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家の「へそ」となるテーブルの三つの条件

梅雨を先取りしたような、あるいは冬の終りどきに戻ったような、冷たい雨が降っている。こんな日はどこへも出かけず仕事ができることでひそかに救われている。
ぼくは毎日、在宅で仕事をしている。一日のほとんどを仕事場で過ごす。(仕事場と称しているが、なんのことはない、食卓で作業をしているにすぎない)

テーブルは一畳ほどの大きさで、複数の書類を平置きできる。手許用のランプが一つ。テーブルの四辺のうち、壁のコーナーに面した二辺には木製の長椅子が沿わせてあり、残りの二辺には一人がけソファとオフィスチェアがそれぞれ据えられている。窓辺の両端に1979年製のタンノイスピーカーがある。ひっきりなしに静かな音楽を流している。
このテーブルで、日がな一日過ごす。仕事も、資料調べも、経費処理も、打ち合わせも、読書も、もちろん食事も、すべてここで行う。食事のときにはラップトップを畳んで脇によけ、ランチョンマットの上に器を並べる。コーヒーを淹れて休息するときは一人がけソファに移動し、オットマンに足を伸ばす。

この家を考えるとき、「家のへそ(中心)」に据えようと、最初に検討した家具だった。
条件は三つ。作業台として十分な広さを備えていること、圧迫感をなくすため通常より低めのサイズであること、天板が厚く安定感を感じられること。生活の全部をどっしり受け止められるような器でありながら、存在として重たすぎないという矛盾したテーブルを探していた。一人でも過ごせるし、来客時には五人くらい囲めるようなおおらかなテーブルを探していた。
当時は会社通勤をしていたので、仕事用途を想定していたわけではなかったけれど、今は在宅仕事に転じたので、よりこのテーブルの重要度が増している。

日が暮れるころ妻からLINEで、職場を出たとの連絡が届く。
晩ごはんは、さつまいもの炊き込みご飯を作ることになった。テーブルの仕事道具を片付け、布巾で水拭きして音楽をかけ換える。


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