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『The end o Shibuya Sillies Street』-25
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そんな秘密結社みたいなのだったとは思わなかった。
というか、秘密結社ってなんだろう? 思ってみたけどよくわからない。謎の団体、いや、謎っていうか、尻子玉の団体。あ、別に尻子玉を集めてるわけじゃないか。とにかく、尻子玉が本当なのかも、僕が本当に半分しかないのかも、まだ怪しいわけで。先生も、エザキとか言う人も、もしかしたらそこに倒れてる人も、僕を施術の実験台にしてた女の人も、みんなみん
『The end Shibuya Sillies Street』-24
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彼女は池袋では降りなかった。
いや、ドア付近にいたので、乗降する人の導線を遮らないように一度降りるタイプの良い子だった。一度降りて、またドア近くに乗り込んだ。オレも導線上にいたので、一度降りて、彼女がホームで再度乗り込もうと立ち止まっているのを確認して、オレも後から乗り込んだわけだ。導線を潰すようにぼーっと立っている奴は死ねばいいと日頃から思っているんで、彼女に対してとても好感度が
『The en Shibuya Sillies Street』-23
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「そろそろ……来る頃だと思います」
先生が小さい声で言うと、机にあったスマホが鳴った。つかつかと机に近づき、先生は無言でスマホをなぞる。誰か来るんだろうか? というか、ホントどうやって探しだすのか。ベッドで横になってる男以外が先生に注目していると、エザキと呼ばれてた男もハッとした顔をして、スマホをいじり始めた。
「埼京線に乗っているようですね。ミヤマさんには引き続き、追跡するように
『The e Shibuya Sillies Street』-22
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――ヤバイ。なんで普通に持ってんの?
埼京線のいつもの混雑に揺られてたら、目に入ってしまった。これセンセ知ってんのかよ、みんなは? スマホを取り出して、グループ部屋を覗きたいけど、混雑がそれをさせてくれない。そもそもオレは、スマホをポケットに入れっぱなしだし、両手はつり革を吊り下げるバーにかけっぱなしだ。変にここから手を下げようものなら、あらぬ誤解を呼びかねない混雑っぷり。
『The Shibuya Sillies Street』-21
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だけど、わかったところでどうにもならないよな。
僕が見かけた、女の子。スクランブル交差点ですれ違っただけの。どこの家なのかも、旅行で来ていたのかも、職場がどこなのかも、なにもかもわからない。どうするんだろ?
目の前に横たわったままの、なんだっけ、えーっと、マキハラさんを見た。僕が彼にしてるように、彼の眼球は先生のほうを向いていた。同じことを思っているのかもしれない。どうするんだろう
『Th Shibuya Sillies Street』-20
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そうだった、忘れてた。バイトを始めて、1ヶ月くらい経ったとき、先生が言ったんだった。
「サクラバさんは、ご自身の尻子玉が半分無いことを自覚していらっしゃるんですか?」
何言ってんだろうって思って、ぼーっとしたまま返事をしなかった。それが先生には、よくわからなくて答えられないと受け取られたみたいで、先生は続けて喋り始めた。
「サクラバさん、人間には尻子玉という部位が存在します。言
『T Shibuya Sillies Street』-19
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ぶつかられた? 触られた? そんなんたくさんありすぎてわからない。
だって、箱にいたんだぜ? ライヴハウスで、混雑するフロアで、そんなんあり過ぎだろうよ。声も出せない、手も動かせないオレは目だけで訴えてみた。通じるんだろうか。このオトキダさんは表情が読めない。ぶつかった、ぶつかったかー、ぶつかりそうになった、通せんぼしちゃったなら記憶に残ってるんだけどな。あの笑顔の女の子。その前には
『Shibuya Sillies Street』-18
-18
「尻子玉はどこに? あなたはそう考えているでしょう。探す方法はあるのかと」
その通り。他には興味がないくらいその通りだ。そう叫びたかったが、声がでない。動けないのも、声が出ないのも、尻子玉のせいなんて、どういうことなんだ。いや、尻子玉がどういうもので、体内のどこにあるのかとかは正直いまは興味ない。俺は早く、尻子玉を取り戻して、元通りに戻りたいんだ。どうやったら探せるのか、というか俺が探
『Shibuya Sillie Street』-17
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サクラバと先生が言ったのは僕のこと。
桜庭良平、25歳、水瓶座のA型。昼間はIT企業の総務、夜はここでアルバイト。そして、尻子玉が半分ない男。
先生曰く、ゆえに一般的なヒトと感覚が違うんだと。僕が痛みに鈍感かつ、見た目に反して身体がやたら丈夫なことはそれのせいらしい。ついついぼーっとしてしまうのは、尻子玉は関係ないそうだ。
僕がいつ、どうやって、尻子玉を、しかも半分だけ抜かれたの
『Shibuy Sillie Street』-16
-16
「人には『尻子玉』という部位が実は隠されています。河童に抜かれると語り継がれているものを聞いたことがありますよね。しかし、玉と言っても、球状ではなく、人によってそれぞれ形が違います」
オトキダさんは続ける。
「あなたの尻子玉は、完全に抜かれています。しかし、食べられたりしてはおらず、抜かれたものは、まだどこかに健在のようです。ゆえにあなたは生存しています」
尻子玉、本当に河童の
『Shibuy Sillie Stree』-15
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先生が喋った。
久々に声を聞いた気がする。蚊の鳴くような声、というのはこの人のことを言うんだと、最初に出くわした時に思った。小さい声なんだけど、なぜか聞こえる。人混みのなかでも、聞こうと集中すれば聞こえる。不思議な発声方法なんじゃないかと思うほど。だけど、先生は普段はまったくしゃべらない。指差したり、顎をしゃくったり。声を出すのが体に悪いことのように、しゃべらない。僕はスカウトされた
『Shibuy Silli Stree』-14
-14
最寄り駅を降りて、駅前の人混みから抜け、人気がまばらになった住宅街にはいったところで、ポケットの石を取り出してみた。
相変わらずスベスベで気持ちいい。なんでこんな石があんな都会のど真ん中にあったんだろう? 透けるわけもないのに、ビー玉で向こう側を見ようとするように、街灯にかざしてみたりする。
あれ? 石なんだけど、石なのに、ほんのすこしだけ、中心部分が透けているような気がする。淡く
『Shibu Silli Stree』-13
-13
倒れて、助かった。俺がわかることはただそれだけ。
痛いとか苦しいとかは無いんだが、なんでか身体が動かない。そして声がでない。暑くも、寒くもないが、ただただ身体が重い。自分の意志で動かせない。そういう感じ。なにが起きているのかはサッパリわからない。
倒れる前、倒れる前は箱にいて、トイレで寒がってて、そうだ寒かったんだ。けどいまは寒くない。たしかずぶ濡れになったけど、服は濡れているん
『Shibu Silli Stre』-12
-12
変な男が担ぎ込まれてからの先生の動きは不可思議だった。
男は意識がないようで、連れてきた男とさっきまで僕を施術していた女性とで、ベッドへ仰向けに乗せられた。先生はベッドの上でぐったりする男のまぶたをめくり、眼球を眺めたかと思うと、ぶつぶつと小声で日本語に聞こえないなにかをつぶやき始めた。そして、女性に指で指示し、男をうつ伏せに転がした。狭い施術ベッドなので身体が落ちそうになり、男が
『Shibu Sill Stre』-11
-11
なんだか眩しくて薄目をあけると、視線の先に照明があった。
ライブとかのじゃなく、ごく普通の。蛍光灯だか、LEDだかの家庭の天井にあるやつ。あれ、トイレこんな照明だったかな。いや、トイレじゃない。
俺、仰向けだ。なんで、どうして? トイレでひっくり返ったのか? と起き上がろうとしても起き上がれない。仕方なく眼球だけで、周囲を見回した。知らない場所だった。
座って背を向けている人、知
『Shib Sill Stre』-10
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ぼーっとして、たまに感想を述べる。そこは痛い。それくらいなら大丈夫。なにも感じない、ずれてるんじゃない? あー、いいねそこ、気持ちいい。指圧とか鍼ならこんな感じのことをポツポツと。整体とかだと、大丈夫とか平気とかの言葉が多い。お灸だと、それに熱いとかが加わる感じ。
ぼーっと身体をいじくりまわされながら、素直な感想を述べるだけのバイト。間違って死んじゃったりしないの? 酔った勢いで全