2人をお風呂に入れると、私以外の両親の負担が減るので大変喜んでもらえるし、子供とお風呂に入る時期も限られるからできるだけこの時間も大切にしたいと思っている
ただ、2人とも遊びに熱が入ってくるとなかなかお風呂に入ってくれない。そういう時には「お風呂でおはなしをしよう」と言うと興味を示してくれる
何の話をするんだ?と不思議がるので、「どんなおはなしをしてほしい?」「こわいおはなし?」「たのしいおはなし?」「ふしぎなおはなし?」と聞くとだいたい決まって「おもしろいおはなしをして!!」となる
こうするとかならず2人とも嬉々としてお風呂に向かってくれるからこの手をよく使うのだけど、私はおもしろいはなしをするのが苦手だ(というよりウケるはなし全般の引き出しがない)
完全に自分がまいたたねなのだけど、言ったからにはおもしろい話をしなければならない
ここでエンターテイナーとしての信頼を無くすと次にお風呂に入ってもらうための手が尽きる。大人の都合の良いタイミングで子供にお風呂に入ってもらうというのは本当に難しい事なのだ
おはなしのレパートリーが無いので、即興でつくるしかないな、と考えた
「じゃあこのおもしろいおはなしって誰が出てくる?」と問いかけると「ねこ!」「うさぎ!」「イカ!」「タコ!」と口々に思いついた登場人物?を挙げてくれる
演者と観客という関係性が取り払われて、一緒にものがたりをつくるという図式になる
「ねこはどんな色?」「どんな音が鳴る鈴をつけてる?」「他に何か特徴は?」などとディティールを聞いていくとさらに活気付く
赤いリボンをつけて、金色の鈴をつけた、片目の青い猫が主人公になった。なかなかキャラが立っていていい感じだ
「あとね、その猫の後ろに1万匹の猫がいる!」
1万匹?それはたいへんなことになってきた、「その1万匹の猫は全部黒猫?」と聞く
「半分は黒猫で、半分は白猫、5匹だけ三毛猫がいる」と子供たち。その三毛猫がキーになる気がする、、
うさぎとイカとタコについても一通り盛り上がって、登場するキャラクターが決まったところで、次のフェーズに入る
「じゃあその猫たちはどこにいるの?」と聞く、舞台設定だ
「少し村に住んでいて、あとは森にいる!」とのこと。何故森にいるのか?疑問が湧くがぐっとこらえる、なんとなくここで理由を聞くのは野暮な気がする
「村の名前は?」と少し名付けの工程を入れてみる。しばらく2人で話し合って、ハロウィン村という名前に決まった。季節感が出ている
「じゃあハロウィン村から猫はどこに旅をする?」と聞くと「大魔王のお城!」とのこと。すでになんらかのストーリーが2人の中にできてきている気配がする
よし!じゃあ、くろねことうさぎとイカとタコがハロウィン村から、森を抜けて大魔王の城にいくって感じだね。と設定確認をする
「そうそう!はやくやろう!」と子供たち
ちょっともったいつけた口調でものがたりをはじめる「ここは、、ハロウィン村、、時は夜、、」
「違う!!お昼時!!」と子供達、そうだったのか
「ここは、、ハロウィン村、、太陽が高く登って暖かい時間、、」「一匹の猫とウサギが遊んでいます、、」
ここで子供たちに目線を向けてキューを投げる「はい猫さん自己紹介!」
そうすると子供たちはそれぞれのキャラクターを演じてさっき言ってなかったような設定を盛り込んで自己紹介をはじめて2人で即興で会話をしたりする
ある程度村の場面が満足いったところで「二匹は森に向かいました」とナレーションを入れる
イカとタコのことをすっかり忘れているけど別に気にしない
そのまま二匹は森で1万匹の猫と出会い、すっかり暗くなった森を抜けて、大魔王の城に行き(私が大魔王をした)、1万匹の猫を差し向けることで大魔王を窮地に追い込む
一度大魔王の幼少期の回想シーンを私が演じて、大魔王にも相応の事情があったことが示唆された上で、ちゃんと猫とうさぎとイカとタコと大魔王が和解した(ここでイカとタコが出てきた)
ふたりともとても満足したようで、「またおふろでおもしろいおはなししよう!」と言ってくれた
私はおもしろい話を持ち合わせていなかったが、サービスデザイナーとしての共創的なものづくりの技術や、ファシリテーターとして他者の発想の支援してきた経験を総動員して工夫することでなんとかした
おもしろいはなしを求めている子供に、おもしろいはなしを提供するのももちろんいいけど、一緒におもしろはなしをつくる経験を提供するというのもなかなかいいものだった
共に造りながら学ぶ経験が子育てでもできて、それを楽しんでもらえてうれしい経験だった。もっとやっていきたい