新しい観光地を作る仕事【短編小説#27】
新しい観光地を作る仕事
いえいえ、こちらこそです!私たちの取り組みが少しでも多くの人に伝われば、これほど嬉しいことはございませんので、遠慮なくご質問されてください。
(質問を受ける)
ありがとうございます。
既にご存知いただいているかと思うのですが、私たちは、新しい観光地を作る仕事をしております。新しく作ると言っても、公園を作ったり、博物館を建てたり、お金をかけて一から新しく作りましょうということではございません。誰かの思い出の場所をみんなにシェアしましょう、色んな意味づけがされた場所を新しく作っていきましょう!という、ただそれだけの話なんです。
(質問を受ける)
全ての場所が誰かにとっての思い出の場所なのではと思ったんです。何気なく見ている風景も、誰かにとっての思い出の風景だったりする。それをシェアすると、実は別の人にとっても大切な場所だったということが出てきます。そのような思い出をGoogleMapと連携をして、書き込めるようにして、誰かとシェアできるようにしています。
(質問を受ける)
お恥ずかしいのですが、きっかけはデート先を探していた時なんです。都内だと、だいたいどこも行き尽くして、新しいデート先が見つからない。雨の日のデートにおすすめの場所や、穴場スポット、新しい体験ができる場所などなど色々検索しても、サイトは沢山あるのですが、正直内容に大差はないんですよ。その時に、もはや観光地を自分達で作ったら面白いんじゃないかなと思いました。それが原点になっています。
(質問を受ける)
当初は日本国内限定のサービスだったのですが、今では北米や欧州にも広まり、最近ではアジアや南米にも破竹の勢いで広まっています。GoogleMapが活用されている地域が中心ですね。
(質問を受ける)
意外な場所がプロポーズの場所として人気だったことが判明し、そこが縁結びのスポットになっていたりします。また、日本人では気づかない日本っぽい風景を楽しめる場所を、海外の人が教えてくれたり。
自分が毎日通勤で歩いていた場所が、実はどこかの誰かが親友と喧嘩して仲直りした場所で、そこがあるから今もその関係が続いている場所だったりする。そういうことを知ると、いつもの道に別の物語が見えてくるんですよ。そんなエピソードが沢山書かれたGoogleMapを見ていると、一瞬で時間が経ちます。面白くて止まりませんね。
(質問を受ける)
「なんでもないようなことが、幸せだったと思う」という歌詞が昔ありましたが、まさにそういうことです。何気なく歩いていた場所が、実は誰かの思い出の地だったことを知った時、なんだか心が暖かくなります。
しかも、知るだけに留まらず、そういう思い出の場所を自分でも作っていきたい思う様に段々となってきます。そうやって少しずつでも、自分たちの思い出の場所を作り、それをみんなでシェアしていければ、自分たちが住む地域がもっともっと思い入れのある地域になり、それがいつしか自分が好きな国を自分で作っていくことに繋がっていくと、私は思います。
完
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