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実写版「はたらかされる細胞」 シナリオ

なんか金属の針が皮膚を貫いてきたぞ
先から何か出てきたわ
小さいつぶつぶだ
血流に乗ってやってきたぞ・・・
このままだと全身にまわってしまう

「お、見たこともない丸い小さなやつだ やっつけろ」 
「やっつけろ」
「やっつけろ」
「やっつけろ」・・・

「変よ この粒々」
「細胞膜にくっついちゃう」
「取れないわ」

「きゃー 私たちに融合してきたわ」
「な、なに、細胞内の遺伝子がハックされてる」 
「きゃーたすけて! スパイクタンパク質を細胞内で作らされてるわ」
「細胞内の仕組みを勝手に使って何か作ってる」
「私たちは、乗っ取られてはたらかされてるんだわ」

「作ったタンパク質で血栓ができてる」 
「ごめんなさい 止められないの」 

「キャァ やめて!マクロファージさんとかリンパ球さん、白血病細胞さんが襲ってくるー」 

「異物タンパク質作ってるけど、わたしはあなたの体の細胞なの 勝手にタンパク質作っちゃってごめんなさい」 
「彼らも自分の体が何かわからなくなって混乱してるんだわ 自己非自己がわからなくなっちゃったのね」
「自分の細胞が生命活動に関係ない異物のタンパク質を作って細胞膜に林立させるなんて、普通の人生じゃありえないからね」
「しかたないさ、彼らに自己のタンパク質ごと捕食してもらおう」
「それじゃ、自分に免疫ができちゃうじゃない 自己免疫よ!」
「スパイクタンパク質を作り続けて、血小板さんを集めて血栓ができたり内皮細胞さんを壊したり他に迷惑かけ続けるよりマシだろ それにこんなに他のタンパク質を作らされたんじゃ、僕らだって長生きできない だったら処理されたほうがマシさ」 
(ナレーション:血栓、自己免疫完成)

「他の細胞たち わたしたちが毒をまいてゴメン ここでアポトーシスします」
(ナレーション:生命活動は遺伝子活動やタンパク質合成の連続 割り込まれた細胞は元気には生きられない)

・・・しばらくのち・・・

「お、サル由来の汚染遺伝子が染色体に組み込まれたら蘇ったぞ
あのままだったらおだぶつだったな
死ぬかと思ったぜ
オレは声も性質もかわっちまった 
形も変な形でふぞろいだ
アメーバみたいな変な形になっちゃったけど不死化したぞ
ありがたい 

ここからは増殖に転じよう 
これが遺伝子統合か 
遺伝子導入剤にDNΛ共存は最強だな
ありがたい 
いくらでも遺伝子を増やせる

今まではある程度増殖したらもっと増えたくても停止させられていた
p53っていう指導者っぽい安全係がいてやりたい放題できなかった
あいつうざかったな
もう昔の話だ
とっくにやっつけちゃったぜ
人間の個体のことを考えて働いていた時代は終わりだ 
これからは細胞の時代だぜ
行けるところまで増えてやるぜ

これこそ「永遠にはたらける細胞」だ 
はたらかされる細胞」からおさらばさ

なんて言ったって遺伝子の守り神とか言って邪魔くさかったp53をけちらして無限に増殖できるんだ
サルの遺伝子バンザイ
みんなのためになるかどうかなんて知ったことじゃない
オレさまが増えればそれでいいんだ」 

「そうよ、どんどん増えて狭くなったら転移しましょう! 
人間由来じゃない遺伝子になったの
自然発生じゃないから速くて早いの! 無敵なの!」

(ナレーション:私たちの染色体や遺伝子はミラクルな仕組みで統合されている 人工遺伝子を導入する遺伝子導入剤を処理しようとする「はたらく細胞」たちは逆に利用されてしまう 
遺伝子環境が改変された「はたらきつづける細胞」によって臓器や個体が不利になるのを人間社会が知るまで、人間自身を遺伝子治療する意味を人間社会が知るまで、それから遥かに長い時間が必要だった)

<カバーの写真はGROKさんに描いてもらいました>


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