順位に関する表現について
麻雀の順位に「着順」という語を用いることには議論の余地がある。着順とは一般に到着の順序を指すが、麻雀の対戦は共通の決勝線を目指す競走ではない。仮に、対局者の誰かが一定の得点に達した時点で対戦を終了する、という規定が適用された場合でも、当の得点に「到着」したのは対象者だけなのだから、その対戦において到着の「順序」を語ることは不可能である。競走で言えば、1着入線時点での各競走者の位置をそのまま順位に置き換えるようなものだ。それを「着順」とするのは、流石に無理があるだろう。
当然だが、競走では一般に、競走者によって順位決定時点が異なる。上位者の入線後も後続者の勝負は続き、着順は徐々に決定していく。これに対して、麻雀の対戦は全対局者にとって同時に終了し、順位も一斉に決定する。
更に、対戦途中の得点差に基づく「暫定〇着」という表現は、競走の観点から考えれば異様と言わざるを得ない。もし競走の場面で用いるとしたら、その表現は、例えば、競走終了から最終判定までの間に認知されている限りでの着順を意味するかもしれないが、いずれにせよ競走中の状況とは無関係である。この点に鑑みても、麻雀に「着順」という語は相応しくない。
とはいえ、管見の限り、こうした表現から著しい不都合が生じているわけではない。原義はともかく、麻雀において「着順」という語の用法が確立しているならば、寧ろ、単に辞書を引いただけで「誤用だ」と騒ぎ立てる方が早計であろう。ただし、やはり筆者は違和感があるので、今後、麻雀の順位に「着順」という語を用いることは避けようと思う。