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葡萄を原料としないワイン【短編小説#23】

今年も女王は造り手達に、あるワインの製造を依頼しました。
そのワインは葡萄ではなく、今年収穫した「罪」で製造します。

ボジョレー・ヌーヴォーと同じ、マセラシオン・カルボニック製法です。
密閉タンクに、炭酸ガスを充満させ、通常は葡萄を入れるところに今年収穫した罪を入れて放置します。

そうすると、罪は自己消化し始め、渋みタンニンの溶出を抑えながら、色素を効率よく溶出させます。その際、罪によって色素は異なり、赤い色素の時もあれば、青い色素になる時もあります。その後は、搾って通常のワイン製造に従います。

味の決め手となる「罪」ですが、彼女は自分が犯した罪は入れません。
他人の罪を買い取って、それをワインにするのです。

しかも、自業自得による罪ではなく、環境や生まれなど、本人がコントロールできないことが原因となって、生じてしまった罪、特に若い子が背負ってしまった罪を言い値で買い取り、それをワインにして、年末に味わうのです。

今年の出来は、フルーティーで口当たりは良かったものの、少し酸味の強い味わいになりました。

それでも、女王はどこか懐かしそうにして、そのワインを楽しまれたのでした。


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