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15時の手紙

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ささやかな昨日のできごと。
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#映画感想文

カッコーの巣の上でディーセンシーを考える

1975年製作、アカデミー賞5部門受賞の名作『カッコーの巣の上で』を観た。 ジャック・ニコルソンの“怪演”や、無名時代のダニー・デビートやクリストファー・ロイド(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドク役)を観られたのは貴重な機会だった。 (以下ネタバレ含みます) 舞台は、1963年の精神病院。 ジャック・ニコルソン扮する粗野な男が、刑務所から(精神疾患の詐病で)移送されてくる。そこは強権支配的な婦長が君臨する閉鎖病棟で、ジャックはことあるごとに対立する。 最終的に、ジャ

四半世紀ぶりのグッド・ウィル・ハンティング

細かな内容は忘れていた。 妻が「人生で3本の映画に入る」という映画が『グッド・ウィル・ハンティング』だった。四半世紀前の映画を、久しぶりに見返した。 「大きな事件めいたことは何も起きず、主人公の心の中の変化を2時間かけてていねいに追う映画なの」と妻のいうとおり、心理療法の過程を丹念に描く、少々風変わりな映画とも言えた。 「この映画は“痛み”についての話なの。どの人物にも等しく痛みが描かれていて、どの人物にも共感ポイントがある」と妻がいう。 (以下ネタバレを含みます)

それで君はどう生きるのか

劇場長編としてはほぼ遺作になるのだろうという覚悟とともに、いやむしろ、『風立ちぬ』がフィナーレかと思っていたので「まだもう1作観られるのか」という喜びとともに映画館に出かけた。 宮﨑駿監督、最新作『君たちはどう生きるか』。 だから、冒頭の青い画面にトトロの画が描かれたクレジットの、「©︎スタジオジブリ2023」の文字を見た時点で、早くも感極まりそうだった。ああ、2023年にも新作を出してくれたのだなと。 (以下ネタバレを含みます) この映画は、宮崎監督の集大成として創