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持てる力をすべて出すから、人柄が出る


週末にピアノ三重奏のコンサートを聴きに行った。
ピアノ、バイオリン、フルートという女性3人の編成で、それぞれの奏者は各楽器の後進指導にあたっていることもあり、ベテランらしい息の合った安定感のある演奏を楽しめた。

帰り道では、いつものように妻と感想を伝えあった。
妻は声楽科を出ているので、音楽への目線が細やかだった。
「バイオリン奏者は、ふだん生徒への頭出しに慣れているのか弾き始めが1拍早い」
「ピアノがレガートでずっと途切れず、粘り強い演奏にグッときた。きっと他の2人は演奏中に頼りにしていると思う」
「演奏には、持てる力のすべてを発揮する必要があるからこそ、人柄が出る。ピアニストは優しい音色でありながら芯がしっかりしている」

ぼくはもちろんそこまで聴く耳を到底持ち合わせてはいないけれど、ピアノが楽曲を慎み深く支えていることには気づいていた。
名曲「サリー・ガーデン」を聴いたとき、冒頭の主旋律をまずフルートが独奏し、続いて同じ旋律をバイオリンが交代して独奏していた。ソロパートを繋ぐ見せ場のようにしていたから、次はピアノも独奏するのかと思っていたら、そうではなかった。バイオリンがそのまま旋律を続けて弾くのに合わせて、寄り添うように伴奏に入った。その最初のタッチがあまりに優しくて、思わず泣きそうになった。そうか、ここで慎ましやかにサポートに回るのだなと、彼女の人柄が偲ばれるような気がした。

ぼくがピアノの音色がいちばん好きということが大きいのだけれど、ピアノなしの楽曲では、音の核心に欠ける気がしてどこか物足りなさを感じてしまった。(クラシック音楽には疎くてよく判らないものの、バイオリンとフルートだけで二重奏にするのは少し難しいのではないだろうか)

「それにしても、コンサートに私のパートナーを連れていける日がくるなんて思わなかったわ!」と妻は言う。
「コンサートは大歓迎だよ。また行こう」とぼくは笑って言った。



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