やすのり

勝負は創造力。25年間勝負だけで生きてきた経験と思考を整理してます。 #ポーカー #…

やすのり

勝負は創造力。25年間勝負だけで生きてきた経験と思考を整理してます。 #ポーカー #麻雀 #トレード #ミニマリスト

最近の記事

自叙伝風小説43最終話

「初めてライブトーナメントで優勝できてね。相手もすごく強いし今もランキングに出るようなプレイヤーだったから嬉しかったよ。その二つもあって僕の大きな自信になったんだ」 小さな大会ではあるんだけどね、と謙遜するアカヤギに倉田は大きく首を振った。 「海外に挑戦して優勝したんですよ!もうそれで十分すごいですって!」 恥ずかしそうにありがとね、と返すアカヤギは当時を思い返すように頷いていた。 「そのまま祝勝会して、仲間内で祝ってもらった時もやっぱり嬉しかったよ。僕は成し遂げたんだって。

    • 自叙伝風小説42ヘッズアップ編

      関谷さんとのヘッズアップから一度ブレイクを挟んでしばらく。 順当にショートスタックの女性はリタイアとなり、僕はキャップを被った青年と勝負していた。 彼はイスラエルの人間で、ライブポーカーを嗜む者なら知っているだろう。 W S O Pのブレスレットも持っているし、さまざまな大きい大会で優勝もしている。 少し前にはなるがW S O Pのブレスレット獲得時は5000万くらいの賞金も取っているまごうことなきトッププレイヤーだ。 その実力に恥じないくらいにきちんと最初からチップを稼いで

      • 自叙伝風小説41ファイナルテーブル編

        「一日目は好調だったし、二日目も不調ではなかったよ。実際そのトーナメントではセミファイナルまで残ってインマネもしたしね」 「おお、大舞台でもさすがですね!」 「うーん、ありがとうね?でも、言い方を変えれば負けてしまったわけだよ。インマネの賞金でもう少し大きな大会にエントリーしたらそっちは残り3テーブルまで行ったけどダメだった。当たり前だけど最後の方はどんどんレベルが高くなっていくし、激しくなっていくから大変だなぁって改めて感じたよ。あとは、オンラインのトーナメントがメインだっ

        • 自叙伝風小説40WSOP編

          一つの大会を聞き終えて、倉田は疲れたように長く深い息を吐いた。 「・・・すごい、ですね。こっちまで緊張してしまいます」 「ふふ、ありがとう」 アカヤギは素直にそう言ったが、実際に彼の体験した緊張感の十分の一もわかっていないだろうということは倉田にもわかっていた。 あくまで彼はプレイしたことのない人間であり、大会なんかの空気から何から知らないのだ。 尤も、それでも面白さや空気感が伝わってくるのはポーカーの、そしてアカヤギの話のうまさもあるのかもしれない。 「さっきも言ったけど、

        自叙伝風小説43最終話

          自叙伝風小説39WPT韓国後編

          「・・・・・はぁ」 倉田は聞くだけで疲れたように大きく息を吐いた。 とっくに終わった勝負であり、倉田は直接動画で見ているわけでもない。 だが、アカヤギの話し方と当時の緊張感を思わせる話ぶりに倉田も真剣になっていたようだ。 「日本人も多いし、実力者も多かったという事ですか」 「そういう事だね。別にキャッシュゲームでも他のトーナメントでも負ける時は負けるからね、気にはしていないんだけど、やっぱりメインなだけあって難しい戦いは多かったよ」 「ヨコサワさん、でしたっけ」 僕でも知って

          自叙伝風小説39WPT韓国後編

          自叙伝風小説38WPT韓国前編

          思えば、トーナメントに出会ってから僕はさらにポーカーの世界にのめり込んだのだろう。 いつもより一分一分を大事にプレイしてきたし、反省会も前よりもっと真剣にやるようになった。 キャッシュゲームでの戦績もよくなり、そこで稼いだお金でトーナメントに出る。 そしてインマネしたり逃したりを繰り返して少しづつ少しづつ僕はトーナメントプレーヤーになっていった。 カジノがあるから、ポーカーができるから。それだけで行き先と目的を決めていたのだが、最近ではこのトーナメントに出るため、と目標と行き

          自叙伝風小説38WPT韓国前編

          自叙伝風小説36初トーナメント編

          「ああ、アカヤギさん。今日もポーカーですか?」 僕もすっかりマカオに行き慣れてきて、特にポーカールームのスタッフとは顔馴染みになっていた。 キャッシュゲームで使うチップを換金しにいくとそう声をかけられ、いつも通り何気ない会話を交わす。すると、スタッフは不思議そうにチップを待つ僕に笑顔を向けた。 「いつも勝ってますもんね。そんなに強いならトーナメントに出れば良いのに。今日だってキャッシュゲームの方をされるんですよね?」 「え?そうですけど・・・トーナメント?」 スポーツとかでよ

          自叙伝風小説36初トーナメント編

          自叙伝風小説35マカオキャッシュゲーム編

          「へぇ、マカオに行ってすぐ兄そるさんに再会できたんですね!」 「うん、もちろんマカオに住んでいるって聞いてから会えたらなって思っていたけど、すぐ会えるとは思わなかった。その後のカジノ飯も美味しかったし、有益な話をたくさん聞かせてくれたよ」 倉田はすっかりメモのページが増えているのにさらに新たなページに捲ってアカヤギの話に耳を傾けた。 「もちろんポーカーについても話したよ、この場面はこうだったんじゃないか、とかその日の振り返りをしたりね?あとは、何より大きかったのは、彼は向こう

          自叙伝風小説35マカオキャッシュゲーム編

          自叙伝風小説34初マカオ編

          そしてまた過去の話を話し始める頃には、倉田はすっかり負けきった後だった。 慣れない頭を使う分脳みその筋肉痛のようなものに教わればがら、倉田は本来の仕事に戻った。 「それで、日本に戻ってきた後は、ずっとポーカー漬けって言ってましたよね?」 「うん、日本でオンラインで練習し続けて・・・ある程度わかってきた頃かな。少しは自分に自信も持てたから兄そるに言われてた雀荘に顔を出してみたんだ」 「雀荘は、ある意味ホームみたいなものですよね、アカヤギさんには」 ゲームを通じて今までよりも打ち

          自叙伝風小説34初マカオ編

          自叙伝風小説33ポーカー基本編

          「じぇいそるさんって何か聞いたことがあるような」 「ああ、きっと彼はいまYouTubeでポーカーと旅をテーマに動画を出しているからね。きっとそれかも」 「へぇ、しかもそんなすごい人のお兄さんですか・・・運命って面白いですね」 やはりあるところにはあるものだと数奇な出会いに倉田感心してメモを取っているとアカヤギも同じように頷いていた。 「今は兄そるは経営者になってるんだけど、じぇいさんは今も海外でポーカーで稼いでるね。妹さんもそこに行ってポーカー修行とかしてたみたい」 「うわ、

          自叙伝風小説33ポーカー基本編

          自叙伝風小説32初ポーカー編

          「当機はまもなく最終着陸態勢に入ります。今一度シートベルトを―――」 僕はそれを聞いて読んでいた本を静かに閉じた。 リーマンショックを受け、僕は住む場所も変えた。生活の質もあの頃と比べればガラリと変わっただろう。まだ蓄えはあったから急いで働く必要も無かったし、生きていくのに困ることもまだない。 だが、少しずつ少しずつ人生の時間だけを削られていくような息苦しさはうっすらと感じていた。 このままではいけない。そう思う中でもう一度ブラックジャックのカウンティングで勝負をしようと考え

          自叙伝風小説32初ポーカー編

          自叙伝風小説31トレード挫折編

          「お先です!お疲れ様でした!」 倉田はいつもの編集部から定時になってすぐに荷物をまとめて声をかけた。 するとそんな彼を編集長が引き止めた。 「おお、休む前は大丈夫かって心配してたけど、だいぶ元気そうだな」 「・・・まぁ、いつまでも塞ぎ込んでいられませんしね」 倉田は苦く笑いながら今はいない例の先輩の席をチラリと見やった。 その態度に思うところはあったようで、編集長も同じような顔を浮かべながら曖昧に頷いた。 「どうだ?今日は久しぶりに飲みでも行かないか?」 「すみません、今日は

          自叙伝風小説31トレード挫折編

          自叙伝風小説30専業トレーダー編

          回想 「えーっ、凄い!最初はお仕事していないって聞いていたからちょっと不安だったんですけどー」 「本当!株ってそんなに凄いんですね」 僕は自分の話をしてから打って変わったように笑顔になって褒めちぎってくる彼女たちに笑顔を向けながら手を振っていた。 「いやいや、もっと稼いでいる人もいるし、僕なんてまだまだだよ」 「いや、私たちからしたら凄いですよー!看護師なんて一生かけてもアカヤギさんのお金も稼げませんし!」 「いいなぁ、才能あふれる男性って素敵ですよね」 うっとりと話す姿か

          自叙伝風小説30専業トレーダー編

          自叙伝風小説29ライブドアショック編

          「ライブドアは聞いたことがありますけど・・・」 確か何か問題があったはず、と倉田は一般人として知っているだけの情報を思い出していた。テレビなどでも顔を見ることが多い名物社長が経営している会社であり、何かよくわからないが逮捕されて刑務所に入っていた、と服役後のテレビで話していた。 それらを並べてみるとその情報で当たっていたようで、アカヤギも肯定の意を示す。 「今から十七年ほど前、株は結構盛り上がっていたんだよ。日経平均も上がっていて、テレビとか一般の新聞にも株の情報がたくさん出

          自叙伝風小説29ライブドアショック編

          自叙伝風小説28株式投資編

          回想 特に何か意識して情報を取らなくても、毎日ニュースでは同じようなことばかり流れている。I Tバブルが弾けて日本だけじゃなく世界はこんなにも大変だと不安を煽るようなものばかり。打ち子たちを雇ってある程度お金にも余裕が出てきたけれどアメリカに行く目処は立たない。なんだか閉塞感を感じる生活の中でそのニュースは僕の耳にもよく入っていた。 誰もがそれを話題にするときは後ろ向きな話ばかりなのだが、僕といえばそんなことはない。もしかしたら他の人とは違うのかも知れない。 やれバブル崩壊

          自叙伝風小説28株式投資編

          自叙伝風小説27株式投資説明編

          「もう一週間休みを?・・・それは構わないけれど、大丈夫なのか?」 「はい、別にもう落ち込んだりはしていません。自分のミスは自分のミスとして受け止めて、きちんと前を向く気分にはなっていますから」 倉田は家の玄関で上司に電話しながらクスッと笑い声を漏らした。 「ご心配おかけして、申し訳ありませんでした」 「・・・その様子だと、強がりでもないみたいだな。あの瞬間のお前の顔は全財産を失ってしまったみたいに絶望の表情だったんだぞ」 上司が冗談まじりにいう言葉に、倉田もその時の感情を思い

          自叙伝風小説27株式投資説明編