プロジェクトファシリテーションの探究#1:プロジェクトワークショップ
プロジェクトファシリテーションの探究
前回、プロジェクトファシリテーションの探究について、まずその前提になる世界観を書いてみてた
あらためて、プロジェクトファシリテーションの探究の今の所の問いは以下のようなものだ
プロジェクトファシリテーションの問い
私たちはいかに、
早い速度⇄高い品質
緊張と集中⇄安心と信頼
論理的⇄創造的
コトに向かう⇄人に向き合う
抽象的⇄具体的
わかる⇄わからない
問題の解決⇆問題の発見
を両立または行き来し続ける事ができるか?(または、状況により適切なバランスを見出し続けられるか)
有限な活動の可能性
PMBOKによるとプロジェクトとは以下の定義とされている
有期性のあるしごとには、数々の制約が生まれる。ここにプロジェクトの醍醐味がある
多様で変化の激しい今の時代において、有限性をポジティブに捉え、そこで生まれた葛藤をファシリテートするためにはどうしたら良いか
不確実性が高く、いままで誰もやったことのないことを達成するために、要件すらも問い直しながら前進するようなプロジェクトに挑む時に、有限性は誰かが与えてくれるものではない
有限性を他者から押し付けられたものとせず、自分たちが創造したゲームルールとしてしまえればいい
そのためには、不定形で抽象的な「プロジェクト」というものを自分たちの手で掴み、取り扱えるようにしたい
イメージからはじめよう
本来ならプロジェクトファシリテーションというものの定義を説明してから、具体的なメソッドの話ができれば良いのだけど、残念ながらこの記事は探究ノートであるから、いくつかの断片的な実践や考察を並べて、輪郭を徐々に浮かび上がらせるような書き方しかできない
そのうえで、その輪郭を少しでも先に見出しておくために、私が実践と探究の末に実現したい状態について、書いておくのが良いと思う
まだ厳密に定義しきれていないものなので、少し読んでいるあなたのイマジネーションをお借りして話を進めさせてほしい
プロジェクトワークショップ
ここに一つの部屋がある
広さはあなたが好きなサイズで差し支えないが、できれば客人を3人ぐらいは招くことができて、何をするにしても使いたいものに少し移動すれば手が届くような広さが好ましい
窓があったほうがいいかもしれない、遠くの山が見える大きな窓でもいいし、少し気分を変えたい時に空気を入れ替えられる小窓でも、空の明るさで時間の経過を知れるような天窓でもいい
この部屋で何をするか?ゆったりとした休暇を過ごしてもかまわないが、ここをプロジェクトのための部屋だと思ってみてほしい
プロジェクトのための工房
プロジェクトというものは実態が無い
スケジュールや工程表、数々の定量的・定性的なデータでプロジェクトの一側面が表現されることはあっても、それそのものがプロジェクトを表してはいない
一番わかりやすいプロジェクトのあり方は「人」かもしれない
特定のビジョンを持つリーダーがプロジェクトの体現者としていてくれれば、これほど心強いことはない
しかし、特定の人物を中心に据えることは、プロジェクトの限界を個人の能力の範囲にとどめてしまう。1人の人間が見られる範囲は限られる、その人が体調を崩すこともあるだろうし、人が入れ替わることもある
プロジェクトのコアとなるものは分散しているのが望ましい、人・チーム・成果物・しくみ等それぞれにプロジェクトのらしさを込めていくことが良い方法のように思う
プロジェクトのヒト・モノ・コトをバランスよくデザインの対象にしていくためにどうしたら良いだろうか、今のところ、環境へのアプローチが良いと考えている
プロジェクトの環境を工房というアナロジーで捉えて考えていきたい
「ワークショップ」とは工房という意味である。私が尊敬するデザイナー柳宗理は「デザイン」で以下のように書いている
複数人で協業し、持続的にプロジェクトを進める為に、そこに関わる人たちでプロジェクトを手に取り操作できるようにし、それぞれが工夫できるような環境を整えていけるようにしたい
プロジェクトの工房に何があるか
この工房には他者と協業しながらものごとを前に進めるための道具が揃っている
テーブルの広さは?椅子の数は?
たくさんの資料を収める棚があるといいかもしれない。ディスカッションのためのホワイトボード、アイデアを形にするための工具や画材、1人で集中するための小さな机。お気に入りの映画のポスターや小腹が空いた時につまめるスナックを入れるための箱も欲しい
あなたと私は、プロジェクトファシリテーターとして、この部屋に訪れるチームメイトが安心して、創造的なプロジェクトに取り組めるように、この部屋を管理・修繕していく
次回以降でプロジェクトの工房の壁に何を貼っておくのか、テーブルに何を広げるのか、を書いてみようと思う
プロジェクトの工房に誰がくるのか
はじめに書いたとおり、プロジェクトは有限の活動である
プロジェクトに参加する人は通常だんだん増えていき、時に入れ替わり、最後には解散する
そのものがたりの中でプロジェクトの工房に出入りする人がどんな役割で、どんなリーダーシップを発揮していくのか
またその人たちがプロジェクトの工房をどのように活用して、自分の創造性を発揮する環境としてみずから作り変えていくのかを考えていきたい
一番大切なのは、プロジェクトの工房を作ることが目的ではなく、豊かな経験を育む環境をつくることが重要であるということだ
次回以降で、プロジェクトに参加する人同士の関係性、また人と環境の関係性について書きたいと思う
これには活動としての「ワークショップ」の技術が参考になるだろう
プロジェクトの工房で何をするのか
いつか実際にプロジェクトの工房をつくることが夢ではある
とはいえ、実際の現場では複数のプロジェクトが並行し、期間もバラバラで、オンラインでのやりとりも日常になっている
工房をアナロジーとして、オンライン・オフライン、アナログ・デジタルを組み合わせて対応できるものとして考えていきたい
プロジェクトの工房で行うことは情報を集め、仮説を立て、アイデアを出し、検証し、ものをつくるような継続的で期限のあるプロセスだ
大きな問題を具体的で対応可能な現実問題としてルールメイクし、プロジェクトの主体者自身がプロジェクトとして立ち上げ価値につなげる
ここで行われる活動は、「複数人で思考し、試行する」と言って良いように思う
「複数人で試行する」事に関してはサービスデザインメソドロジーが有効だと思っている。不確実性の高いプロジェクトにおいて、特に有効なメソッドをピックアップしてまとめたいと思う
そして「複数人で思考」すること、これが非常に難しいと考えている
こちらは、マシュー・リップマンの「多元的思考」をいかにしごとの中で実践するか?という切り口で考えてみたい
また、そこからプロジェクトのモードについても考察しようと思う
それぞれの具体的な考察については以後の記事にする
まだまだ、探索の入り口ではあるが、次回からプロジェクトの工房をつくりながら考えを進めていく