【論文レビュー】インクルーシブリーダーシップが部下の創造性タスクへの関与を促進する
こんばんは、心理的安全性関連が続いております(なぜなら研究テーマだから)。今日はインクルーシブリーダーシップです!
参考文献
Carmeli, A., Reiter-Palmon, R., & Ziv, E. (2010). Inclusive leadership and employee involvement in creative tasks in the workplace: The mediating role of psychological safety. Creativity Research Journal, 22(3), 250-260.
インクルーシブリーダーシップと職場における創造的タスクへの従業員の関与:心理的安全性の媒介的役割
ざっくりまとめ
インクルーシブリーダーシップとは?:リーダーが開放性、アクセスのしやすさ、利用可能性を持ってフォロワーと関わること。
NembhardとEdmondson(2006)の研究で重要性が示されたリーダーの包括性(リーダーが他者の意見や貢献を歓迎し、価値を認める行動)などの先行研究を基に、ILの3つの構成要素(開放性、アクセスのしやすさ、利用可能性)を仮定し、独自の尺度を開発した
ILが心理的安全性を高め、それが媒介となり従業員の創造的タスク(新しいアイデアの生成、問題解決、改善、新たなプロセスの発見など)への関与を促進することが確認された
どんな内容か?
リサーチクエスチョン
インクルーシブリーダーシップは、心理的安全性を介して従業員の創造的タスクへの関与を促進するか?
研究デザイン
対象:先端技術製品を開発する8つの知識集約型組織に属する150人の従業員(創造的な業務に従事)
方法:2回に分けてデータを収集し、構造方程式モデリング(SEM)で仮説モデルを分析した
Time1:従業員(部下)から見た直属上司のインクルーシブリーダーシップを測定
Time2:その2ヶ月後に従業員の心理的安全性と創造的タスクへの関与を測定
尺度:
インクルーシブリーダーシップ:開放性、アクセスのしやすさ、利用可能性の3つの構成要素を測定する9項目の独自尺度
開放性(Openness):リーダーが新しいアイデアや意見を受け入れる意欲を持ち、従業員の提案に対して開放的であること
アクセスのしやすさ(Accessibility):リーダーが従業員にとってアクセスしやすい存在であること
利用可能性(Availability):リーダーが従業員のために時間を割き、支援を提供する準備ができていること
心理的安全性:Edmondson(1999)の心理的安全性尺度のうち5項目
創造的タスクへの関与:Tierney, Farmer, & Graen(1999)の尺度3項目
結果
RQを検証する3つの仮説は全て支持され、ILが心理的安全性を高め、それが媒介となり従業員の創造的タスクへの関与を促進することが確認された
考察
組織の競争優位性は、従業員が新しく有用なアイデアを生み出し、組織が新たな課題に対応し、競争力を維持する能力に大きく依存する(Mumford et al., 2002)。本研究は、リレーショナルリーダーシップの一形態であるILが従業員の創造性を促進するメカニズムを明らかにし、リーダーシップと創造性に関する文献に貢献した
リーダーの包括性が心理的安全性の発展において重要である(Nembhard & Edmondson, 2006)という先行研究の発見をさらに拡張した
リーダーが開放的で、アクセス可能で、従業員と新しいアイデアについて話し合えるとき、彼らは心理的に安全だと感じる社会的文脈を醸成することが明らかになった。従業員の創造性を促進するための社会的文脈の重要性(Illies & Reiter-Palmon, 2004; Perry-Smith, 2006)が確認された
学び
インクルーシブリーダーシップの構成要素が具体的に理解できました。
開放性と心理的安全性の関連は、変革型リーダーシップとボイスの論文(Detert et al.,2007)でも示されていましたね。
とはいえ、開放性、アクセスのしやすさ、利用可能性を全て身に付け、部下の方を向いている姿勢を示し続けることは多忙なリーダーにとって簡単なことではなさそうです。心理的安全性の醸成には、心理的・物理的な部下との距離の近さが重要ですね。
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