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不思議な体験をしたもんだ

今回のかきあつめのテーマは「私の不思議体験」である。

私はあまり不思議体験はない方だが、数少ないながら「あぁ、あれは不思議な体験だったかもしれない」と思える機会があった。今日はそれについて書いていこう。

H君とH君の彼女と飲んだとき

H君は高校の同級生である。他校の友人だが塾で出会った仲であり、甘いマスクをもち高校生ながらクラブに出入りしていた彼は、男子校出身のイモい私と違い『芸能人の息子』みたいなヤツだった。

大学受験を終え、H君と「久々に飲もう」という話になった。待ち合わせ場所に新宿のルミネを指定され、夕方頃に行くとH君とH君の彼女だという人がいた。

明らかに年上の彼女は強烈に美人だった。当時はとても年上に感じたが、思い返すと25,6ぐらいだったかもしれない。社会人をしているという彼女は常にH君の腕に抱きつき、僕のことなどあまり興味がないようであった。

呼び出しといてH君は「まだ飲むのに早いから」と彼女とルミネに入り、私は彼らのデートに付き合った。後ろから付いていく私をよそに、彼らはイチャつきだし、ある店の前で彼女は「このカバン超カワイイ~~!」と声を上げた。

「ねぇH君、このカバン超カワイイんだけど!! お願い~、買ってもいい~~!?」と彼女がH君にねだると、H君は「っったく、仕方がねぇなぁ。いいぞ買っても。」といって、カバンを会計に持っていった。

私は心のなかで「スゲェなぁ。Hのヤツ、金あんな~。」なんて感心していると、次の瞬間驚くべき事が起きた。彼女の財布から万札が出てきたのである。

っt!!!??、なんなんだこれは!? なんの確認だったんだ!? 金を出すのが彼女なのに、確認することなんかあるのか?? ヤツのダルそうな仕草もなんだったんだ!!? 俺はいま、何を見させれらているんだ!!!?

パニックになっている私をよそに、彼女はご機嫌であった。その後は3人で焼き肉を食べ、3万ぐらいの会計を当たり前のように彼女にご馳走になり解散した。

大学も違うH君とは、その後会えていない。またH君に会えたなら、当時どんな気持ちで会計していたのかを聞いてみたいものだ。

誰だか分からないやつと、ゴールデン街で飲んだとき

これは社会人になってからだったか。友人が新宿ゴールデン街で飲んでみたいというので、観光客感覚で飲んでいた時だった。同じくカウンターで飲んでいたキャイ~ンの天野似のあんちゃんが「ゴールデン街を案内してやる」と言うので、2軒目を彼に案内してもらったところから始まった。

彼に案内されたのは婆さんが1人で切り盛りする、8人も入れば満員になるような店だった。「この小汚い感じが良いんだよ」という彼は、なれた手付きで狭いカウンターを進んでいった。

「ここは何頼んでも美味いし、特にババアが作るおでんは最高よ。」

なるほど、彼の行きつけらしい。どれどれ、ではオススメのおでんを食べてみようかな。目の前にある煮付けも美味そうだ。

カウンターの中にいる婆さんに注文すると、震える手で料理を皿によそいだした。よく見ると、小皿のラップもホコリ溜まってる。おお?大丈夫か? 思い返せば、このあたりから不穏な空気が流れていたのかもしれない。

おでんをたべてみる。・・・うん、普通だ。小皿をいただくも、これらも味は並だ。むしろちょっと古い・・? あれ、、?この小皿で700円とるの・・・? 酒も、大衆酒の割にはいい値段とるなぁ。。。

すると、震える婆さんが天野似のあんちゃんにこう言い出した。「上のお客さんに、これを持っていってもらえんかね。」

よく見ると、彼の背もたれの後ろに小さな階段があり、上にもお客さんがいるようだった。指示を受けた彼は、嬉しそうに手渡された料理を上の階に持っていった。

う、、うぉおーーいババァマジか!客をサーブに使ってやがる!!

なるほどなぁ。。世の中には「婆さんが1人で切り盛りする小汚い店で食べたい」というニーズがあるんだなぁ。そういうのが好きな客にとっては、「婆さんに依頼されて他の客にサーブすること」もアミューズメントの一つであり、この婆さんはそういった客層に支えられているのだ。にしても、たいして飲んでないのに1万近く取るのはやり過ぎの気もするが。。

ババコンのあんちゃんに誘われる、不思議な時間であった。

女装男子をダンスに誘ったとき

最後の不思議な体験は、女装男子のイベントでの出来事であった。これも10年くらい前だが、友人とニューハーフと女装男子が集まるイベントに行こうという話になった。

当時は学生で、女装趣味もなくヘテロな私達は、「(女の子と見間違えるくらい)かわいい子と連絡先が交換できたらいいね」程度にしか考えていない、失礼なヤツだった。

そのイベントはステージでダンスをする人と、周りの席で飲んで喋っている人にに大別されていた、特に目的もないなか、現地についた我々は別れて女の子(正しくはニューハーフor男性)に話しかけることにした。

物色しているとゴスロリの格好で1人で飲んでいる子がいたので、話しかけることにした。

「こんにちは。横いいですか?」

振り返るゴスロリ。おおっと、化粧はしているがキチンとおっさんだ。まぁ落ち着け、はじめっから分かっていたことじゃないか。。話しかけた手前、座らないわけにはいかない。少し話したあと、テキトーな理由をつけて席を立てばいい。

「どうぞ。」 ゴスロリは伏し目がちに言った。ゴスロリと挨拶を交わすと、初めての参加でどうしたらいいか分からないと言いだした。私もである。まずは酒を飲みながら話を聞いてみた。

ゴスロリは女装趣味はあるが、イベントはおろか女装を家の外でするのも初めてだと言っていた。周りの女装はかわいいし、ダンスもやり方が分からないと。終始伏し目がちにネガティブである彼女に、私はイライラしてきた。

確かに女の子みたいなニューハーフもいるけど、あれはイベント運営側のプロだし、それ以外は全員よくみりゃオッサンだ。きみは向こうで踊り狂っているバケモノなんかより、よっぽどマシだぞ。

もちろんこんなことは言わなかったが、気づくと私は彼女にドリンクをごちそうし、手を取ってステージへと向かっていた。

立ち上がるとゴスロリはデカかった。よく見なくてもゴスロリはオッサンだった。だがそのときはちょっと、ゴスロリが可愛く見えた。

ゴスロリは踊りだすと他の女装たちと仲良く話だし、元々どうするつもりもない私はフェードアウトした。

その後、私は引き続き物色していたのだが、特筆するイベントも出会いもなく、ただただ酔っ払った。一緒に行った友人も同様で、「そろそろ始発だから」と帰る準備をしていると、「今日はありがとうございました。」と言ってくるオッサンがいた。ゴスロリだった。

友人が「なに今の?」というので経緯を説明しながら「あのオッサンが可愛く見えた」と言うと、「ないわー」と返された。はっはっは、確かにそう思うかもしれないが、うーん、それでもあの時は可愛かったんだよなぁ。

不思議な体験をしたもんだ。

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