【論文レビュー】リーダーのパーソナリティと従業員のボイス:倫理的リーダーシップ
今回は、倫理的リーダーシップと心理的安全性についてです。
参考論文
Walumbwa, F. O., & Schaubroeck, J. (2009). Leader personality traits and employee voice: Mediation by ethical leadership and psychological safety. Journal of Applied Psychology, 94(5), 1275-1286.
リーダーのパーソナリティ特性と従業員のボイス: 倫理的リーダーシップと心理的安全性による媒介
ざっくりまとめ
倫理的リーダーシップとは?:「個人の行動および対人関係を通じて規範的に適切な行動を示し、双方向のコミュニケーション、強化、および意思決定を通じてそのような行動をフォロワーに促進すること」(Brown et al.,2005)→つまり、倫理的な価値観を実践し、それをフォロワーに伝え、同様に倫理的行動を取るように導くリーダーシップ
アメリカの大手金融機関において従業員と直属上司を対象に、倫理的リーダーシップの先行要因と結果を調査した
リーダーのパーソナリティ特性のうち、協調性と誠実性が倫理的リーダーシップと関連することが確認された
倫理的リーダーシップは、従業員の心理的安全性を予測し、それがボイス行動に大きな影響を与えることが確認された
どんな内容?
リサーチクエスチョン
リーダーのパーソナリティ特性(誠実性、協調性、神経症的傾向)は、部下による倫理的リーダーシップの評価にどのように影響するか?
倫理的リーダーシップは、職場グループの心理的安全性や従業員のボイス行動にどのように影響するか?
フォロワーの心理的安全性の認識は、倫理的リーダーシップと従業員の発言行動との関係を媒介するか?
これらのRQを検証するために6つの仮説が設定された
研究デザイン
対象:米国の大規模な金融機関の894名の従業員とその222名の直属の上司 調査は、リーダーシップ開発トレーニングの一環として実施された
方法:約5週間の間隔を設けて以下の内容で2回サーベイを実施した
Time 1 上司は自身のパーソナリティ(協調性、誠実性、神経症傾向)を問い、従業員は上司の倫理的リーダーシップ行動を評価した
Time 2 上司は部下のボイス行動を評価し、従業員には心理的安全性を評価した
尺度:
パーソナリティ特性: Goldberg (1990) から協調性を、Saucier (1994) から誠実性と神経症傾向
倫理的リーダーシップ: Brown et al. (2005) の10項目のEthical Leadership Scale(ELS)
心理的安全性: Edmondson (1999) の7項目の尺度
ボイス行動: Van Dyne and LePine (1998) の6項目のVoice Behavior Scale
結果
倫理的リーダーシップの先行要因:
協調性と誠実性が、倫理的リーダーシップと正の関連があることが確認された一方、神経症傾向は倫理的リーダーシップとの有意な関連を示さなかった(Figure2)
心理的安全性と従業員のボイス行動への影響:
倫理的リーダーシップは、従業員の心理的安全性を強く予測し、さらにそれがボイス行動に大きな影響を与えることが確認された
媒介分析では、心理的安全性が倫理的リーダーシップとボイス行動の関係を部分的に媒介することが示された(モデル1:倫理的リーダーシップが従業員のボイス行動に対して有意な直接効果(.35**)であり、モデル3:心理的安全性を追加後も、倫理的リーダーシップの直接効果は減少するが依然有意(.18**))(Table2)
協調性と誠実性というパーソナリティ特性は、倫理的リーダーシップに対して直接的な正の影響を及ぼし(協調性: .37, 誠実性: .29)、かつ倫理的リーダーシップを介して心理的安全性に影響し、ボイス行動へ間接効果を及ぼすことが確認された (Figure2)
考察
組織は、協調性や誠実性というパーソナリティ特性を持つリーダーを選定することに加え、倫理的な組織風土を醸成することが重要である
倫理的リーダーシップは、単に不正行為を減少させるだけでなく、心理的安全性を促進し従業員のボイス行動を促進する役割を持つ可能性がある
リーダーのパーソナリティ特性が倫理的リーダーシップに与える影響は、個人主義的文化と集団主義的文化の間で異なる可能性がある
学び
倫理的リーダーシップの協調性、誠実性がボイスに影響を及ぼすことが学びになりました。自身の研究でもボイス行動を見ようと思っているのですが、調査方法としては、本論文のようにリーダーシップ開発をする上司側ではなく、声を上げられるかどうかは従業員が自己評価するのが良いように思いました。引き続き他のボイス関連論文の方法も見てみたいと思います!