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『女性建築士、狭小敷地に挑む!』 〜制約の多い敷地に建つ三階建て店舗兼住宅〜


改めて見てもやっぱり狭い!

今回の物件、街中に立つ木造3階建て狭小住宅です!
私、木造3階建て住宅の設計は初めてです。

『木造3階建て』は、設計や施工の難易度が上がるため、たくさんの制約があります。

①構造上の安全性
耐震基準の強化:高さが増すと地震の影響を受けやすくなるため、1・2階建てよりも強固な耐震設計が求められます。

壁量規定:耐震性を確保するために、一定の壁量(耐力壁)が必要です。

②防火規制
準防火地域・防火地域では、耐火性能の高い構造や材料の使用が義務付けられます。

延焼防止のため、開口部(窓・ドア)のサイズや防火仕様にも制約があります。

③建築基準法による制限
高さ制限:用途地域に応じて建物の高さに制限があります。

斜線規制(道路斜線・北側斜線など):周囲の建物や日照を考慮し、建物の形状が制限されます。

容積率・建ぺい率:敷地面積に対する建物の大きさが規定されます。

④構造計算の義務化
2階建て以下は簡易的な計算で済むのですが3階建ては詳細な構造計算(許容応力度計算など)が必要です。
そのため、設計・確認申請の手間が増え、コストも上がります。

⑤基礎・地盤の影響
3階建ては荷重が大きくなるため、地盤調査の結果によっては改良工事が必要になることも。

⑥生活面での課題
階段が増え、バリアフリー性が低下。高齢者や子育て世帯には不便なことも。
上階の荷重や振動の影響で、遮音対策が必要になります。

おまけに、物価高騰、建設会社や工務店は人手不足…今回はなかなか難題山積みの物件です…。

今回は、一階にお施主経営の床屋さんが入る関係で、素敵な助っ人、店舗設計の得意な建築士と一緒にプランを考える事になりました。

二階、三階はお施主さんのプライベートな空間。
センス抜群のご夫妻なので、設計の打ち合わせも毎回たくさんのアイディアが出て楽しいです。

限られたスペースだからこそ、細部のこだわりが効いてきます。
例えば、オリジナルのキッチン。既製品ではうまく収まらないから、使い勝手とデザインのバランスを考え、ぴったりフィットする形を計画しました。

店舗部分はスタイリッシュな雰囲気だけれど、住宅は温かみのある空間。オンとオフをしっかり切り替えられる住まいにするため、雰囲気をガラッと変えることにしました。

悩ましいのが「光と視線」。
周囲の建物が近く、採光をどう確保するかが課題です。窓の位置や高さを工夫し、スリット窓や高窓を活用。柔らかく光が入る、心地よい空間をつくりました。

そして、もっとも頭を悩ますのは、コストとの戦いです!

住宅部分は天井高を抑えてコストを削減しつつ、圧迫感を感じさせないよう設計。必要なところに開放感を持たせ、コンパクトながらも伸びやかに暮らせる空間に仕上げました。

限られた面積でも、暮らしを楽しめる仕掛けをいくつも盛り込みました。たとえば、リビングにはプロジェクターを設置。壁面をスクリーンにすれば、2人でゆったり映画を楽しめる。大きなテレビを置かなくても、工夫次第で豊かな時間を生み出せるのが狭小住宅の面白さです。

「狭いけど、心地いい!」そう感じてもらえる空間を目指して設計は進んでいます!
大変なことも多いけれど、そのぶん完成が待ち遠しいです。

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