【歴史を纏う写真表現】「あたらしい近代服飾史の教科書」で衣装と文化に触れる
写真作家にとって、衣装は撮影テーマや物語の核となる存在です。モデルに着せる服が撮影全体の世界観を左右するからこそ、衣装の背景や文化的意義を深く理解することが重要です。そんな私たちにとって、この本「あたらしい近代服飾史の教科書 衣服の標本で見る、着るものの歴史と文化」は、まさに宝物のような資料です。
衣装の歴史がインスピレーションを引き出す
この書籍を手に取ると、数百年前の美しい衣装を通して当時の文化や芸術に触れることができます。例えば、1666年に誕生した男性のスリーピース・スーツや、華やかなロココの女性ドレス「ローブ・ア・ラ・フランセーズ」など、それぞれの時代を象徴する服が鮮明な写真とともに紹介されています。これらの情報は、撮影テーマを設定する際に欠かせないアイデアの源泉になります。
撮影ヒント例:
スリーピース・スーツ: 男性的でシックなポートレートや、英国風のクラシカルな世界観。
ローブ・ア・ラ・フランセーズ: 豪華絢爛なドレスに囲まれた華やかなスタジオ撮影や、貴族的な野外ロケーション。
衣服の進化は同時に人々の美意識や価値観の変化を反映しています。この視点を取り入れると、撮影した写真が単なる美しい作品に留まらず、歴史や文化を感じさせる深みを持つものになります。
衣服標本から学ぶ構造美とディテール
本書の特筆すべき点は、著者の長谷川彰良さんが衣服を分解し、標本として構造を解明していることです。この手法によって、布地の裏側や縫製、ボタンや刺繍などの細部まで知ることができます。
写真作家としては、これらのディテールが撮影における絶好のインスピレーションになります。たとえば、生地の質感を強調したクローズアップや、刺繍の陰影をライティングで際立たせるといった表現が考えられます。
重要な掲載衣装例:
女性衣装: シュミーズ・ドレス、クリノリン、バッスル
男性衣装: ジュストコール、アンクロワイヤブル、ラウンジスーツ
これらをモデルに着せることで、歴史的な美を再現しながら現代的な撮影スタイルに融合させる試みも可能です。
写真作家視点での感想
「あたらしい近代服飾史の教科書」は、単なる服飾史の本ではなく、写真作家にとってのアイデアブックとも言えます。文化や歴史を知ることで、撮影コンセプトに説得力が生まれますし、衣装選びやポージングのインスピレーションが湧いてくるはずです。
また、時代背景を意識した衣装を使うと、作品にストーリーが加わり、見る人に深い印象を与えられる写真が撮れるでしょう。モデルのポートレートだけでなく、静物写真や背景デザインにも応用可能です。
最後に
本書は、写真作家にとって衣装や歴史を通じて新たな視点を与えてくれる素晴らしい資料です。撮影準備やコンセプト作りに行き詰まったとき、ぜひ一度ページをめくってみてください。そこには新しいアイデアと撮影の可能性が広がっています。
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