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結婚後、配偶者が宗教に入信しました。離婚できますか?反社会的な活動を行う宗教だとしたらどうですか?
結論
ある特定の宗教に入信したというだけでは離婚は難しいでしょう。
また、仮に違法行為などの反社会的な活動を伴うものだったとしても、それだけで離婚が認められる可能性は低いです。
あくまでも具体的な事情を総合的に見て、婚姻を継続し難い重大な事由があるといえることが必要です。
解説
民法770条は、裁判上の離婚が認められる要件を定めています。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
宗教に関することは主に5号との関係で問題となります。
この条項は、「婚姻関係の破綻」などという表現で言い換えられることも多いですが、家族とは何か、夫婦とは何か、どうあるべきかという問題を含んでいます。
これは個人の価値観によって大きく異なるものですので、判断がとても難しい問題ですが、日本の裁判所は、婚姻関係というものにつき、
・協力して日常生活を送る
・自分ばかりでなく相手も尊重する
・何か問題が起きたら話し合って解決するよう努める
・お互いが可能な限り妥協をする
・簡単に離婚することを選ぶのではなく可能な限り関係を維持回復するよう努力する
というような要素があると捉えているように思います(あくまで一定数の判決文を読んだ上でのイメージです)。
こういった要素のうちの全部や一部が失われたり大きく損なわれたりした場合には、離婚を認めます。
信教の自由は個人の尊厳にとって非常に重要な事柄ですが、上記のような結婚観からすると、婚姻関係を語る上では妥協を求められざるを得ないでしょう。
裁判例にも、「国民はすべて信教の自由を有し、このことは夫婦間においても同様であるが、夫婦として共同生活を営む以上、その協力扶助義務との関係から、宗教活動に一定の限度があるのは当然のことと考えられる。」と判示したものがあります。
しかし他方で、配偶者には、そういった信仰に対する理解や尊重が求められます。
そのため、自分の価値観と合わない宗教に入信したというだけでなく、宗教活動やそれに伴う活動により家庭生活が圧迫され危機に瀕し、活動を自粛するよう説得しても全く効果がないなどといった事情がなければ離婚は認められません。
また、犯罪などの違法行為についても、単にそういった行為を行ったというだけでは足りず、それにより夫婦関係にどういった具体的な影響が生じたのか、問題解決のためにお互いどんなことをしてきたのか、などが問題とされます。問題が生じたとしても、それを協力して乗り越えようとするのが夫婦であると考えられるからです。