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犯罪心理学に入門した話

ご挨拶

お久しぶりです.Takumiです.

研究室の准教授を真似て,句読点を「.」と「,」に変えてみました.ちょっとは理系の院生っぽくなったでしょうか?

調べてみた感じ,理系の論文はカンマピリオドが多いそうです.なんででしょうね.「公文書では『,』『。』となっている!」とか喧々諤々議論がなされていますが,私は何となく理系を感じて好きです.

出す論文誌や学会に提出するものによってレギュレーションが決められている場合があるらしいので,その場合はそれに従いましょう.

Windowsの方は,IMEの詳細設定から句読点を変えることが出来ます.(Macは知りません.)

閑話休題

見出しにも書いてある通り犯罪心理学についての本を読みましたので,感じたこと,勉強になったことをつらつらと書いていきたいと思います.

本の紹介

こちらの新書を今回は拝読させていただきました.

いままで教養科目でも心理学系の授業は取ったこともなかったため,初めて真面目な心理学の本を触りました.

入門と銘打っているだけあり,とてもとっつきやすくて分かりやすかったので,気になった方は是非読んでみてください.

犯罪が起こる要因

まず私がすごく勉強になったのがこちらになります.

何か重大な事件が起こった際,マスコミが一斉に報道をします.特にワイドショーでは警察OBやら,コメンテーターやらがこんなことを言います.

「幼いころの虐待が原因で歪んでしまった」

「恵まれない環境がその人を凶悪な犯人としてしまった」

等々...

我々は凄惨な事件や不可解な事件が起こってしまうと,自分の理解を超えたものに恐怖を抱いてしまいます.そこでテレビで賢そうな人が自分の理解できる単純な理由付けをしてくれると安心するわけです.

しかしあまりに犯罪が起こった理由を単純化することは犯罪に対する誤った理解をしてしまうことになります.実際のところ,虐待の有無はあまり犯罪の理由には関係がないそうです.温かい家庭で育った人でも犯罪を犯します.その割合に有意な差は見られないとのことです.

また,誤った犯罪理解は誤った対策につながります.例えば,

「暴力事件が起きた」

「子供時代の虐待が原因で健全な精神が育たず,暴力を是とする人間になった」

「だから児童虐待やいじめをなくすことが犯罪防止につながる」

という論法です.先ほど子供時代の虐待の有無に犯罪の根本はあまり関係がないといいました.これでは,児童虐待やいじめで苦しむ子供たちは確かに救われますが,犯罪防止という観点では何ら成果を上げることが出来ません.

このように原因を単純化してしまうことは非常に危険ということがわかりました.犯罪の原因は,その人が生まれもった遺伝的な特徴や,交友関係,後天的な認知の癖などが様々に絡みあうところにあるそうです.

この要因は8個あるらしく,これを「セントラルエイト」と呼ぶそうです.気になる方は一度調べてみてください.

たとえば,めちゃくちゃ相手を殴りたいくらい腹が立つことがあったとします.しかし私たちは「殴ると捕まってしまう」「より事態がこじれる」など自分に不利益があることを考えて理性的に行動します.

しかし,犯罪者の場合はそこで手を出してしまうわけです.理由は様々あります.テストステロンと呼ばれる男性ホルモンが多いと攻撃的になりますし,感情を抑制するホルモンの濃度が薄い人は理性で抑えること自体が苦手です.また交友関係内に反社会的な人や組織がいて,暴力で解決することが普通な環境にいた場合,何も考えずに手が出るかもしれません.

逆に生来感情を抑えるのが苦手な人でも,普通の社会で生きていれば「殴ることは流石にダメだ」と,相手を殴る以外でストレスを発散させたりと犯罪に発展しない場合も勿論あります.

このように単純な一つの理由で犯罪を説明できないものなのです.

罰則強化から治療へ

罪を犯して捕まると,拘置所に行きます.実刑の場合は刑務所です.私たちはこの中で厳しい規則の中で規則正しい生活や労働が強制され,更生が図られる場だと思っています.

間違ってはいないのですが,刑務所は刑を執行する場所であるとともに,再犯を防ぐ教育を行う場所でもあります.

本書によると様々な教育プログラムが行われているそうです.特に,薬物犯罪や性犯罪などの依存性がかかわってくる犯罪ではその依存から脱却するためのプログラムが行われているそうです.

先ほどの原因の項でも述べましたが,遺伝的な特徴はどうしようもありませんが,環境的な要因,認知の癖は改善することが出来ます.これが所謂治療に当たります.専門家の経験則(要はプロの勘)よりも科学的なエビデンスを大事にし,より効果的な治療を行う流れが出来つつあるそうです.

この治療も,再犯を防ぐために行っているはずが,誤った治療を施すと逆に再犯率を上げてしまった前例もあるそうです.正しい治療を施したところ,そうでない組に比べて有意な再犯率の差が見られたという結果もありました.

この本を読んで

ここからはこの本を読み終えた私個人の感想です.上に大きく分けて二つの私が驚いたこと,勉強になったことを紹介しました.

私は警察24時やニュースなどを見ていて「犯罪者死すべし」「犯すやつらはどうしようもないクズ」と思っていました.ダメなことには当然変わりありませんが,犯罪についての見る目は変わりました.薬物依存の人たちも環境がそうさせてしまったのかもしれません.

また,とても興味深かった文言にこのようなものがありました.

「われわれが犯罪だと思っているものは、実はニュース用に作られた『ストーリー』」

これはなるほどと思いました.事件が起きた事実以外にも,コメンテータの言ったことや周りの推測で様々に脚色され,それがあたかも真実であるかのように報道されます.右も左も情報が溢れている現代で懐疑的な視点は常に持っておくべきだなと思いました.もちろん本人たちも嘘を言っているつもりはサラサラ無いと思います.だからこそ見ているほうも事実を見誤ってしまうのではないかと考えました.

あと犯罪心理学という題名で心理学の話も勿論あるのですが,主に使われていたのは統計学な気がしました.先ほど紹介した治療プログラムも効果があったのか分析するのは統計学に依ります.文系書物かと思いきや理系の方も楽しめると思いました.

最後に

長文駄文をつらつらと書いてきましたが,ここまで読んで下さりありがとうございました.もっと文章を纏める力をつけたいと思います.

更新頻度がだいぶ低めなので,こういった大きな記事に限らずちょっとした気になった話題について話すだけの短いものも書いていこうと思います.

それでは.

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