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野良サービスデザインの実践

DesignShip2020に登壇しました。

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https://design-ship.jp/session

Public Speakersに応募して採択されました。地方のデザイナーとして話す機会が持てる事は大変嬉しいので、地方でのデザインプロジェクトでの私の気づきや、デザインコミュニティに問いを投げかけられるような内容にしたいと思いました。

地方で地域に向き合って活動しているデザイナーへのエールのつもりで書いています。

概要

新潟のとある街の未来を、地元の事業者と一緒に考えるプロジェクトを中心に、人々が創造性を発揮するための体験作りから、アウトプットまでのプロセスをお話します。
様々なステークホルダーが関わるプロジェクトの中で、デザイナーが担う役割や提供できる視点について実践知を共有します。
様々な専門家と協力しながら、リサーチ・視覚化・情報整理やファシリテーション、時に動画制作まで、デザイナーとしての専門性を総動員して挑んだプロジェクトでの葛藤と経験をお話します。
日本の地方における生活に密着したプロジェクトでのサービスデザインの一つの実践の形をお伝えできたらと思います。

野良サービスデザインの実践

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ごあいさつ

こんにちは、はじめまして、私は明間と言います。
新潟でデザイナーをしています。

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今回は野良サービスデザインの実践と題して、お話をします。
地方のデザイナーとして私がこのような大きな舞台で、話せる事柄はそれほど多くないかもしれません。

しかしこう考えたらと思いました。

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日本は大きな都市以外はすべてが地方です。

私のような地方で活動しているデザイナーの言葉も、もしかしたら日本の大多数のデザイナーのみなさんや、デザインを仕事にしたいと思っている学生のみなさんに届ける価値があるかもしれない。そう思ってこの機会に応募しました。

短い時間ではありますが、少しでも日本のデザインコミュニティに私なりの視点や知見を共有できればと思っています。

にしかんローカルマニュフェストという取り組み

新潟のとある海沿いの町が今回の舞台です。

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海があり、山があり、田んぼがある。山沿いに寄り添うように温泉街がある。そんな街です。私にとっては特別な町ですが、日本中にある景色でもあります。

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この街には様々な人たちが住んで、働き、日々の生活と商いを営んでいます。

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「にしかんローカルマニュフェスト」というプロジェクトは、この地に住むこの街で事業を営む人たちで、自分たちの地域の魅力を再確認しながら、この土地で豊かな暮らしを続けるために、将来への展望の目線を合わせるための取り組みです。

地域の取り組みをまとめあげながら、未来につなげるために、リサーチやワークを行いました。

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プロセスをシンプルにまとめると、地域事業者の方々が今に向き合い、未来への展望を紡いでいくフェーズと、言葉としてまとめて、外に出していくフェーズで成り立っています。

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2回のワークの中でディスカッションしながらそれぞれの意見を共有し合い、最後には10の言葉としてまとめています。

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私がかかわったのは、そんな地域の事業者の方々と共に言葉を紡ぐためのプロセスの設計と、その他なんでも、という感じです。

デザイナーとしての自分

少しだけ、私のデザイナーとしてのキャリアについてお話させてください。

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私は大学で写真・グラフィックを学び、社会人になってはじめの3年は、東京で広告のデザインに携わりました。

東京で広告のデザインといっても、私がやっていたのは、大きな代理店の下で日々朝から晩までデザインカンプを作り続ける日々。とても大変な現場でしたが、この時の物づくりに向き合い続ける日々で多くの事を学びました。

新潟に帰ってからは、地元企業のWebデザイン、ローカルブランディングを転々としながら、今の会社に入ります。

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少しづつデザインの領域を切り替えながら、紆余曲折して、問題解決の根本に携わるために、今はサービスデザイナーとして働いています。

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行政での政策立案のデザイン思考プロジェクト、大学でのUXデザインの講義、首都圏・新潟問わずのユーザー目線のプロジェクトを行っています。

自分のスタンス

私がデザイナーとして大切にしている事は、視点と思考の提供です。

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物事を視覚化する事によって、プロジェクトに関わる人に共通の視点を提供します。ワークショプ・ファシリテーションによって、思考のフレームを提供する事も得意としています。

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このプロジェクトにおいて、私の担った役割は、厳密に言えばこのような普段のサービスデザインの仕事とは全く異なるものだったと思います。

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しかし、使うメソッドは違っていても、私の心にはサービスデザイナーとしてのマインドセットがいつもありました。
私は「リアルであること」というマインドセットが一番気に入っています。
しかしデザイナーにとって、このリアルな状況でデザインすると言う事が、とても難しい事だと感じています。
今回のプロジェクトの中で、私はこの「リアルであること」と言うことについてとても考えていたと思います。

私がこのプロジェクトで行った事は、プロジェクトに関わる人に、様々なアウトプットでプロジェクトを前進させる事でした。

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専門家とのプロセス設計、ワークショップのファシリテーション、現地でのリサーチ、ビジュアルアウトプットのディレクション、時には東京の展示の設計、設営も行いました。

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思い出深いのは、ワークショップが終わったその日に、地元の旅館で徹夜して、記録動画を作った事です。結婚式の記録がその日のエンドロールで流れるサービスがありますが、その真似をしてみました。大変でしたが、皆さんのモチベーションに貢献できたと思います。

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時に住民説明会に参加したり、様々な人と出会い、いろいろ意見に触れ、衝突も感動もありました。これはオフィスでマッキントッシュに向かってものを作っていた時代には経験し得ない事だったと思います。

人と人との関わりの中に身を置きながら、デザインを行う経験は、とても身体的だと感じています。
野外に出て、その場所を耕すような試みに参加する経験はデザイナーとしてとても新鮮なものでした。

同時に、デザイナーとして関わるからこその限界も感じていたように思います。

プロジェクトに関わる人々

ワークショップに参加した事業者の方々は、本当に様々な方々でした。

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プロジェクト側に関わるメンバーも様々な人がいました。未来を見出すために、ビジョン等の専門家がおり、プロジェクトの中核には地域に移住してプランナーとして活動している人がいました。

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未来への視点、住んでいる人の視点、大きな絵を描く人、その中でデザイナーとしての私はどう振る舞うのか、とても難しいと感じていました。

デザイナーの主体性について

私がデザイナーとして、地域のみなさんと、プロジェクトメンバーの間で奔走するなかで、考えていた事がありました。

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それはデザイナーの主体性についてです。

そのきっかけとなった人います。プロジェクトの中で街とのコミュニケーションの中核をになった2人です。

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プロジェクトがはじまる前から、東京からこの街に移住して活動してきた小倉さん。地域に飲食店を構え、今やるべき事を探し、プロジェクトの始まる前から、終わった後まで、人を繋ぎ続けた山倉さん。
この地に住んで、自分自身が課題と向き合い、町の未来を作る一部となりつづける中で、今回のプロジェクトを生み出してきた人たちです。

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からだごと地域に身を置く事で、一人の人間として状況を変えようとしてきた人たちがいて、このプロジェクトははじまっています。
この人達の姿勢は、私にデザイナーがデザイナーであるがために、欠けがちなものを教えてくれたように思います。

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それは、そこにいる人が、そこにある問題に取り組むという、当たり前ながらに強い説得力とパワーです。
デザイナーは物事を客観的に捉える事がとても上手だと思います。
それは、問題を捉え、道筋を示すために欠かすことができない素養です。
しかし、当事者だからこそできる事があるというのもまた事実です。
私はこのプロジェクトでこの人たちに併走しながら、自分はデザイナーとしてのポジションを取り続けて、問題から距離を取っているのではないかとずっと考えていました。

デザイナーの当事者性

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デザイナーが持てる主体性とはどんなものでしょうか。
時にデザイナーというポジションを捨てて、当事者として問題に向き合う事がこれからは必要となると感じています。
多様性が叫ばれ変化の早い今のような時代だからこそ、ものごとの要点を掴むためには、大局の流れだけでなく、
いま、ここで起こっている事を掴み、多様性の中に飛び込む必要があるように感じています。

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今回のプロジェクトでは、身体性を持って客観視をするという一つの矛盾を、様々な視点を持つプロジェクトチームで成し遂げる事ができたと感じています。
もし、私がその取り組みに貢献できていたとすれば、これからも私は人々の営みに寄り添った技術として、デザインを仕事にし続ける事ができると思います。

デザイナーのつながり

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すでに地域に主体性に関わり、活動しているデザイナーが各地に沢山いる事は知っています。
私自身、地域で活動する先輩方をすぐ隣で見ながら経験を積んできました。
ただ、デザイナー同士の繋がりのあり方は、変わっていく必要があるのかもと思っています。

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私が今回このDesignShipで話したいと思ったのも、地方・都市部というポジションを超えた、実践知の共有が必要だと考えたからです。
日本全国にある、多様な問題に向き合うデザイナーの経験が共有され、デザインの研究に活かされる事が社会に良い影響を与えると思っています。

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地球の裏側で起きている問題に、このにしかんプロジェクトで起こった変化が役に立つ事だってあるかもしれません。

デザインに多様性をもたらす事ができるのは、各地で当事者として頑張っている、デザイナーなのかもしれないと思っています。

デザイナーへデザイナー意外の人へ

今日これを読んでくれている、全国の「土着のデザイナー」の皆さん。是非、経験を共有しましょう。

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また、全国のデザイナーではない皆さん。あなたのすぐ近くにデザイナーは必ずいると思います。
私たちは一見ちょっととっつきづらい人種かもしれません。
でも、仲間に入れさえすれば、思いもよらない方法で道を示すパートナーになれると思います。

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今の時代ほど、デザイナーの勇気が試される時代は無いと思います。デザインは期待され、デザイナーの責任は増しています。私はこのプロジェクトから、いま、ここにいるひとが、いま、ここで起きている問題に取り組むパワーを知りました。
それは、当事者性を持つからこそできる、人と人との間を繋ぐような営みです。

デザイナーにはそれができると思っています。

人の中に人として飛び込む勇気と、学び続ける高い技術があればこそです。

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野良サービスデザインという言葉に込めたのは、田舎のデザインという意味ではありません。

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それは野外のデザインとも言い換えられます。
野外にでて、地域の土や風に触れ、人の営みの中で模索する。
これは東京だろうと新潟だろうと、変わらず大切なことだと思います。
私自身まだまだこれからです。

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野外はすぐ近くにあります。
デスクから離れ、ビルから出て、人と会う。

日本全国でそこに住むデザイナーが、そこにある問題に主体的に向き合う事が、日本全体に良い影響を及ぼすと私は思っています。

ありがとうございました。

まとめ

グラフィックレコーディングをして頂きました!

デザシプ明間さん

まとめ記事でも感想を頂いてます。嬉しい!!


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