【ほめ5】バイタリティ溢れてるよ!
自分の人生を褒めちぎって、恨みも呪いも褒めて浄化するこの企画『根暗のほめ道』第5回でございます。
サラッと前回までのあらすじ。
中学校生活3年目で虐めがきっかけでガチンコの地獄を見た。家にも学校にも、どこにも居場所がない中必死に生き続けた私に光あれ。
地元の最底辺と言われる定時制高校に進学した私。
高校卒業の資格が得られればいいや、という気持ちであった。無理していじめっ子達と同じ高校に進学したりしてあんな苦しい思いを味わうのは御免だった。両親は私が勉強したくなくて逃げたんだと勝手にレッテルを貼ってきたが、そんなことを気にしている場合じゃない。
そう、そんなことを気にしている場合ではないのだ。
高校に進学した私には目標ができた。
美術大学に進学して、自分の絵や物語がどこまで伸びるか試したい。そう強く思うようになった。
地獄から一転、人生まだ終わっていないと思えた中々逞しい私。
平日は放課後アルバイトに精を出し、週末土曜日には電車で40分の街にある美術予備校に通うという日々を始めた。
美術予備校の学費は自分のバイト代で賄った。
それ以外にも進学費用を貯金。自身の小遣いもバイト代から。
中々充実感のある生活を送っていた。
バイトや学校はあまり楽しくなかったけれど、とにかく美術予備校に通う土曜日が楽しみで仕方がなかった。デッサンを描けば描くほど上手くなっていく実感が持てた。実際、当時の私の絵は私史上最高に上手だったと言っても過言ではない。
夏休みや春休みは予備校付近の美術大学が開いている夏期講習に通った。
その大学の講師が私の絵と姿勢を高く評価してくれて、より一層努力を重ねようと思えた。
そんな中だったが……。
高校2年の夏、金沢と京都を青春18きっぷで4泊5日かけて一人旅をした。
折り畳み自転車を担いで電車に乗り、自転車は電車に乗せられないと言われたらゴミ袋3枚で包んで、金沢や京都の現地ではPCから印刷した地図を頼りに自転車を乗り回した。下鴨神社、八坂神社、西本願寺が特に静かでオーラに満ちて、涼むのにも最高だった。最高の旅行だった。
だが、帰りに最寄りの駅に車をつけて待っていてくれた母親のところに行くと、様子がおかしい。
「人を待たせやがって。走って来なさいよ!」
やけにピリピリしていた。車内でも旅の様子など一言も聞いてくれず、私や父親に対する文句ばかり。
何があったのかは知らないが、私は旅を台無しにされた気分だった。そのまま車の中で「降ろせクソが!」と暴れて停車させ、車から降りて歩いて友達の家を目指した。
親が引き返してきて、謝罪半分に再び車に押し込まれ、家に送られた。
最高に楽しかった一人旅は、最後の最後で台無しにさせられてしまった。
更に秋、両親が法事を開くことがきっかけで揉め始め、家の中の空気が最悪の状況になる。
両親は一言も口を利かず、私にはお互いの悪口をぶつけて来た。
そんなある日、学校に行こうと原付に乗っていたら、ふと目に入った青看板。私はふらりと学校と反対方向に進路を切り、自然な心地で福島を目指し始めた。
ぐねぐねの山道を過ぎると、壮大な会津の風景が広がった。
そのまま青看板を頼りに栃木県へ。
那須高原をぐるぐる回った。途中普通に給油もした。
またしても青看板を見て、1号線って乗ったことないな。行ってみようと進路変更。
茨城県をかすって、東京へ。車の量がすごいなぁと思いながら神奈川県へ突入。横浜市の幸町という街に入ったところで、「そういえば神奈川県って大学に進学した兄が住んでいる県だ」と思い出した。
そこで初めて停車して携帯電話を確認すると、すごい量の着信とメールが入っていた。どうやら私に捜索願が出ているらしい。
幸町の交番に行き、「すみません、私、捜索願が出ているみたいなんですけど」と何気なく言ったら交番内はちょっとした騒ぎになった。
横浜の警察署の長椅子で一晩寝て次の日、父親が新幹線に乗って迎えに来た。
原付は警察が実家へ送ってくれるらしい。費用は勿論我々持ち。
帰ってから家族会議が開かれた。
神奈川で大学生をしている兄とも電話を繋いだ。
両親は離婚するとお互い言い張った。しかし、お互い私を面倒みると言い出し話がまとまらず、結局有耶無耶になり兄が半ば無理矢理両親を仲直りさせて事態は収束した。
幸か不幸か、私が二人のかすがいになってしまったのであった。
高校生活は目標も楽しみもあって、虐める人もいなくて、それなりにやっていけそうだと思っていた。
しかし、私の人生はまだまだ底ではないらしい……。
私は基本全力で人生を生きている自負があるが、この時期は特に努力量が段違いで、今の私が見ても本当に輝いていたし頑張っていたと思う。
結果として私は美術大学の受験の舞台にすら立てなかったし、漫画家になることもできなかった。しかし、この時の私の努力を私が認めずしてどうするのだ。人生結果は大きなものかもしれないが、それが全てではないと思う。
私の努力にあっぱれ。
では、また次回お会い出来たら嬉しいです。
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