6度のクラシック
この秋、コンサートに6度足を運んだ。
人生最高のハイペースだ。妻が公演を見つけ、毎回誘ってくれたおかげである。
コンソート・ソング、古楽オーケストラ、グリー・クラブ、ヨハネ受難曲、フランス後期ロマン派歌曲、バロック・オペラ。
コロナウイルス禍が明けて、アーティストの公演活動が再開されたのは本当に喜ばしい。
大久保、五反田、荻窪、初台、浦安、王子と、東京のあちらこちらに出向いた。
普段よりもドレスアップして劇場に出かけ、帰りにご飯を食べながら(ぼくはワインかビールを飲みながら)お店のテーブルで感想を話すのは、本当に素敵な時間だった。
ぼくはクラシック演奏の技術的評価や楽曲解釈の評価はもちろんできないので、好き嫌いくらいしか感想を持ち得ないけれど、楽器の「生演奏」を聴けるという時点でじつはもう十分に満足していた。
自宅にヴィンテージのスピーカーを揃えてレコードを聴く程度には音楽好きであるものの、やはり生演奏にはまるで及ばないと改めて思い知った。
クラシックコンサートも一種の芸事の見世物とするならば、いかに心地よく予想を裏切れるかなのだと思う。期待値コントロールの問題でもある。
たとえば、古楽の楽器は現代楽器に比べて華奢な音を奏でるので、会場で聴くと事前の想定より2割ほど音が小さい。いささか心許なく感じる。しかし、耳をチューニングして「その会場の音」に慣れてくると、まるで気にならなくなる。これもまた「生演奏」ならではの発見(驚き)と言える。(少なくともレコード鑑賞ではまず気づくことのない観点だ)
あるいは、歌曲を歌うソプラノ歌手の第一声は「このトーンでいく」という宣言でもあるので、「ああそうきたか」という発見(喜び)がある。
来年も、コンサートにはたくさん足を運ぶ予定を立てている。
今から楽しみで仕方ない。