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【論文レビュー】リーダーの包摂性が職務による心理的安全性の格差を緩和する

今回は、リーダーの包摂性と心理的安全性についてです!


参考文献

Nembhard, I. M., & Edmondson, A. C. (2006). Making it safe: The effects of leader inclusiveness and professional status on psychological safety and improvement efforts in health care teams. Journal of Organizational Behavior, 27(7), 941-966.
安全を確保する: リーダーの包摂性と職業的地位が医療チームにおける心理的安全性と改善努力に与える影響

ざっくりまとめ

  • この論文では、リーダーの包摂性(他者の貢献を招き、感謝する言葉や行動)という構成概念を導入した →リーダーがチームメンバーの意見を求め、それに対して明確に感謝の意を示すことが重要

  • 医療の分野では、知識の急速拡大や専門化の進展に直面し、医療ミスの70〜80%はチーム内でのやり取りに起因する (Schaefer, Helmreich, & Scheideggar, 1994)ともされ、チーム学習が課題であった

  • 職業的地位の差(医師と非医師)における心理的安全性の違いと、リーダー(医師)の包摂性による心理的安全性への影響が明らかになった

どんな内容か?

リサーチクエスチョン

  • リーダーの包摂性が、医療チームにおいて、職業的地位の差異が心理的安全性に与える影響をどのように緩和し、その結果、チームメンバーが品質改善活動にどのように関与するか?

仮説モデル:リーダーの包摂性による調整効果と心理的安全性の媒介効果

研究デザイン

  • 対象:アメリカとカナダの23の新生児集中治療室(NICU)で治療に関わる医師、看護師、呼吸療法士などの医療従事者1,440名

  • 方法:リーダーの包摂性、改善活動への参加(非医師のみ)、職業的地位、心理的安全性(全参加者)を問うサーベイを実施。サーベイは3つのフェーズで行われた

    • 第1フェーズ:4つのNICUを訪問し、現地観察とスタッフへのインタビューを通じて、研究の基盤となるデータを収集

    • 第2フェーズ:これらのNICUでパイロットテストを行い、サーベイの内容と有効性を検証

    • 第3フェーズ:パイロットを除く残り40のNICUに対してサーベイを配布し、そのうち23のNICUが調査に参加。サーベイは、各NICUの改善チームのリーダーを通じて、メールまたは電話で配布・実施

    • 調査期間:2003年7月から2004年5月

  • 尺度:Edmondsonの心理的安全性尺度とリーダーの包括性に関する独自尺度(リーダー(医師)の包摂性を問う3項目)

結果

6つの仮説は全て支持され、以下が明らかになった

  • 高地位と低地位の個人では心理的安全性に違いがあり、地位とユニットチーム所属、地位とリーダーの包摂性の間には相互作用が存在した

  • リーダーの包括性が高いほどチーム内の心理的安全性に対する地位の影響が小さく、逆にリーダーの包摂性が低いと影響が大きくなった

  • リーダーの包摂性が高まると心理的安全性が向上し、それがチームの品質改善活動への関与を予測することが示された

職業的地位とリーダーの包摂性に基づく心理的安全性

考察

  • 医療チームにおいて、リーダーの包摂的行動が職業的地位による心理的安全性の格差を減少させ、効果的なチーム改善活動を促進する可能性がある

  • 特にリーダーの言葉や行動が他者の貢献を招き、感謝を示すことが重要であり、リーダーシップトレーニングの重要な要素となる可能性がある

  • 本研究は、医療やその他分野において、職務を超えたチームが改善に向けて協力的に学習するための示唆を提供する

学び

リーダーの包摂性が職業的地位による心理的安全性の格差を是正することが学びになりました。リーダーの行動からベテランメンバー(ある程度の経験がある非医師メンバー)が影響を受けることでのチームへの間接的影響(チームの風土作りにどう貢献するか)も気になるところです


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