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失敗してもナイストライ


嬉しい話を聞いた。
学生時代の旧友が長く勤めた会社を辞め、古い知人と二人で起業するという。知人が手がけていた仕事が軌道に乗り、忙しくて手が回らなくなったので、合流する形で二人で出資して法人成りするそうだ。半年前から準備を進めていた話は聞いていたので、ついに決断を下したのかと喜ばしくなった。

ぼくも十年前にまったく同じ流れで独立し、今は個人事業主として働いているので、一応の先達として意見を求められた。もちろん大上段で言えることなど何もないのだけど、一つのことだけ伝えた。
たとえどんな結果が訪れようとも、自分で決めて踏み出したこと自体はナイストライ、と。

ぼくは仕事柄、スタートアップと関わる機会も多いけれど、長く続いている事例のほうが稀である。長く続いている会社でも、危機的状況は必ず経験している。そこを乗り越えられるかは、運の要素も大きいように感じる。
それでも、運悪く「失敗」してしまったスタートアップの人びとも、その後のキャリアや働き方を見ると、一段とパワーアップしているように映る。つまり起業したことは全然無駄ではないし、乗り越えている時点で「失敗」でもない。実際彼らに「もし起業前に戻れるなら、元の会社に留まっていたいか」と尋ねれば、「とんでもない」と答えるだろう。(そうでないなら、起業などすべきではない)

ぼくも、自慢ではないが、人生は失敗つづきだ。
ライフステージの節目節目で、ことごとく失敗している。特に初めてトライすることには、ものの見事にぜんぶ失敗している。物事の難解さや複雑さを十全に理解するのに、ぼくの知力はあまりに限られていた。ただ、失敗したとき、せめて次に活かす教訓を拾うようには努め、次のトライでどうにか帳尻を合わせてきた。
自分が失敗を重ねるたび、他人の失敗について寛容になることができる。これだけでも大きな収穫である。

いま新たな門出を迎える友人に「失敗してもナイストライ!」と声を大にして贈りたい。
あるいは、「ようこそ、こちら側の自由な世界へ!」と両手を開いて言いたい気分もあるかもしれない。


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