遊佐町議会に思うこと
第546回 遊佐町議会 3月定例会を終えて
この遊佐町議会3月定例会が3月6日〜16日までの11日間で開催され、令和4年度の補正予算、令和5年の当初予算をはじめ、条例案件、人事案件などの審議採決が行われました。
詳細は後に記載いたしますが、今回はこの議会最終日に開催された本会議において提案された令和5年度当初予算に関する付帯決議について私の思い、感想を記述していきたいと思います。
令和5年当初予算審査特別委員会
遊佐町議会では、予算・決算は本会議で上程されその際に特別委員会を設置し審査を付託します。
常任委員会を経て、特別委員会では付託された案件を審査・採決。その結果を本会議に報告して、その報告に対して議決します。
今回もその手順に沿って特別委員会で審議され、「適正なものと認め、原案のとおり決定すべきであると意見の一致をみた。」と委員長報告され、本会議でも可決されました。
今回は一般会計の採決後に付帯決議の動議が出され、動議が成立。審議採決されました。
私、個人的には動議成立までの手順等には納得できない部分も多かったのですが、議会事務局が県議長会に動議の採決及び審議採決の方法手順を確認したとのことで、その手順方法で進行し審議採決が行われ、付帯決議が採択されました。
付帯決議
この付帯決議は遊佐町がおこなっている「アワビの陸上養殖の実証事業」に対し、事業の目標と資源の設定と措置を講じることを待ちに求めているものであります。
この養殖事業は県の養殖事業を遊佐町が引き継ぎ、それまで活用について議論されてきた釜磯海水浴場に隣接する漁村センターを利用し、平成26年に極小規模で始まりました。
その後、平成28年(2016年)に星川純一県議会議員と私と当時担当していた町職員の3名で大船渡市にある北日本水産株式会社を訪問して繋がりができ、その後同行した町職員が何度も足を運び養殖についてご指導いただき、さらに養殖に最適な種苗の購入などでも大変お世話になり、全くの素人が手探りで初めた養殖実証実験事業もトライ&エラーを繰り返しながらもう少しのところまの現在の状況まで来ました。
また、庄内エリアで水産業にこれまでご尽力されていた鶴岡市の志田県議の働きかけや県の協力などもあり、マルハニチロがサクラマスの養殖事業を当町でおこなっていただけるようになりました。
それまでの当町の漁業は、衰退していて、漁業者の減少や後継者不足といった、なかなか将来が見通せないものでしたが、このアワビの陸上養殖が漁業振興や特産物開発、後継者不足の解消など、現在抱える問題の解決の糸口になると期待していました。
確かに多少なりとも税金を使うのであれば、町として説明責任を果たすことは最重要だと思いますが、元々これまで養殖事業に携わったことのない素人が見よう見まねで始めたような事業がここまでになったことを評価してもいいのではと思っています。
最近ではふるさと納税の返礼品としても人気があり、合わせて近隣の飲食店などからも引き合いの問い合わせも多いと聞いています。
次のステップとしてこれまで5000個前後を養殖していたものを一般販売を見据えた個数の養殖と設備の用意、その販売のための事業者を募集するための準備が必要で、そのための準備期間として「もう少し猶予を」との発言もありました。
町内漁業の振興と町内産業の未来のため、また漁獲高が著しく減少した岩牡蠣の陸上養殖への道を開くためにも、必要以上に縛りをかけるような決議は適切性を欠いていると思います。
反対討論
これまでは町内の一部観光施設(町が出資している)への販売、先に記述した「ふるさと納税」への返礼品としての販売はあったものの、それ以外への販売実績は無く、令和5年度で初めて販売による収入額として予算に計上されました。
現時点では行政による実証実験ということもあり、また養殖数も少ないこと、さらに確実な販売数と価格と言った点から、販売個数も限られた内容での計上でした。
現時点の非常に制約のある中での収入予算額であることは、担当部署からの説明で十分わかるはずですが、それらを無視しての付帯決議の提案と理解したので、私は政争の具にならないようにと思い反対討論を行いました。
この反対討論の文章も、その場で20分ほどで書き上げてので、説明・説得には不十分とは思いますが、養殖事業に初期段階から関わってきた者として、その思いを理解していただければと願っています。
予算審査
さて、今回の令和5年度予算も例年通り、議長を除く議員全員(11人)で審査特別委員会を設置して予算審査を行いました。
予算審査の状況は遊佐町議会のホームページから録画中継からご覧いただければと思います。
予算・決算特別委員会は毎回、総務厚生と文教産建の両常任委員会の委員長が持ち回りで委員長を務めます。(今回は総務厚生常任委員会委員長でした)
この特別委員会の前に常任委員会が開催され、それぞれの委員会が所管する各課から予算の説明を受け、質疑を行います。その後に特別委員会を開き審査になりますが、遊佐町議会では委員が所属する常任委員会の所管については質疑をしない内部規定があり、内容によっては複数の課を跨ぐこともあるため、質問の仕方も工夫が必要となります。
私が議員になった20年前は、議員の数も多く(当時は20人)常任委員会も3つでしたので、2/3の課には質疑ができましたが、「これは何ですか?」みたいな質問や、うっかり自分の所属する委員会所管に質問しようものなら、これでもかってほどにヤジられましたが(当時は泣きそうになるほどでした( ; ; ))、最近は至って静かでヤジなどもほとんど無くなりました。
そんな中で、粛々と質疑は進み、新年度予算は委員会可決となりました。
動議提出
予算審査特別委員会の審査が終わり、原案可決として報告書の作成、その後開会された本会議に予算特別委員会委員長が「審査の結果、意見の一致を見た。」と報告。その結果報告を受け、本会議で採決の結果「委員長報告のとおり承認することとなりました。」と原案可決となりました。
そこで、その結果を持って付帯決議の動議が提出されました。
他の議会の状況は分かりませんが、遊佐町議会では動議はほとんど無く、たまにあってもやり方が悪かったりで成立しないことがほとんどで、採決まで行ったのは珍しいことと思います。
そこで、同義が提案され賛成者も複数いたことから、動議は成立となり、最初に記述したとおり動議として提案された付帯決議は可決されました。
この「アワビの陸上養殖の実証事業」の付帯決議の提案したのはこの事業を行なっている産業課を所管する文教産建常任委員会委員長で、賛成者に名前を連ねているのは所属している委員と他の各委員会委員長であり、当然「審査の結果、意見の一致を見た。」と本会議に報告した予算審査特別委員会委員長の名前もあります。
まあ、動議を出すことは議員の権利でもありますので、議員として行使することはやぶさかではないと思います。
しかし今回の動議は、その手順として適切かどうかということに、私は首を傾げています。
手順
今回の予算審査特別委員会から本会議採決までの流れは以下の通りです。
この付帯決議の性質上、付帯するモノ(ここでは新年度一般会計予算)が成立してから動議として提案するので、この流れになったとしていますが、委員会で議長を除く議員全員で審議採決を行い、「適正なものと認め、原案のとおり決定すべきであると意見の一致をみた。」と報告したものに異を唱えるような動議は手順としてはおかしいのではないだろうか。
今回の場合は、委員会採決で可決した後に委員会として付帯決議を付して委員会報告をするべきではなかったろうか?さらに言えば、付帯決議の提出に際し、賛成者として予算委員会の委員長が署名することに疑問を持たなかったのだろうか?と単純に思ってしまいます。
先に記述した通り、自分が責任者としてまとめた意見を持って、自分で本会議に報告して、その報告に対して異を唱えるような付帯決議を提案することに矛盾を感じなかったのか?賛成者に名を連ねた各委員会会長はそれぞれの立場をどのように考えているのか?私には理解できません。
せめて、予算委員会で付帯決議を提案して、委員会報告に入れるべきだったのではないでしょうか。
正当性
附帯決議とは、国会の衆議院および参議院の委員会が法律案を可決する際に、当該委員会の意思を表明するものとして行う決議のこと。 また、地方議会においても委員会で議案を可決する際に、同じく附帯決議がなされることがある。( ウィキペディアより)とあり、提出された案件を可決する際、希望意見として付する決議。しかし付帯決議では、その法律、条約を拘束することはできない。(デジタル大辞泉. “付帯決議”.)の記述から、政治的意味合いの強いもので、法的拘束力はないのであります。
しかし、議会として正式に出すのであれば重要な事項であることは間違いなく、だからこそ後々その正当性が崩れるような可能性のあるやり方はするべきではないと思います。
今回の手法に関しては、同じ庄内地方で町村会を構成している三川町と山形県議長会に確認した手順とのことである。
三川町の議長経験者に確認したところ、シチュエーションは当議会とは違っているようで、議事録を確認すると本会議のみの審議採決のようであって、当議会の手順を説明すると「そのやり方は違うんじゃないか」との返答をいただいた。
状況が違えば、その手順も違ってきて当然で、「三川町議会に確認して、同じ手順で進めるから問題ないです。」って言われても名前を出された三川町議会にとってもいい迷惑にしかならないと思う。
今回に関しては、皆が「それでいいんだ」と言って納得しているのであればそれでもいいが、安易に考えていると、もっと重要な案件の時にひっ栗が得ることだってあり得ます。
政争の具
最初は、遊佐町の特産品の一つであり、夏の味覚の代表の「岩牡蠣」の激減とその岩牡蠣が取れる磯場が流砂により埋まってしまった事への対策と、当時のある小学生が将来の夢として漁師としての祖父や父親のように「自分も漁師になって跡を継ぎたい」と話していて、当時から後継者不足や漁獲量の減少もあって漁業者の生活基盤として収入の安定を目指し、さらには夏の味覚を絶やさず、食文化や観光に少しでも寄与できればと思い働きかけてきました。
その時にこの「アワビの養殖事業」の話が持ち上がり、先行して進んでいたので、何とか軌道に乗せたい、特産品の一つになってもらいたいとの思いから取り組み、山形県や県議会も理解を示し視察等も行なっていただきました。
隣の施設で「サクラマス」の養殖事業に取り組んでいるマルハニチロさんなどに繋がった事業なので、大切に育てていきたいと思っていますが、いきなり政争の具にして潰しにかかるのはどうなんでしょうか?
それよりも、中途半端な知識で向かってこられても困りますし、後で困るのは自分だと思います。
今回は、動議による付帯決議の提案がされたことで、私の思いや考え方を書いてきましたが、これからも綴っていきたいと思います。
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