【相続・遺産分割】先日父が亡くなりました。晩年はもっぱら私が面倒を見ていて、それなりに財産も残してくれましたが、遺言はありません。遠方に疎遠になっている兄弟がいるのですが、今後どんなことに注意が必要でしょうか。【管轄編】
ご家族が亡くなられると、葬儀の手配や役所の手続きなどで悲しんでいる暇もありません。
やっとひと段落ついたと思うと、相続の問題が立ちはだかります。
10ヶ月という相続税納税の期間があるので、悠長には構えていられません。
お父様の生前から家族間で遺産の分割方法について話し合いが出来ていればいいのですが、そうでないご家族の場合、遺言があっても紛争になってしまうことはよくあります。
ご質問のような場合、ご兄弟間で遺産分割の手続きを進めていくことになります。
遺産分割の内容面で注意すべき点も多々ありますが、今回は裁判所の管轄の問題を取り上げます。
遺産分割の調停や審判を求めたい場合、裁判所を利用することになりますが、裁判所には管轄というものがあります。
遺産分割の場合、裁判所の管轄は次のようになっています。
【調停】
「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」(家事事件手続法245条)
「当事者が合意で定める家庭裁判所」(同)
【審判】
「相続が開始した地を管轄する家庭裁判所」(191条)
「当事者が合意で定める家庭裁判所」(66条)
ご質問のような場合、お父様の面倒を見ていたということですから、お父様とご一緒かお近くにお住まいだったものと思われます。
そうすると、審判手続きを利用する場合には負担は少なくて済みますが、話し合いによる解決のためにまずは調停を利用したいという場合には、管轄についての合意が成立しない限り、遠方のご兄弟の住所地を管轄する家庭裁判所で行うことになりますので、移動の手間や交通費などの費用負担が大きくなってしまいます。
そうなると、遺産分割自体を躊躇ってしまう方も多くいらっしゃいます。
しかし、相続税の納税期限は刻一刻と迫ってきますし、現状を放置して事態が好転することはありえません。
事案の内容によっては、管轄権のない裁判所での処理を求めたり、電話会議の利用を申し出たりすることで問題を解決できることもあります。
もちろん、管轄の問題だけではなく、遺産や相続人の範囲、寄与分や特別受益など様々な問題について慎重に検討する必要がありますので、とにかく早めに一度専門家に相談してほしいと思います。